「えいっ」

みんながテニスを教えてくれて、1ヶ月半。
自分でもビックリしたけど、中々テニス姿は様になってるのじゃないかな?

…………ふっ、マネージャー業で鍛えた、上腕筋と大腿筋をなめないでよ……!





部活の全体練習が終わると、レギュラーの人がこぞって私にテニスを教えてくれる。
最初はラケットの握り方から始まり―――徐々に、ジローちゃんにボレーを教わったり、侑士や亮にストロークを教えてもらうようになった。がっくんは、跳び方(テニスに果たして関係があるのか不明)を教えてくれる。……そのおかげかわからないけど、随分ジャンプ力が増した気がするよ……そのジャンプ力は、上の方に乗っかったモノを取るときに大変役に立っている。

レギュラーに相手をしてもらうのは、本当に心苦しかったので、申し訳ないけど、平部員の子にも付き合ってもらってる。
平部員の子は、快く引き受けてくれた(注:跡部が威し済み)

今は、平部員の子と、簡単なゲームをするまでになった。

シングルスよりも、ダブルスの方が初心者向き、だということでダブルスのゲームばっかりだけどね。

パコーン、とサーブを打つ。
…………あう、またフォルト。

セカンドサーブは自信がないので、アンダーサーブで打つことにした。

ヘボヘボサーブは、なんとかエリア内に入るけど、当然そんなのは狙い撃ちなので、ぎゅっとラケットを握る。

景吾が巻いてくれたグリップは、意外なほど手に馴染んだ。

打ち返されてきたボールを追いかけ、ストロークで返す。

スイートスポットに当たったときは、パコン、といい音がする。

今回は少し外してしまったらしく、ベシ、とあまりよくない音が鳴った。

それでもボールは返っていく。

「わぁっ」

相手はボレーで返してきたので、球が速い。
なんとかラケットに当てるけど、緩い球はスマッシュの格好の餌食。

バシン、と音が鳴って、スマッシュを打たれてしまった。

「あーぁ……」

、今の反応遅い」

「あぅ……ハイ……」

失敗したりすると、景吾から檄が飛ぶ。

平部員の子たちとのゲームは、一応7−5で勝った。

「あ〜……疲れた〜……」

「辛勝、ってとこだな。……、サーブの確率が悪い。もっと練習しとけ」

「…………合点だ」

サーブ、入んないんだよな〜……ホントに。
アンダーサーブだと、リターンが強いし。

さん、サーブの時にトスが少し低いんですよ」

「ホント?……じゃあ、もうちょっと高くしてみる」

「えぇ、高く上げると、それだけタメが出来ますからね。アンダーも、できるだけ使わないようにしてくださいね」

「……うん、頑張る……」

「ボレーはいいんだけどな。ボレーだけだったら、準レギュぐらいまで行けんじゃねぇか?」

亮がそんな恐れを多いことを言ってきた。
準レギュだなんて……!そんな、まだ初めて1ヶ月半だよ……!

「基本能力が高いからな、ちゃんは。脚力やパワーは、男に負けてへんと思うで」

「あー……マネージャー業の賜物ですかね……」

「後は、技術力だな。…………まぁ、それだけできれば、今度は……」

「ん?景吾、なにか言った?」

景吾が何か呟いた気がする。
だけど、景吾は、いや、と頭を振った。

「今日はここまでにする。………帰るぞ」

景吾の一声によって、今日は解散。

んー、今日も疲れたー。


……………でも、なんで景吾は私にテニスをやらせたがるんだろう。
あれかな……球出し相手でも欲しいのかな……?