下駄箱から画鋲が降ってくるのはいつものこと。

毎朝、机の中に不幸の手紙が5通以上(以上っていうのがミソね)も日常茶飯事。

油断したら廊下に転ばされたりもする。

ま、それら全ての原因が。

私の幼なじみ仙道彰にあるなんて、わかりきったことなんだけどね。





屋上






ゆっくりと教室のドアをくぐる。近くにいた親友に声をかけた。

「……おはよ〜……」

「あ、おはよ〜……って、あんた、大丈夫!?」

入ってきたの顔色を見て驚きの声を上げた。

「……ウン……なんとか生きてる……」

「……なんとかって……なに?貧血?」

「多分……血をくれ……朝からたちくらみばっか……」

ふらふらと窓側の一番後ろというかなりいい席に近づく。

つつつ、と親友―――が側によってきて耳元に口を寄せる。

「……アレ?」

「……ううん……朝、ほとんど食べなかったからだと……キツイ……」

小さな声で返すと、既に限界に近づいている体を休ませようと椅子を引く。

と。

「……人が死んでるときにやめてくれ……」

「……あちゃ……」

椅子には飴がしかれていて。

当然、ドロドロのベトベト。

このまま気づかずに座ったら、制服がすごいことになるだろう。

「……しゃーねぇ……、私、今日サボりで」

「うん………でぇぇぇ!?」

「んじゃ。あ、具合悪くなったとか適当によろしく……」

そのまま、はふらふらとした足取りで教室を出た。

「……あれ、?どうしたんだよ?」

教室を出れば、中学からの男友達がわらわらと寄ってくる。

「……う〜……具合悪くてさぁ〜……」

「マジ?女は大変だなぁ〜……」

ケラケラと数人の男が笑う。

「いや、ちがくてちがくて……」

「へぇ〜……違うん?……朝飯食ったか?」

「……食ってない……」

「それが、原因だろ。……ほら、俺の秘蔵のミルク蒸しパン。ありがたく食いやがれ」

油っこくなく、胃に優しいミルク蒸しパンを差し出す友達に、感動を覚え『ありがとう』とお礼の言葉を言ってからまた歩き出す。

「あ、ちょっと待てよ!」

数人の中から一際背の小さい男が声をかけた。

「ついでに、これもやる!」

ポケットに手を突っ込んで投げてよこしたのは、小さなポカリスエットの缶。

「…………サンキュ!明日、なんか奢ってやる!」

「マジ!やったね!」

嬉しそうにVサインをすると、んじゃ、と男達が去っていった。

昔からは男友達が多い。

女友達もいなくはないが……とにかく男友達が多い。

あくまで、『友達』だが。

その『男友達』が多いのも、の女友達が少ない原因の一つだろう。

友達の心遣いに感謝しつつ、は屋上の扉を開けた。

瞬間。

ぶわっと大量の風が吹き込んできた。

「…………涼し……」

体の中にたまった熱が全て連れ去られたかのような、爽快感。

風の所為で言うことを聞かない扉をなんとかしめて、はよいしょ、更に上へ続くはしごを上った。

「…………いただきます」

友達秘蔵のミルク蒸しパンにパク、とかじりつく。

ほんのりとした優しい甘さが口の中に広がる。

「……あ、これおいしい……」

あまりのおいしさに、もう一口、とかじる。

半分ほど食べると、お腹が一杯になったが、喉の渇きを覚えた。

もらった缶を開けて、くいっとあおる。

胃の隅々までわたっていくような感じをうけた。

こちらも半分ほどで飲むのをやめ、残ったパンの重石にする。

目を閉じる。

少し元気になったからか、ふつふつと怒りが湧いてくる。

(そりゃぁさ……彰と私は幼なじみだけど……ここまでされる必要なくない?)

