江戸で募られた浪士隊は、長い旅路を経て、京へたどり着いた。
しかし、突如、尊皇攘夷を唱え出した、発起人である清河八郎は、江戸へ帰還すると言い出す。

それに納得できなかった近藤さんや、同じ浪士隊で水戸出身の芹沢さんは、壬生浪士組として、京に留まることになった。
もちろん、私も一緒に京に残った。

そのときだった。

本来の主人公。

桜庭鈴花ちゃんが入隊してきたのは。








「お初にお目にかかります、桜庭鈴花と申します」

「あ〜……君があの会津藩からのねぇ。…………俺の名前は近藤勇。この、壬生浪士組の局長だ」

なんてそっけない答えなんだろう。
期待されてないことがありありとわかる。

「まぁ、君に関しては除隊は自由、ということにしておくから。いつでもきつくなったら辞めていいからねぇ〜。あと、女の子なんだから、あまりキツイ任務は……」

「なっ……女だからって甘く見ないでください!」

「んー、でもねぇ…………」

「というか、大体、あの方はどうなんですか?あの方も、女性隊士ですよね?」

私は、庭で草木に水をやっている女の人を見ながら、局長へ言った。
剣で身を立てて行く、と決めたときから、女として見られるということは諦めている。
どんなに辛い仕事だって、男の人と対等にやっていけるのに。
心持ち睨みつけるように、近藤局長を見上げた。
ふと、近藤さんが庭に目を移す。
視界に、あの方の姿を捉えたかと思うと―――その目が、柔らかな光を帯びた。

「あいつは―――特別だから」

なんとなく……わかった。
あぁ、近藤さんはあの人を想ってるんだ、って。
あの人が、視線を感じ取ったのだろう。少し離れた庭から、ぱっと顔をこちらに向けた。
にこっ、と微笑む顔がとても可愛い。

「こっんどっうさ〜んっ!新しく出来た甘味処…………って、あわわわわ、取り込み中ですね、ゴメンナサイっ!総司君でも誘ってきます!」

私の姿を見つけたのだろう。慌ててあの人が頭を下げて後ろを向いて駆けていく。
すると、今度は目の前の近藤さんが慌てて立ち上がる。

「わぁぁぁぁ、ちゃん!ちゃん、待って待って!行くから―――!じゃ、桜庭君!またっ!」

、っていうんだ、あの人。
壬生浪士組の中で、たった2人の女隊士。
仲良くなれるといいな。

「あ、さんが近藤さんに気づいた……」

後ろから追いかけてきた近藤さんに、さんが笑いかける。
近藤さんも、柔らかく笑う。
そして、2人一緒に消えていった。

「………………なんだか、通じあってるよなぁ……」





傍目には、相思相愛の2人。