「ネコ」

「犬」

「ネコ」

「犬」

「………………ネコ」

「犬!!!」

そんな言い争いをしたのは、つい3日前だったのに。

「どーゆーことよ、これ〜〜〜!!!」

お隣とお向かいから苦情の電話が来た。



ペット論争




ワタクシ、と流川楓は、俗に言う幼馴染というヤツで。
それはもう、ゴマ粒のころから(腹の中のころといいたいらしい)の付き合いだ。
…………というのも、両親同士が仲が良くて、しょっちゅう一緒にいるからなんだけれど。

気づいたら楓がいたし、家も隣だった、というわけで。
一年中遊びまわっている、うちらの両親のために、私はいつもコイツの世話をしている。

で。今日、私がなぜ、こんな大声を出したかというと。

楓の腕の中にいる、黒い物体のせいなのです。

「………………楓さん?その物体は………………」
私がそういったとたん、反応するように、
にゃ〜ぁ。
と声がした。

「…………………見てわかんなかったら、オマエはアホだ」

「わかるわ、このバカエデ!!わかるから言ってんだ!!!なぜ……なぜ、ネコがいるんだ〜〜〜!!!」

「拾ってきたから」

「って、アッサリ!!…………私、絶対犬がいいっていったのに〜〜〜!!!」

「オメーが飼うんじゃねぇだろ」

「じゃ、楓、世話できるの!?」

「……………………」

小学生の『お母さん、僕、世話するから!!』じゃないんだから…………。

「しかも、黒ネコ!!前を横切ったらその日一日悪いことが起こるという、黒ネコ!毎日前を横切るから、これからずっと悪い日ってこと!?」

「んな、迷信信じてるのか?ってか、ウルサイ」

ストン、とネコを下ろして、自分もしゃがみこみ、長い指で、ネコのあごをくすぐる。
子猫だからか、逃げようとはしないで、目をつぶってされるがままにされている。

やばい……………可愛い……………。

「………………オマエ、今、可愛いって思っただろ」

げ。バレバレ。

「た、確かに可愛いけど、犬のが可愛いもん」

「絶対ネコ」

「ネコって芸なんにもしないじゃん」

「犬は、主人に媚びるからイヤ」

にゃぁ。

可愛い泣き声。
思わず、胸がきゅんとしてしまった。
しかし、だまされない。
私は犬を飼って、毎日一緒にテレビを見るのが夢なんだ!

「ネコ飼ったら、犬、飼えないじゃん!」

「飼える」

「ケンカするよ!?」

「…………………」

ほーら。黙った。
さぁ、どうでる?

すくっとたって、こっちに近づいてきた。
なんだなんだ?やるか?(戦闘体勢)

と思ったら。

「何する…………んっ」

口、ふさがれた(恥)

「イキナリ、なにすんのよ〜〜〜!」

「………………ケンカするほど、仲がいいっていう」

「だからって、犬とネコが仲良くするわけ………ってか、イキナリキス……んぅっ」

いつもより長い。
う〜、苦しい。

「………………仲良くさせる」

「………………ちゃんと、面倒みてよ?」

「………………オマエの次に、な」

「んなっ…………なんつー恥ずかしいことを…………」

ニヤリ、と笑ったのを、私は見逃さなかった。