「…………景吾?」

「あーん?」

「………………歩けないんだけど」

そう、私は今景吾により動くのを不能にされている。
首の辺りに回された腕は、ガッチリと私の体を拘束していて。

……っていうかそれ以前に!

「はーなーしーてー!ここ、部室!誰か来たらどうすんの!」

「ちょうどいい、見せ付けてやればいいじゃねぇか」

「ちょうどよくなーい!……もう、学校でくっつくの禁止!くっついてたら、私が今度こそ女子生徒に殺される!」

強引に腕を引き剥がして、私は景吾から脱出する。

ただでさえ女子生徒から冷たい視線なのに!

「景吾も困るでしょ!?校内で殺人事件なんて起こったら!」

ありえない話じゃない!
景吾と私がくっついてるの見た女子生徒が、ブスッと私を校内で刺す……。
新聞の見出しはズバリ、

『人気男子を取られて逆恨み!?白昼の中学校で惨殺事件!』

でワイドショーにひっぱりだこよ!

そんなことで有名になってもイヤ――――!!

「……っというわけだから!学校内でくっつくの禁止!」

「…………つまらねぇじゃねぇか、そんなの」

「つまらないも何もない!私の命がかかってるの!」

「…………じゃあ、誰も見てねぇとこなら、いいんだな?」

「はっ!?」

またもやぐいっと引き寄せられて。
今度は真正面同士だったから、そのままキスされた。

「誰も見てねぇとこなら、くっついててもいいんだろ?あーん?」

「えっ、やっ……えーっと…………」

「問題はねぇよな?お前の命に」

「………………えーっと……」

ちゅぅ、と音を立てて、景吾が唇を合わせてきた。
だ、誰もいないからって、ここ、部室なんですけど!
今は誰もいないけど、いつ誰が来てもおかしくないって!

「け、景吾!」

「誰も見てねぇとこ……特別教室に、屋上……あぁ、保健室買収するってのもいいな……(ニヤリ)」

「ちょ、何考えてるんですか!」

「だが、やっぱり1番は生徒会室だな……あそこなら、俺とお前だけだし」

景吾が楽しそうに喉の奥を、くっと鳴らした。

「楽しみだな?スリルあるじゃねぇか」

………………………………。
もしかして私…………自分で自分の首絞めた?