日課 「カエッ!お弁当忘れてったっ!」 教室の扉を勢いよくあけたのは、湘北高校一年、。 「…………うるせぇ……」 ポケットに手をつっこんで、眠そうに男バスエースでの幼なじみの流川楓は答えた。 「あ……一番近くだったね……そうそう、カエッ!あんた、お弁当っ!」 「……おぅ……サンキュ……くぁ……」 眠そうにあくび。 「……あんたねー、いつまでも私に弁当届けてもらえると思わないでよ?私だって、朝練あるんだからね?」 「あー……お前、何部だっけ……?」 ぼかっとは流川を殴った。 「あんた、いつまでも寝ぼけてんじゃないのっ!あんたと同じバスケットボール部よっ!」 「ZZZ……」 「寝るなぁ〜〜〜〜!!!!」 どかっともう一度殴る。 これが毎朝の日課。 毎朝同じことが繰り返される。 最後にが怒れば、流川が寝る。 それで一旦は終了したかのように思えるが…… 昼にまたその騒動は起こる。 「あ〜……これで後は、2時間我慢すればいいのね〜!早く授業よおわれ〜」 は箸を片手に天を仰いだ。 「……あんたもそーとーのバスケ馬鹿よね……」 となりで卵焼きを取ろうとしている親友の右手をひねりあげて怒鳴る。 「あったりまえじゃないっ!私、学校にバスケしにきてるんだもんっ!」 「はいはい……」 ぱくっと卵焼きを食べる。もぐもぐと口を動かしていると、どさっと肩に重いものがのっかってきた。人の腕だ。 「カエ〜……あんた、またなの?」 答える代わりに、抱きしめる。 その時点で親友はおやおや、と言って立ち去ってしまった。 「……メシ……」 「……あげたでしょ、お弁当……」 「……食っちまった……」 「大馬鹿者っ!」 「うるせぇ……メシ……」 ふぅ、と息をつくと、は言った。 「……しょーがない……さんのお弁当、わけてあげるか」 その言葉を聞くなり、流川はを左手で抱きしめたまま、後ろからハンバーグをひとつつまみだし口の中に放り入れる。 「あぁぁぁぁぁっ!一番楽しみにしてたのにっ!最後に食べようと思って、とっておいたのにぃぃぃぃっ!カエの馬鹿っ!」 「うるせぇ……まだあんだろ……」 「私にとっては一大事なのよっ!カエの馬鹿〜〜〜っ!」 「うるせぇ……」 強引にその顔を向かせると、 強引なキス。 「んっ……」 奥に逃げようとするの舌を追っていって……捕まえた。 「ん……んっ!」 苦しい、と手でとんとん流川の体をたたく。 唇が離れても、銀の糸が二人を繋いでいた。 真っ赤になって、が怒鳴る。 「……カエの馬鹿〜っ!人に見られたらどーすんのよっ!」 「別に……それより、ハンバーグ……食えただろ……」 流川の言葉に、の火山が噴火する。 「馬鹿ぁぁぁぁぁぁ!」 昼休みの日課だ。 「おつかれ〜」 「おつかれさまです〜」 夕方、というか夜、すでにもう真っ暗になっているころに女バスの練習は終わる。 1年のは、毎日雑用をやって、更にシュート練をし、最後に戸締りをしてから帰る。 これくらいの時間に丁度男バスの練習が終わるからだ。 第ニ体育館の扉を閉め終わり、第一体育館の明かりがついていると、は当然のように校門で待っている。 反対に、流川の方が早く終わり、第二体育館の明かりがついていると、流川が当然のように迎えに来る。 「あ、カエッ!おつかれ〜」 「……おぅ……帰るぞ……」 「そんじゃ、男バスのみなさん、おつかれさまです〜っ!」 「気をつけて帰れよ〜っ!」 「は〜いっ!」 そういって二人一緒に帰宅するか、または、 「…………時間……」 「あっ、終わったんだっ!ごめんごめん……」 「別に……早く帰るぞ……」 「はいはい。ちょっと待ってね……はいOKっ!さ、帰ろっ!」 「おぅ……」 そう言って帰宅。 これも日課だ。 ピロピロピロリ〜♪タン、タタン、タ〜ン♪ 携帯がけたたましくなる。 「……はいはい」 携帯の画面には『新着メールあり』 開くと。 『すぐ来い』 のたった一言。 送信者は。 流川楓。 「……今行きますよ〜っ!」 が家を出て、流川の家に行くのもいつものこと。 「……遅い……」 「むちゃいうなっ!」 着いてすぐの一言にが言い返す。 待ち構えるかのように、玄関を開けたらすぐにいた。 「カエ、おじさんとおばさんは?」 「仕事…………メシ……」 「はいはい……」 ちらり、とスーパーの袋を見せると、無言でそれを受け取る。 「ありがと。今日は、お好み焼きね。材料あったから、もって来ちゃったし」 「……おぅ……」 が支度にかかると早い早い。 あっというまに、2枚の特大お好み焼きが出来上がる。 しかも、全部が流川のものだ。 「…………」 無言で食べつづける流川。……しばらくたったところで、ふいに箸をのほうにむけて、無理やりお好み焼きのかけらを食べさせた。 「むっ……カエ、何?」 