プレゼント








「……、あんた何やってんの?」

「編物」

きっぱりと答えた私に、は心底驚いた←失礼な

「編物ぉぉぉぉ!?あんたと編物なんて地球とアンドロメダ星雲くらいかけ離れてるよ!?」

「……とっても具体的な説明ありがとう……」

額に青筋を立てて応戦しながらも、私はせっせと手を動かした。

「仙道くんにあげるの?」

「……他に誰がいるんですか……」

「新しく彼氏でも出来たかな、と思って」

「……出来ませんて……」

ひぃひぃいいながら私は手を動かす。

不意にが黒板を見た。

そしてゆっくりとこちらを振り返る。

「……、あんた今日が何日だか知ってる?」

「……言わないで。今日気付いて今日はじめたんだから」

持っていた教科書で、はスパンと気持ちいい音をさせて私の頭をはたいた。

「馬鹿〜〜〜!今日、もう12月20日じゃない!編物なんかやってて間にあうか〜〜〜!!!」

「間に合わせるの!!あぁっ!編目間違えちゃった……くそ〜〜!」

ピ―――と毛糸をひっぱってやり直す。

「……4日でできるの?」

「間に合わせる」

まだ30cmにもなってないが、妙に説得力があると思った。

!なにやってんの?」

その声に、私は反射的に持っていた毛糸やら何やらを机の中に隠した。

内緒でプレゼント……というのも今更だが。

「……何か隠した?」

「べ、別に?わかんないトコに教えてもらってただけだよ〜」

「……目が泳いでるけど?」

「き、気のせい、幻覚!!!」

「へぇ〜……さん……何やってたの?」

はっと見れば、は彰がそばに来た事で、もう目がハートになってる!!

口が『あ』の形に開いたのを見て、私はすぐにその口を塞いだ。

「はひふぉふぉ……」

編物、と言ったつもりらしいけど、これじゃなにを言ったのかわかんないだろう。

「やぁだな、彰ってばvvほら、もうすぐチャイムなるよ♪」

おあつらえたように、予鈴が鳴り出す。

「ほらほら、席についてvv」

彰はしぶしぶ自分の席についた。

よっしゃ、これで授業中も編める!!

なにせ、彰は私と丁度対角線。

そして私は窓際の一番後ろ!彰がこちらを見るには後ろを向かなきゃいけない。

当然そんなことしてたら、怒られるだろうし……第一、彰が授業中起きているわけがない。

「今日はまず『ラリ活用』についての説明から行う。教科書67ページを開けるように」

そんな声を私は右から左に聞き流して、とりあえず教科書だけ開けて編みつづける。

慣れてきたし……なんとか終わりそうvv

と思って、ふっと前を見たら。

バッ。

私はまた毛糸を机の中に隠した。

じぃぃぃぃ〜……

み、見てる……

あ、彰が見てるよ!!!

ばっちりこっち見てるよ!

いやぁぁぁ〜!これじゃ授業中できない〜!!!

どうしよう〜〜〜!







4日後―――

「うわぁぁぁん!!!ぃぃぃぃ!!!」

「……やっぱりねぇ」

泣き叫ぶ私を見て、は深く深く溜め息をついた。

「……で?どこまでいったの?」

「首が一回り半くらいまけるまで」

「頑張ったじゃん。それなら後3時間もあればできんじゃない?授業中は?」

「彰が見てるの!授業中できないし、どうしよう〜〜〜!」

「……保健室行ってるっていっといてあげるから、屋上なり保健室なりでやってこい……」

な、なるほど!その手があったか!!!

「ありがとう、!!!」

私はダッシュで屋上へ向かった。

保健室だと隠れてやらなきゃいけないからはかどらないし。

ばんっと勢いよく屋上のドアを開ける。

暖かいお日様が顔をのぞかせている。

今日はあったかいぞぉ!

「よっしゃ、やる気が出てきたぞ〜!やり終えてやる!!!」

私は毛糸を持って叫んだのだった。



そして、格闘する事3時間14分。

ぱちん、とはさみで毛糸を切った。

「……お、終わった……」

手には長いマフラー。

「やったぁ〜……」

マフラーを抱えて寝転がる。お日様が気持ちいい。

安心したら眠くなってきた。

ここ4日間まともに寝てなかったし。

ぽかぽかのお天気が眠気を後押しする。

お天道様も眠れとのご命令だし……

「1時間だけvv」

私はゆっくり瞼を閉じた。





ひゅりゅうりぃ〜………

…………

ひゅるぅぅぅ〜……

…………

ぶわわあぁぁ〜……

「なんっだー、この風!!!……れ?寒くない?」

がばっと起きてみれば、特注品のでかい学ラン。そして隣には……

「……起きた?」

「げ」

「……開口一番それはないでしょう……」

慌てて周りを見回してマフラーを捜す。

そしてしっかりと両手に抱きしめている事に気がついてほっと息をついた。

同時に、そのマフラーに視線がそそがれていることにも気がつく。

「……あの〜……彰サン?」

「……誰にあげるの?そのマフラー」

「はい?」

ぽふっと腕の中に閉じ込められた。

学ランをかけてくれていたからか。冷たいワイシャツ。だけど腕はとても温かい。

「ずっと編んでたデショ。……誰にあげるの?」

すっと唇を大きな指でなぞられて……キスされた。

体が密着しているから、マフラーをとりだそうにもできない。

それでもなんとか精根尽くして編んだマフラーを取り出す。

「……彰以外の誰に編むっていうの!!」

ふわっとマフラーをまいてあげた。彰が目をいっぱいに広げる。

「……俺の?」

「当たり前!!」

恥ずかしくなって、私は彰から離れた。

「彰以外の人のためにこんな一生懸命なにかするわけないじゃん!馬鹿だなぁ」

笑って後ろを振り向こうとしたら。

今度はもっと力強く抱きしめられた。

「……ありがとう、

「……どーいたしまして」

へへ、と笑ったら、またキスされた。





あとがきもどきのキャラ対談



銀月「・・・・・・私も編物してたなぁ・・・」

仙道「・・・たった3日でやめたくせに」

銀月「ぎくっ・・・うるさいなぁ!もう・・・相変わらず、白だか黒だかわかんないし」

仙道「本人クリスマスドリのつもりなのに、全然クリスマス絡んでなかったり?」

銀月「そーそー、甘く甘くしようと思ったのに・・・って、痛いとこつかないでよ!!」

仙道「ハイハイ。・・・感想くださると、銀月泣いて踊って叫ぶと思うから、よろしく頼むよ」