が―――が欲しくて堪らない。

最近、本当に思う。

ベッドに座って、2人で生徒会の仕事をしていたときだって。

ふと、が髪の毛を耳にかけた仕草に、ドキリと心臓が跳ねた。

手が止まった俺に、が視線を向ける。

「景吾?どうかした?」

声と共に、サラリと洗ったばかりの髪の毛が耳から零れる。
そのまま引き倒してしまいたくて、手を出しかけて―――直前で止める。

……今の俺じゃ、欲望のなすがままに、を抱いてしまう。
が愛しすぎるゆえに、壊してしまうかもしれない。
優しくしてやりたいから―――もう少し、俺の心が落ち着くまで、待つべきだ。

「いや、なんでもない。……次は」

「えーっとね……あぁ、野球部からグラウンド使用時間延長の申請。試合前なんだって」

ペラ、とが1枚の書類を差し出す。
それに目を通していると、ふっ、とが笑った。

書類から目を上げてを見ると、小さく笑ったまま、俺を見る。

「あ、ごめ……ちょっと思い出し笑い」

「なにかあったのか?」

「野球部のキャプテンが、その書類持ってきたときにさ、ちょうどチョコレート食べてたんだけど……」

が、また思い出したのか、目を細めた。

「知ってた?キャプテン、チョコ大好きらしくって、ずーっとチョコ見てて。……あんまり凝視してるもんだから、ついついチョコ上げちゃったよ。キャプテンとチョコって、結びつかないよねー」

クスクス、とが笑う。
笑顔に、目が惹きつけられた。

―――ダメだ、壊してしまう―――。

「その時のキャプテンがさー、可愛くって」

……俺以外の男を思って、笑う

「あのキャプテン、怖い人なのかな、って思ってたんだけ―――ん……ッ!?」

俺を抑えつけていた何かが、切れた。





前触れも何もなくキスをした俺に、が少し抵抗をする。
押し返してくる手を片手で絡めとって、もう片方の手での頭を押さえつけ。

その温かい口内を、舌で犯す。
歯列を十分になぞり―――は上の方が弱い。
上の歯列をもう1度なぞってやると、くたりと力が抜けた。

ふっ、と体を離し、髪を梳き上げて耳を甘噛みする。

「け、景吾っ?……んっ」

の言葉を唇で封じ込める。
そろり、と首筋を指でなぞると、いつもと違う俺の様子に、が本格的に抵抗を始めた。
をベッドに押し倒し、覆いかぶさるようにしてキスを続ける。

逃げ惑う舌を探しだし、右手はうなじから首筋をたどる。

「……っはぁっ……景吾…っ!?一体、急に何……!」

「急じゃねぇ。……ずっと、とこうしたいと思ってた」

俺と同じ黒のパジャマのボタンを、外す。
肌触りのいいシルクは、ボタンのすべりも良くて、思うままに外れていく。

抵抗を始めたの耳元に、囁いた。

「……を、俺にくれ―――……」

抵抗していたの手が、ビクリと止まる。

「け……いご……?」

「もう我慢できない。お前が俺以外の誰かを思って笑うのを見るだけで、耐えられない。……お前の中に、俺を刻み付けないと気がすまない―――……」

ちゅっ、と音を立ててキスをする。
今度は抵抗が……ない。

「……?」

嫌がられるのは覚悟していた。
が、行為に対して恐怖心を持ってるのも知っていた。

だが、はふわ、と笑うと、俺に向かって手を伸ばしてきた。

「…………馬鹿だなぁ、私の中は、いつも景吾でいっぱいなのに」

笑うが、愛しくて。
愛しすぎて。

……これで、我慢する方が、男としてどうかしてる―――!

