架空の人物だから、抑えられていた。
実際はいない、とわかっていたから本気にはならなかった。

だけど。

もし、目の前に現れたら?




心の行く先




『幕末恋華 新撰組』というゲームがある、とは知っていた。
元々、新撰組が好きだったから(大河も見てたし)興味はあったけど、まさか買おうとは思ってなかった。
でも、なんでだろ?ネットのとあるサイトで、ふとクリックした先で見たイラストに心惹かれて―――気がついたら、購入のクリックを押してた。

で、届いたら、やりこんでやりこんでやりこんで。

…………歴史上の事件に深く入り込んでいくゲームは、私もその場にいるような錯覚さえ起こさせた。

近藤勇…………悲しい運命を全うした人。

エンディングを見るたびに、ボロボロ涙が溢れてくる。
よくこれだけゲームで泣けるね、って友達には言われたけど、何度見ても泣けるものは泣ける。

すごくすごくこの、『近藤さん』が好きになった。

もちろん、一キャラとしてだけど。
だって、マジメにゲームの中のキャラに恋しちゃ、それはそれでマズイと思うし。

架空の人物に対する想い以上のモノは、持っていなかったのに。




ガクン、と体が落ちる感覚。
足を踏み外した、と思った。
思わず、反射的に目を瞑る。

足がきちんと地面に着いたことを確認して、私はそっと目をあけた。

「……………………ここ、ドコ…………」

目を開けたときに見たのは……

見知らぬ…………立派な家だった。