安心したような顔で眠るアイツをみて

とてつもない愛しさを感じた

サラリと髪に手をやれば

零れ落ちた髪の分だけ

愛しさが増した



存在証明3




「………………………ん?」

目を細く開けて、眩しそうにして、また目を閉じる。そして、そのまままた眠りに入る。
いつものパターンだ。
だが、今日は。
2度目の眠りに入って少し経つと、出来事を思い出したのか、目をぱっと開けた。

「あっ?」

「……よぉ」

隣にいるオレに、相当驚いたのか、ぱかっと口を開けた。
そして、顔を真っ赤に染める。その表情の変わりように、思わず笑いが浮かんでしまった。

「…………大丈夫か?」

「あ、うん…………大丈夫、デス……なんか、痛いけど……」

「………………悪かったな」

「は?」

「イヤ、結構キツくしちまったからな……」

「…………バノッサが謝ってる〜〜〜……」

「テメェ…………もう1回襲ってやろうか」

「え。それは勘弁(汗)」

そう言ってから、オレの顔をじっと見つめて。

「………………おはよー」

「…………おぅ」

さてと、とタバコに火をつけた。

「あっ!バノッサ、なんで服着てるの!?」

「テメェがぐーすか寝てる間に着たんだよ」

「ずるいー!私も着る!!…………ってわけだから、あっち向いてて」

「…………昨日、さんざん見ただろ」

「それとこれとは話が違う!!………あー、でも、汗でベトベトする……お風呂、入って来ていい?」

「あぁ」

「……だから、あっち向いてて」

しょーがねーな、と舌打ちをして、アイツとは反対側をみる。
ベッドから降りた気配がして、2、3歩足音がする。
そして、その後。
不意に足音が止まって、ぺタリと座り込んだ音が。

「…………?居候?」

タバコをくわえたまま、そちらに近づく。
見るな、と釘をさした割には、体にタオルを巻きつけていたアイツは、顔を真っ赤にして、オレを見上げた。

「バ、バノ…………」

「あぁ?」

ぱくぱくと口を開くが、言葉になっていない。

「なにを…………あぁ」

視線を足に走らせて理解する。
……それは、昨夜の痕跡。
足を伝い落ちてくる白濁の液に、アイツは戸惑ったのだろう。

「…………しょーがねェな」

ひょいっと抱えあげて、風呂場に連れて行く。

「わあぁぁ!バノッサ、降ろして〜!!重い、重いから!」

「あぁ?暴れると、このままベッドに戻すぞ」

「え(汗)」

風呂場に連れて行き、浴槽に張っていた湯の中に落とす。

「わぁ……ぷっ……あー、鼻の中に水入った……んー……あ!ありがと!……ってわけで、さっさと出てってください」

しっしっと虫でも追い払うかのように、オレを追い出す。
ドアを閉めてから、タバコの煙を吐き出した。
白い煙が、視界を曇らせる。


今までの、どの朝よりも最高な気分だった。


さて。
後の問題は。


カノンにどんな朝帰りの言い訳をしようか。