「ふんっだ」

そういって、ゴロンと寝転がる。

しばらくそのままの状態で風をうけるが……

不意にむくりと起き上がると。

「なんだよ、彰と話して何が悪い〜〜〜!こっちとしては……こっちとしては……おまえらの方が羨ましいんだよ、馬鹿ヤロ―――!!!」

はぁはぁはぁ……

まさしく、王様の耳はロバの耳ですね〜……。

「ふんっだ」

もう一度言って、また同じようにゴロン、と寝転がる。

と。

「…………ん?」

自分を照らす太陽がない事に気付く。

見覚えのあるツンツンした影。

「……すげー声……」

「……!!!!!」

ガバッと起き上がって、振り返ってみれば毎日見ているツンツン頭の大男。

たら〜……と汗が頬を伝う。

「うす」

「……ウス……」

「なにやってんの?」

「……さ……ぼり?」

「なんで疑問形?」

「…………あは?」

笑って。

逃げ……

「おい!待てよ」

……られませんでした。

セーターをつかまれたので、足だけが空回り。

「ぎゃぁぁぁぁ〜!離せ〜!変態〜!セクハラ〜!」

「……、大人しくしないと……」

「しないと?」

「……本当にセクハラす……」

「大人しくさせていただきます!!!」

言い終わらないうちに、は迫ってきた仙道の顔を押さえながら答えた。

「……なんだよ、つれないなぁ」

「つれないもくそもない!……あんたが目立ちすぎるから、可愛い幼なじみが迷惑してんのよ!なんとかしなさい〜!」

「うん。俺と話すだけでね迷惑うけてるみたいだから……ここは一発がガツンというかな」

「うんうん」

は俺の彼女だって」

「うんうん。……はぁ?」

素っ頓狂な声を出し……は自分の耳をぐい〜っと引っ張った。

「……なにしてんの?」

「いや、正常に機能してるよね、私の耳……なんかとんでもない幻聴が聞こえたんだよね……『俺の彼女云々』って」

「いや、それ幻聴じゃないよ」

「あ〜、やっぱり〜……?」

気付いてズザザザと後退。

「……なにさがってんの?」

「……幻聴が……幻聴が聞こえる……医者に行かなきゃ……っつーことで、じゃ!」

「待ってってば」

「医者は早いうちに〜……」

「待てっていってんの!!」

がしっとつかまれたからには動けない。

仙道がを自分の方に向けようとして気付いた。

「……あれ?」

「……なに?」

「顔、真っ赤……」

「うるさぁぁい!!!」

ばこっと仙道の腹を殴る。

「……もしかして、俺、彼女GET?」

「……さぁね」

赤く火照った顔を背ける。

「んなこといってると、セクハ……」

「GETですね〜!一億年程前からGETしてますね〜!」

「…………」

「……なにさ」

「……改めて……ずっと好きだったから付き合ってください」

真っ赤になってうつむく。

仙道がの目線まで腰を落とした。

「返事は?」

ぷぅ、と頬を膨らませる。

「私も好きだった……から、お願いシマス……」

「お願いシマスvv」





その後は、2人してサボって屋上で昼寝。

「……なぁんか、さっきまで彰怖かった」

「そう?俺、告白しよーと思ってたから緊張してたのかもvv後は……」

「後は?」

寝転がった体勢で顔だけを仙道へ向ける。

「……が他の男にパンとかもらってたから嫉妬してたのかもvv」

「そ……そんなトコから見てたの!?」

「俺はのことをいつも見てマスvv」

「なんか……ふつーの彰に戻った……セクハラ親父だぁ〜……」

「んじゃ、セクハラしちゃおうかなvv」

ちゅ。

いきなりのキスに驚いて目を閉じる事すら忘れる。

仙道の長い睫が目の前に見えて更に顔を赤くさせた。





さて。

屋上から一週間後。

仙道とは『恋人宣言』をした。

ビクビク怯えているの肩を抱きながら仙道の言った一言は

『俺の彼女になんかしたら、男も女も許さないからvv』

そんな彼の背後には吹雪が舞っていたといふ……



あとがきもどきのキャラ対談



銀月「はっはっは〜!仙道さん、お久しぶり〜!」

仙道「久しぶりだなぁ〜……それもこれも銀月が全然かかないからだよな(ニッコリ)」

銀月「うふふん。……あのさぁ、なんか今回仙道さん黒くない?」

仙道「銀月が黒いの好きだからだろ?」

銀月「はっは〜!バレたぁ?……あのさぁ……そろそろ裏にもでてくんない?」

仙道「キリリクだよな♪遅筆の銀月♪」

銀月「……うっ……だから、頑張って出演……」

仙道「のためだったらする……銀月のためにはしてやんない♪」

銀月「わぁ〜い!嬉しい〜(泣笑)こんな銀月に感想下さい」