「あー、今日もおいしかった!デザートのプリン、最高だった!」

「お前、ものすごい勢いで食ってたな」

いつものように夕食の感想を述べながら、私たちは2人、部屋の中に入る。
私はベッドに腰を下ろし、景吾はテーブル付近の椅子に座る。テーブルの上には読みかけの本が置いてあるからだろう。

だけど、景吾は本を開かなかった。

ちょっとした沈黙。

それを破るように、私は呟いた。

「……組、別れちゃったねぇ」

まるで私がそう言うのをわかっていて、あえて待っていたかのように―――景吾は苦笑した。

「そうだな。……ま、仕方ねぇ。たまには、こーゆー禁断的なシチュエーションもいいじゃねぇか」

「……またそーゆーことを平気でサラッという……」

自分が恥ずかしいことを言っている、という自覚がない景吾は、怪訝そうに眉を潜めた。
私の言葉を問おうとしてくる景吾に、『なんでもない』と1つ手を振って、誤魔化す。

「……でも、初めてかな、景吾が敵になるのは」

「そりゃそうだろ。こんな機会でもなきゃ、ありえねぇ。……だが、こーなった以上は」

言いかけた景吾より早く、私はニッコリ笑って先回りした。

「……負けないよ?」

虚をつかれたのか、一瞬、目を軽く見開いた景吾は―――すぐに、ニヤリと笑みを返してくる。

「……俺様に勝てると思ってんのか、あーん?」

椅子から立ち上がり、ゆっくりとこちらへ近づいてきた。

「むっ……」

私のすぐ隣に腰をかけ、まっすぐに視線を合わせてくる。

「勝つのは赤だ」

近距離で見える目は、相変わらず、引き込まれそうな強い光。
一瞬引きずり込まれそうになったけど、力を込めて、グッと目の奥を見つめ返した。

「……勝つのは白組!」

景吾の笑みが、ますます深くなる。

「……言ったな?」

「い、言ったとも!」

顔を覗き込むように、挑発するように、景吾の顔が近づいてきた。
いつもなら恐れをなして、後退するか顔を背けるかするところだけど。

今は―――見つめ返して、受けて立つ。

景吾が、本当に面白そうに喉の奥で笑い始めた。

「…………上等だ。手加減しねぇぜ?」

「望むところ!」

顔と顔をつき合わせて。

「「……勝負だ!」」

笑いあった。