ナ:今は昔、竹取の翁と呼ばれた男が野山にわけいり、竹をとって、いろいろなことに使い、暮らしていました。 翁登場。竹やぶの中を歩く。 ナ:ある日のこと、竹の中に光る竹を見つけました。のぞいてみると…… 翁「なんちゅー可愛い女の子や……!よっしゃ、この子連れて帰るわ!」 ナ:子供の可愛さに胸を射抜かれた翁は、子供を連れて帰って、妻と二人で大切に育てました。この娘は、わずか3ヶ月で、美しい娘に成長しました。輝くばかりに美しいので「かぐや姫」と呼ばれるようになりました。 かぐや姫、シルエット。 ナ:やがて、噂を聞きつけて多くの男性が妻に迎えたいと思いました。 石作「かぐや姫を……ぜひ妻にさせてください!」 車持「俺の方が幸せに出来るC〜」 阿部「さっさと嫁にください」 大伴「……お、俺と一緒に住まねぇか!?」 麻呂「嫁に来てみそ」 ナ:なかでも特に熱心な5人の貴族が求婚しました。しかし 翁「アホか!誰が嫁に出すか!かぐやを嫁に欲しかったら、次のもんを持ってくるんやな」 石作「なぜあなたにそんなことを言われなければならないのです?」 車持「そーだそーだー」 阿部「……これだから男親っていうのは……ふぅ……」 大伴「いいからかぐやに会わせろ!」 麻呂「ふざけんなジジィ!」 翁、ポカリと麻呂を殴る。 翁「持って来たら会わせたる。いいか―――」 石作にスポット。 翁「自分は仏の御石の鉢」 車持にスポット。 翁「自分は蓬莱の玉の枝」 阿部にスポット 翁「自分は火鼠の皮衣」 大伴にスポット 翁「自分は龍の宝玉」 麻呂にスポット 翁「自分は燕の子安貝や」 ナ:どれも伝説上の存在で簡単に手にはいらないものばかりです。 翁「持って来たら結婚認めたるわ」 翁、しっしっ、と貴族たちを手で追い払う仕草。 ナ:翁のかたくなな態度に、貴公子たちは仕方なくその宝物を探しに行くことにしました。 石作「待っててくださいね、かぐや姫。必ず仏の鉢を持ってきます」 ナ:そう言って石作皇子は自ら天竺に行きました。そして3年たって、鉢を持参したのです。 翁「なんやねん、結局ただの鉢やんけ」 石作「何をおっしゃるんですか。3年間、天竺でひたすら修行し、仏の為に私が作った鉢です。本物以外の何物でもないでしょう」 翁「アホッ!自分で作ってたら偽物や!」 暗転。 車持スポット。 車持「蓬莱の玉の枝、ないっていうんなら作っちゃうC〜。あ、これお給料。うちは前払いだからね〜」 ナ:車持皇子は蓬莱の玉の枝が伝説上の存在で実際にないことがわかったので、わざわざ職人を呼んで金や銀の珠をつけた枝を作らせました。しかも給料前払いで。 車持、枝を持ってはしゃぐ。 車持「出来た出来た〜。よーし、かぐやに届けに行こう!……でもその前に、ひと眠り……」 車持、その場で寝る仕草。 ナ:うたたねをした車持が起きたときには、持っていたはずの枝はなくなってしまいました。……職人に盗まれてしまったのです。 暗転。 阿部、スポット。 阿部「火鼠の皮衣……この手で必ず見つけてみせましょう」 ナ:阿部御主人は『火鼠の皮衣』として差し出した商人を突っぱね、自ら探しに出かけました。 阿部「くそっ……ここにもないか……」 阿部、歩きまわる。 ナ:しかし、歩いても歩いても、海を渡っても見つからず、阿部御主人はついに火鼠の皮衣を見つけるために、どこまでもどこまでも歩き続け、結局世界を一周して帰ってきました。 暗転。 大伴、スポット。 大伴「龍の宝玉か……オラ、行くぞ!さっさと仕度しろ!」 ナ:大伴御行は家来を大勢引き連れて船に乗りました。しかし、いざ龍と対面し、宝玉を奪おうとしたときに 大伴「なに……!?子供……!?」 ナ:龍のそばに小さな龍がいるのをみて、大伴はためらいました。 龍の宝玉は龍の生命の源。奪ってしまえばこの母龍がどうなるかはわかりません。 大伴「……ダメだ、俺には出来ねぇ……」 大伴、ガクリと膝をつく。 ナ:大伴は小さな子龍から母龍を奪うことは出来ず、龍の宝玉を諦めました。 