そのまま唇を貪り。
ボタンを外しきった上着を抜き取った。

運動でほどよく引き締まった体に映える、黒の下着。
じぃっとその姿を見てると、が真っ赤になった。

「ちょ、あんま見ないで……っ……っていうか、電気消して……」

「……お前の姿がちゃんと見たい」

ぷつ、とホックを外せば、制御を解放されて、揺れる白い胸。
が恥ずかしがって、胸を両腕で隠す。

「や、やっぱ電気〜……」

「……仕方ねぇな」

一旦手を外して、パン、と叩く。
パッと消えた電気。代わりに、ベッドサイドのナイトランプが、妖しくの体を照らした。

「これで……いいだろ?」

胸を隠す両腕を外させ、胸の頂点に唇を寄せる。
ピク、とが反応した。

ゆっくりゆっくり、丁寧に愛撫していく。
欲望を出来る限り、押さえつけて。
乱暴に扱ったら、本当に壊れてしまいそうだ。
しなやかで、それでいて柔らかいの体は、手に吸い付いてくるようだった。

首筋にまずは俺の証となる痕跡を残し、段々と下へ降りていく。
胸を包み込むように揉んでやると、可愛い声が出た。

ハッとしたように、口を閉じる

「……声、出せよ」

「恥ず、かし……ッ」

「出せって……ほら」

キュッと左胸の蕾を摘んでやり、ペロ、と右胸の蕾を舐めてやると。

「ゃんっ」

出てきた高い声に、俺の熱が昂ぶっていく。

ズボンを脱がせて、ベッドに下に放り投げる。

俺も上を脱いで放り投げた。素肌同士がくっついて、気持ちいい。

「……景吾って……やっぱり、筋肉しっかりしてるね……」

が突然触れてきた。緊張してるのか、少し冷たい指先は、俺の胸をたどる。
……それだけで、感じてくる。ヤバイ。

下着を取り去って、秘所に触れれば蜜が少し出ていた。

「ちょっ、景吾……ッ……」

いきなり触れてきた俺に驚いたらしく、が足を閉じようとする。
それを体を入れることによって阻止し、潤いの根源を探した。

「やっ……あっ……」

少し根源に触れ、その近くにある突起に手を伸ばす。
存在を主張し始めている、わずかに膨らんだそれを、コリコリと撫でてやると、の喘ぎ声が増した。

「やっ……んっ……あぁっ……」

「……気持ちいいだろ、あーん?」

耳元で低く囁いてやれば、ぶるっと震える体。
耳が弱いのも知ってる。

「やっ、ちょ……やめっ……ふぁっ……」

大分、蜜が溢れてきた。
突起から手を離し、今度こそ潤うソコに手を伸ばす。
茂みの奥に、指を進め。

ツプ、と音がなって、人差し指の先端が中に入った。

「やぁっ……痛……ッ」

そのまま人差し指を進める。
きついが、それでも一本を飲み込んだソコ。
少しかき混ぜるように広げ、くいっと折り曲げたら、の体がしなった。

「……ここがイイのか?」

「あ、ちょ……あんっ」

内壁を少し指でこすると、高い嬌声が上がった。
いつの間にか、の目からは涙が溢れてる。

痛いのか、生理的なものなのか。

そこまでは区別がつかない。

1度キスをしてやり、少し人差し指で慣らした後、2本目の中指を入れる。
だが、初めてのにこれはキツかったらしい。

「痛いっ」

小さな悲鳴。

それでも、今更止めることは出来ない。
俺にも限界がある。そして、それは段々と押し迫ってきてる。

「すぐ、慣れるから、力抜け」

キツイ内壁を押し分け、時間をかけて中指も飲み込ませる。
しばらくグチュグチュとかき混ぜていたら、大分慣れてきたようだ。苦痛の表情がなくなってきた。

「はっ、あ……んぁっ……」

その代わりに上がる、高い嬌声。
それを聞くたびに、熱はどんどん集中していって。

もう抑え切れない。

ズボンを脱ぎ捨てて、サイドテーブルから四角い包みを取り出す。
包みを歯で食いちぎって、手早くゴムを装着すると、入り口にあてがった。

は、あてがわれたものに、恐怖を示した。

「景吾……無理…ッ」

「大丈夫だ……痛かったら、俺に痕つけていいからな」

