「いい天気☆」

は弁当(自分で作った)を持って、外へ出ていた。

「苦労してお弁当を作ってきた甲斐があった」

適当な木陰を探し、そこにゆっくりと腰をおろす。少し冷たい風が今はとても心地よい。

かぱ、と弁当のフタをあけると、そこにはが苦労して作った数々のおいしそうなおかずが待っていた。

「いただきます♪」

きっと、この弁当の時間を心待ちにしていたのだろう。彼女の口から嬉しそうに食前の挨拶が漏れた。

「……ミス・。ここに座ってもいいかね?」

は突然かけられた言葉に、楽しみにしていたはずの弁当の存在を忘れ、危うくフォークを取り落としそうになった。

「え、えぇ。どうぞ、スネイプ先生」

気をなんとか持ち直して、できるかぎりの笑顔で答えても、帰ってくるのはそっけない返事。

「そうか」

だけ。

でも。

珍しい。

珍しすぎる。

あの、スネイプが女子生徒に話し掛け、あまつさえ、その隣に座ろうとは!

「…………」

「…………」

気まずい沈黙が2人の間をかけめぐる。

「……ところでミス・

「は?」

「君はこの薬を作るのに、この薬草の比率のことをどう思うかね?」

(なんだ、そっち(薬)の話か……)

心持ちガッカリしながら、は頭の中でできるかぎりの知識を総動員して、実際に作っている場面を想像しながらゆっくりと口を開いた。

「そうですね……この系列の薬なら、この薬草はそんなにいらないと思います。むしろ、効き目をあげるにはこっちの薬草を多めにした方がいいと思いますけど……」

スネイプは満足そうにちょっと頷く。

不思議に思ったは自分の好奇心に負け、スネイプに目を向けた。

「……先生、それがなにか?」

「いや、それだけが聞きたかったのだ。楽しい時間を邪魔して悪かった」

「いえ……?」

むしろ一緒で嬉しかったのですけど、とは流石に言えず、曖昧な笑顔でごまかす。

そのままスネイプは、満足そうな顔のまま、足早に立ち去っていった。

「……一体なんだったんだろう???」

わけのわからない憧れの先生を前にして、はパクリ、とウィンナーにかじりついた。

彼女がスネイプの奇怪な行動の意味を知るのは、それから数日後のこととなる。





数日後―――。

はコンコン、と研究室のドアをノックした。

「誰だ?」

「……スリザリンのです」

「入れ」

自然にドアが開く。それとほぼ同じスピードでは中へ進んだ。

中には、相変わらず本を読みふけっているスネイプ。入っていっても顔を上げるどころか、目さえ向けない。意を決しては口を開いた。

「あの、先生。何か御用でしょうか?先生が私を呼んでいる、と聞いたのですが……?」

「そのとおりだ、ミス・。……さて、まずは茶でも飲まぬか」

有無を言わせない口調。というか、すでにテーブルの上には小さめのティーカップが出ていた。中にはきれいな褐色の紅茶。

「あ、いただきます……先生は?お入れしましょうか?」

「いや、いい」

不思議に思ったが、紅茶は好きだったので、はなんの疑いもなくその紅茶を口に含む。

コクン、と喉が鳴った。

かすかにスネイプが笑う。読んでいた本を静かに閉じた。

「?で、先生、御用とは……」

が笑いかけたその時だ。

トックン、と大きな高鳴りがしたのは。

「!?」

突然湧き上がってきた自分の体の熱さに戸惑う。

「???」

思わず椅子から転げ落ちる。

「……ミス・?どうしたのかね?」

「……あ、あの……よくわからないのですが……」

しかし、は悟った。そのスネイプの顔を見て。

「……先生、この紅茶……?」

「さあ。我輩は何も知らないが?」

(うそつけ!)

思わず、心の中で悪態をつく。

「とにかく、ここに横になりなさい、ミス・

ズルズルと這うようにして移動し、ソファの上に横になる。

「……熱い……」

「熱いのかね?」

スネイプはのローブに手を掛けた。冷たい手が肌に触れた瞬間、ゾクッと背筋を駆け上るものがあった。

「……いやっ……」

思わずその手を払いのける。しかし、そのことにすぐに気づいて謝罪する。

「あ……ごめんなさい……」

熱で潤んだ漆黒の瞳。その双眸がスネイプを捉えた。理性をかろうじて押さえる。

「……『いや』とはどういうことかね、ミス・?君は、我輩のことが嫌いだと、そう受け取っていいのだね?」

「そ、そんなことは絶対にありません……!むしろ……」

「むしろ?」

スネイプの顔がスッと近づく。

「……むしろ、好き、です……」

体の熱と恥ずかしさのため、の顔が真っ赤になった。

次いで、泣き出しそうになる。

スネイプは少し慌ててその体を抱き寄せた。ビクッと体が震える。

「……安心しろ……我輩もだ」

耳元で、低いテノールの甘い声がすると、の背中を快感がかけめぐった。

きゅ、と耳を噛む。

ビク、との体が反応した。

「せ、先生!」

「……先生ではない。……セブルスだ……」

「いえ、あの……っ……きゃ……っ」

起き上がったため、クラ、と倒れかける。

その体をスネイプの腕が抱きとめた。

混乱とスネイプが盛った薬のおかげで、目をくるくるとまわしているを見て、スネイプは息を1つ吐いて、の耳元で呟く。

「……しょうがない、今日はこれまでにしておくとしよう……明日からは容赦しないが」

呟かれた言葉に、またもは目をまわした。





ちなみに、スネイプが盛った薬は、『媚薬』と『自白剤』を混ぜたもの(もちろん自作)。

可哀想には、自分に盛られる薬の比率を答えさせられていたのだ。

さあ、ちゃん。

明日からはスネイプが差し出す食べ物と飲み物には、要注意だ!





あとがき(つーか、言い訳?)



いっや〜……このままいくと、いくとこまでいっちゃいそうだったので……やめといたね、今回は。(爆)

まあ、スネイプはじめてだしvv大目に見てvvにしても、ムズッ!……ちょっと途中で泣きそうだったよ……。

素敵な(黒)不二くん(笑)をありがとう!しかも、裏まで……裏のいただきものは初めてなので嬉しいっす……(死ネvv)

んでは、またね〜!