暗転。 麻呂、スポット。 麻呂「屋根の上に燕の巣?よっしゃ、俺登るぜ!」 ぴょんぴょん、と跳ねながら麻呂、登場。 ナ:石上麻呂はかごに乗って屋根の上にあがり、巣のなかに手をいれました。中をさぐって手に平たいものが当たったので、家来たちにかごを降ろさせようとしたところ、綱が切れてしまいました。 麻呂「……っあっぶねぇ!ギリギリセーフ!」 麻呂、アクロバット。 ナ:石上麻呂はそのまま落ちるかと思いましたが、軽やかな身のこなしで見事に着地しました。しかし。 麻呂「…………あ。割っちまった……」 ナ:手の中に持っていた「平たいもの」は着地したときに力を込めたせいで、原型がわからないほど粉々になってしまいました。 暗転。 かぐやと翁の登場。 翁にスポット。 翁「全員諦めたようやな。……よっしゃ、かぐやは嫁には出さんでぇ……クククッ……」 ナ:このようにして、翁が出した難題に求婚者たちは、すべて失敗し、かぐや姫は結婚しないことになりました。翁の思惑通りです。 暗転。 帝、スポット。 帝「なに……?そのように美しい娘がいると……ぜひ、我が妻にしたいものだな」 ナ:次いで、この話をきかれた時の帝も求愛されます。とうとう訪れたこの事態。翁は帝が来る日、家の前で待ち構えていました。 帝「かぐやに会わせろ」 翁「絶対帝には会わせん……嫁にも出さんで!」 帝、翁、戦闘。 ナ:翁と帝のひと悶着があった後、翁の攻撃をかいくぐった帝はかかぐやの元へ行きます。そこでかぐやは一瞬にして目の前から消えさる、という地上の人間ではない、というところを見せ、帝の求婚も拒否します。 翁「ほれ見たか!かぐやは誰とも結婚せぇへんで!」 帝「(無視)……なるほど、手順を大事にするのだな。では、まず和歌のやりとりから始めるのはどうだ?」 暗転。 ナ:諦めの悪い帝は、かぐやと帝は和歌のやり取りすることをとりつけました。そのやりとりも3年の年月を数えた頃、かぐや姫は、月の美しく出ているのを見ては、物思いにふけるようになりました。かぐや姫は月の都に帰って行く時期が近づいたのを知り、やるせない別離の情に、胸を締め付けられる思いの日々をすごしていたのです。 かぐやにスポット。 かぐや「(ため息)」 翁「どないしたん、かぐや。……帝が嫌なんやったら、俺がなんとかしたるで」 ナ:かぐやの様子を不審に思った翁がかぐやを問いただします。 かぐや「私は実は……月の都の人間なのです。次の満月の日に、月へと帰らねばなりません」 翁「嫌や!帰ったらあかん!かぐやはずっとここにおって、一緒に暮らすんや!」 ナ:翁から話を聞いた帝は、すぐに対策をたてます。 帝「都中の兵士を集め、かぐやの家を徹底的に警護しろ!誰1人、家の中に入れるな!」 暗転。 スポット、大きな満月。 ナ:そして仲秋の名月である8月15日の夜。帝の命令で、かぐやの家には大勢の兵士が集まりました。その中で、とうとうかぐや姫に月の都からの迎えがやってきました。月の都から迎えがやってくると、兵士たちは見動きが出来なくなりました。しかし、 5人「色んな苦難を乗り越えた俺たちに、そんなものは効かないぜ」 翁「かぐやは返さん!ここでずっと一緒に暮らすんや!」 帝「俺様を誰だと思っている。……さっさと月に帰りやがれ」 使者「……………ウス」 ナ:使者は引き返し、かぐやは月に帰らず地上に残ることとなりました。 帝「これでいいだろう。……さぁ、かぐや。今度こそ俺の元へ来てくれるな?」 翁「ちょお待てや帝、かぐやは誰にも渡さんでぇ……!」 帝「……ほぉ、この俺様に逆らってこの世を生きていけるとでも?」 麻呂「ちょ、ちょっと待てよ!俺らも混ぜろよ!」 車持「俺もかぐやお嫁さんに欲C〜」 男たち言い争う。 ナ:……こうしてかぐやはたくさんの人たちに囲まれて末長く幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし。 ―――――――――幕――――――――― |