ふよふよ、と意識が浮いていた。

起きようか起きまいか―――そんな、幸せなまどろみの時間。
しばらくそうしているうちに、目を瞑っていても、窓から光が入ってきているのがわかった。もう、太陽はその姿を存分に見せているらしい。
もう、朝か―――あやふやな意識の中で、ぼんやりと感じた。
光がまぶしい、カーテンを引こうか―――。

『部活』

突然、その2文字が頭の中にポンッと浮かんだ。

朝ということは、部活に行かなきゃいけないということで。
この光の入り具合からして、起きる時間を過ぎている気がする。

危機感に、いつもからは考えられないほど、ぱちっ、と目が開く。

私は慌てて、飛び起きた。





ぱっ、とアンティークの時計に目を走らせると、2本の針は、いつも起きる時間よりも1時間は遅い時刻を指していた。
その現実に、さーっと頭の中がクリアになる。

……まずいっ……遅刻だ……!

「…………?どうした……?」

自分以外の声が聞こえたことに、心臓が飛び跳ねる。
それでもすぐに、その声が世界で一番聞きなれた人間のものである、ということにも気付いたけど。

「け、景吾……また人のベッドに……!」

「……あーん?いいだろ、別に……それより、何慌ててんだよ……?」

「そうだっ、部活……時間がっ!」

悠長に話をしている場合じゃない!
昨日はなんの仕度もなしに寝ちゃったから……まずは、ジャージとTシャツをカバンにねじ込まなければ……!
思いっきりタンスに向けて立ち上がろうとしたときに聞こえたのは、未だ眠そうな景吾の、衝撃的な発言だった。

「……は?……今日は部活、午後からだって言っただろ?」

…………………………………部活……午後……………?




…………………あ。




そうだったー!今日は、午前中が保護者会だから学校が使えなくて、午後から部活だったー!!忘れてたー!!

ってことは…………ただの勇み足だったっていうわけ、か……。

「……思い出したか?」

「…………うん、ばっちし」

「……なら、もう少し寝ようぜ……たまには、な……お前は寝すぎかもしれねぇが」

「………………まだまだ寝れるから、ガッツリ寝かせていただきます…………」

「ん。……じゃ、こっち来いよ……」

目を瞑ったままの景吾が、ポスポス、と今まで私が寝ていた場所―――景吾の腕枕がある場所だ―――を指し示した。
…………そこに寝るのか。意識がバッチリある状態で、自ら入れというのか。

「……?」

不機嫌そうにゆっくりと開かれた瞳。
……その瞳に、白旗をあげた。
勝てるわけが、ない。

「…………はい」

仕方なしに、もぞもぞともぐりこんだ。
離れようと思ったけど、ガッチリ腕枕とは逆の手で固定されて。

…………ここが、また、居心地が悪いわけがない。

ずーっと寝たはずなのに、まだ眠れることに驚いた。

「たまには、ゆっくり……な……」

「…………そうだね」



午後から部活の土曜日。

たまには、ゆっくりと、午前中は眠ろうか。