響き渡る、大きな泣き声を聞いたとたん。
……熱いものが、こみ上げてきた。






「…………じゃ、おやすみ」

軽いキスを交わした後、はすぐに寝息を立て始めた。
相当体力を使ったのだろう。いくら安産だったとはいえ―――大変な仕事だ。

寝顔を見て、少し乱れた髪の毛を整えてやる。

を起こさないように、小さく小さく息を吐いた。

夢心地―――というのだろうか、なんだかあまり現実感がない。
ただ、手に刻まれた、傷の痛みが、俺に現実を知らせていた。

この傷は、が、痛みで力いっぱい握ってきた時に、出来た傷だ。
相当痛んだのだろう、爪が深く食い込んできた。

今もまだ、固まりかけの血が少し出ていて、ビリビリとした痛みがある。だが、これで少しは―――の痛みの、何百分の一かは経験できたかもしれない。

『お疲れさん―――』

もう1度、の頭を撫でた。
静かに寝息を立てるこいつが、どうしようもなく愛しい。許されていたのなら、力いっぱい抱きしめたかったくらいだ。

先ほどの出来事を回想する。

生まれた子供は、明らかに俺の血を引いてるとわかるくらい、俺に似ていた。
だが、やはりところどころのパーツはに似ているところもあって―――俺との子供なんだと思うと―――顔が、無意識に緩んでしまう。

名前は――――――。


………………前々から考えていた名前が、あることにはある。……そして、生まれてきた子供を見たら、それ以外にない、とも思えてきた。
だが―――。

頭にぽん、と浮かんできた、シャクに触る顔。

1つ頭を振って、その顔を追い出す。

…………の目が覚めてから、相談するか。

もう1度、に近づき、頬に軽いキスをして。

ソファベッドに身を横たえた。