「いいこと思いついた!」
屋上で昼食をとっていた時、は突然パッと笑顔になると俺に勢いよく近付いてきて言った。

「景吾、花火しに行こう!!」



HANABI





高校の外部受験で入ってきたは、俺を最初から「跡部財閥の御曹司」ではなく「跡部景吾」という人間として接してくれた数少ない1人だ。媚びへつらわないし、恐れず対等にものを言える。
俺のことを「景吾」と呼べる唯一の女。
2年になった今、クラスこそ変わってしまったが相変わらず一緒にいる。

しかしはたまに想像もつかないような突飛なことを言い出すことがある。
普段は比較的ポケポケしているのに何かひらめくととことん突っ走るタイプらしい。


「あーん?花火なら夏だろうが」
「だってあたしの友達季節に関係なく1年中花火やるって言ってたもん」
そりゃどんな友達だよお前・・・
「ていうかお前花火はするもんじゃなくて見るもんだろ」
「えーっ景吾花火したことないの?!」
「夏エーゲ海にバカンスに行く時に花火師が水上から上げる花火を見る位だな」
「信じられない・・・じゃあますますやらなきゃ!うち去年の花火まだ残ってたから持ってく!景吾が部活終わるくらいに校門のとこ戻ってくるから行こうね!」
そう言っては駆け足で教室へ戻っていった。

普段は何もないところで転ぶような奴なのにどうしてこんな突然行動的になるんだか不思議でならねぇ。
まぁそんなところも可愛いんだがな。



部活も終わりそろそろ陽も落ちるという頃。結局勢いのまま2人で近くの海岸まできている。
去年どれだけ買い込んでいたのか、は2人には到底多すぎる位大量の花火を持ってきた。
「お前2人だけでそんな使い切れるのか?」
「せっかくだから色んな種類やりたいじゃない。それに景吾に花火の良さをわかってもらわないとね!」
は着々とパックを開け、様々な色を出す花火をどんどん消化していく。
やってみると花火は案外楽しいものだった。
・・・こいつが一緒だからそう感じるのかもしれない。


「やっぱり最後はこれでしょ」
そう言ってが取り出したのはしなびた細いひもみたいな花火だった。
「そんなちゃっちい花火がラストかよ」
「まさか線香花火も知らないの?!」
「やったことねぇのに細かい花火の種類なんて知るわけねぇだろ」
「もう・・・ほら、持って」
そう言って1本ずつ線香花火を持って火を付けた。
小さな火の玉からパチパチと火花が飛び散る。

「初めての割によく続くねぇ」
「バーカ、俺様の集中力をナメんじゃねぇよ」
「・・・恐れ入りました」
「フン、なかなか風情があっていいじゃねぇか」
暫く黙ったまま2人で線香花火を見つめていた。


そしてあんなにたくさんあった花火も残りが線香花火2本になった。
しゃがんだまま同時に火をつける。
暗闇の中、の表情が僅かに飛び散る線香花火の火花の光だけに照らされて映る。
「キレイだねー・・・」
それはまるでその儚く揺れる火の玉に酔っているかのようだった。
その表情が、今まで見てきた数々の美しいものよりも遥かにキレイで。
「きゃっ!」
何故だかわからないがとても愛しく思えて、次の瞬間にはを抱きしめていた。
「あー落ちちゃったじゃない!」
「そんな顔して笑うお前が悪い」
俺はにっと笑うとびっくりしているにキスしてやった。

「愛してるぜ、


こんな気分が味わえるなら花火も悪くない。
次の夏が楽しみだ。




ソラより頂いた、跡部夢―――!(大興奮)
た、たたた誕生日プレゼントに貰ってしまいました……!花火だよ!海岸だよ!一緒に行っちゃったよ!(落ち着け) なんかもう、妄想と煩悩に付き合ってくれてありがとう……!(感涙)
ホントどうしようもない子ですけど、どうぞこれからもよろしくお願いいたします……!(願)ありがとうございましたー!