の手を俺の背中に回させる。
入り口でゆるゆると蜜をつける。ゴムには潤滑油もついているが、少しでも苦痛を和らげるために。

「……いくからな、息大きく吐け」

「け、いごぉ……ッ」

はぁっ、とが息を吐いた瞬間に、ぐっと入り口に差し入れた。

「……つっ……」

思ったとおり、きつくて侵入を阻む。
それでも、もう耐え切れなくて、半ば強引に少しずつ腰を進めた。
の爪が、俺の背中に食い込む。

「痛い……っ……やぁっ……」

「悪い……ッ……止められねぇ……ッ」

ブツリ、と何かを破った感触。
おそらくが純潔だった証。

その感触に、が俺しか知らないという事実に、今、と繋がっているということに、満足感を覚える。
の全てを支配している、征服感。

ズズズ、と侵入していく俺に絡みつく内壁。ゴム越しだが、吸い付いてくるその感触に、今イッてもおかしくはなかった。

しばらく、その状態を保つ。

泣いているの涙を掬った。

「……大丈夫か?」

「痛いって言ったのに……ッ……うぅぅ……」

「悪い……少し、このままでいるから」

髪の毛を撫でてやると、が少し目を細めた。

「……景吾、キスして?」

「いくらでも」

繋がったところをなるべく動かさないように、に口付けをする。
キスすると安心するらしく、少しずつ体の硬さが取れてきた。
何度目かわからないキスをし終わった後、が言った。

「……動いて、いいよ?」

「…………本当にいいのか?悪いが、動きはじめたら、止められねぇぜ?」

「う、ん……大丈夫」

微笑んだに、もう1度キスをして、ゆっくり律動を開始する。
最初はやはり痛むのか、は顔をしかめていたが……段々と、喘ぎ声の方が勝ってきた。
その声の色っぽさに、ニヤリと笑ってしまう。

「んっ……あっ、あっ……はぁっ……」

俺の律動と同じリズムで出る、喘ぎ声。
艶やかなその声は、俺の耳を、神経を刺激して。

「あっ…あぁ、はぁっ…ぅんっ……」

「感じて、きたか?」

「やっ…景吾、の……意地悪……ッ」

が噛み付くようなキスをしてきた。
それが可愛くて、もっと律動を早める。

「はっ、んっ……ん、ぁっ……」

「なぁ、……ッ」

「な、に……ッ……やぁんっ」

わざと耳元まで近づいて。
1回耳を舐めてから、囁く。

「愛してるぜ……?」

の目が、いっぱいに見開かれた。
ふっ、と微笑んで。

「……愛して、るよ……ッ、景吾……ッ」

返って来た答えに満足する。
ズッズッと卑猥な水音が響いて。

「あ、ぁぁっ……」

「……くっ……」

俺はの全てを、味わった。





全てが終わって、後処理をして。
ぐったりしてるを抱きしめたときに、どうしようもない幸福感が俺を包んだ。

「……景吾……」

「なんだ?」

「……このままいたら、明日宮田さんとかがぶっ飛んじゃうんじゃないかな……」

「あぁ……電話しとくか」

ベッドから手を伸ばし、内線電話を手に取り、出てきた使用人に『明日は起こさなくていい』とだけ伝える。
……これで、と2人きりの時間が長くなった。

「眠……」

「寝ていいぞ?」

「うん……でも、なんかもったいなくて……」

眠そうに目をこすりながら、が俺を見つめる。
たったそれだけなのに、思わず反応しそうになる体を、必死で抑圧する。
…………初めてだったに、いくらなんでもすぐに2度目はきついだろう。

「もったいないって……何がだ?」

「……初めてが終わった、この幸せな時間が」

きゅう、との手が絡んでくる。
…………可愛すぎる。

「お前……そんなこと言ってると、また襲うぞ?」

「えっ……そ、それはちょっと……」

「なら、寝ろ。いくら俺様でも、寝てるところを襲いはしねぇ」

「あ……え、と…………」

「……起きてるなら、俺様に付き合え」

「おっ、おやすみなさ〜い!」

が目を閉じる。
閉じられた瞼にキスを落として。

俺も欲望が再発しないうちに、目を閉じた。