「お前も食え」 「だーかーらー、私は食べてきたって。ほら、カエはやく食べちゃってよ。片付けちゃうから」 「……一人で食ってもうまくない。お前も食え」 なおも、お好み焼きをの口の中に運ぶ。 「あんたのために作ったんだから、ちゃんと食べなさい!」 「お前も食え」 断固として言いつづける流川に、観念したように席につき、お好み焼きを食べる。 (……なんか、カエが親鳥に見えてきた……) 流川の親鳥、というのもどうかと思うが。 すべてを食べつくしたころ、流川はリビングでNBAのビデオを見る。片づけが終わったころに、も加わる。 そのときは、流川の目が変わる。 いつも眠そうな瞳が真剣をになり、選手のひとつひとつのプレイを目に焼き付け、盗み出そうと、まるで親の敵を見るような眼で見る。 「カエ〜……そろそろ帰るからね〜……」 ビデオが終わり、全ての部屋の電気を消してが言う。 「んじゃね〜。ちゃんと朝起きるんだよ〜」 まぁ、バスケがあるかぎり、彼は起きるが。 「…………」 ぎくっと身をすくませる。 ぎぎぎぎぎ、と音がしてもおかしくないくらいの不自然な動作では首を廻す。 すぐそこには、幼なじみの顔。 「……なぁに、流川クン?」 「……泊まってけ」 「いや」 即答に、流川が驚いたかのように目を見開く。 「なんでだ?」 「だって、カエ、明日また授業ずっと寝てる気でしょう。もうだめだよ。それにねぇ、私だって毎日毎日……きついんだからね……」 「……泊まれ」 「だから!理由を言ったのに、泊まれとはなによ〜っ!」 ぷく、とほっぺたを膨らませてみる。 「……いいから」 有無を言わせず部屋へと運ぶ。 「カエ〜っ!……んっ……!」 ベットに降ろされるなり、耳を軽く甘噛みされる。 「カエッ!」 腕を伸ばして部屋の電気を消すと、右手を服の中に滑り込ませる。 器用に服と下着を片手で外すと、膨らみに顔をうずめ紅い花びらを散らす。 「あ……んっ……!」 その間もせわしなく手は動き、すばやくのつけていたものをとる。 「カエ〜……んっ……」 流川はなにひとつ脱いでいない。黒いセーターも。ジーパンも。 だから、セーターでちくちくするし、ジーパンの冷たい感じが肌に伝わってくる。 「カエ……セーター……痛い……は……ぁっ……」 流川は、無言でセーターを脱ぐ。 「……次は?なにがしてほしい……?」 「……!」 流川の意図に気づいた。 「……カエ……!」 「何がしてほしい……?」 流川は愛撫を繰り返すだけで、何一つ先に勧めようとしない。 「……ジーパン……冷たい……脱いで……」 無言でジーパンを脱ぐ。 「はぁっ……んっ……あぁ……んっ!」 だんだんと、の声が高くなってくる。 「……次は……?」 「……カエの、いじ……わるッ……!」 「次は……?」 「……いれ……て……」 「なにを?」 の顔が羞恥で真っ赤になる。 「カエ…!…ぁん……!」 「なにを……?」 ぐっと、手を握っては思った。 (こいつ……!明日殴ってやるっ……!) もう、半ば朦朧としている意識では言った。 「ゆ……び……」 無言で、の秘所に指を入れる。 「ひゃ……あ……んっ……あんっ……」 流川が、なにかを言った。しかし、には理解できない。 「なに……カエ……」 「……わりぃ……我慢できん……」 「へ……?やぁっ、い、いたっ……あんっ!」 流川の突然の挿入にの意識が吹っ飛びかける。 「カエ……ッ!」 ぐっと腰を進める。 「やっ、いたっ……やぁっ……!」 あまりの痛みに、の爪が流川の背中に食い込んだ。 「つっ……力抜け……」 「抜けるわけないでしょ、馬鹿ッ……痛いぃ〜……」 「……仕方ねぇな……」 流川の手が、の胸を揉みあげる。硬くなっている頂点を摘み、ぺロリと口に含んで赤子のように吸い上げた。 「んっ……あっ……」 「……濡れてきた」 「言わないでよ……ッ……ぁんっ」 ズルリ、と流川が動く。ようやく溢れてきた愛液で、大分すべりがよくなったらしい。 ピクピクッ、との瞼が震えた。 「はぁっ……あぁ、っ……」 「動く、からな……」 最初はゆっくり。 お互いの体液ですべりがよくなると、さらにその動きは加速した。 抜き差しを繰り返し……大きく腰をグラインドさせて、最奥を攻めたてる。 「あっあっ……あぁぁんっ!」 今度こそ、の意識は吹っ飛んだ。 「……カエの馬鹿ぁ〜……」 「……なんだと?」 「なんだとじゃないよ〜……明日、部活あるのに〜」 「俺もだ」 「こっちの方が辛いのよっ!……いたっ……もう〜!……寝るからね!」 壁側まで移動し、ばふっと掛け布団をひきよせる。……流川の方の掛け布団まで。 「……おい、布団よこせ」 「知らないッ!」 「……そっち行くぞ……」 移動して、布団の中に入り込む。 「来んなっ!」 「……さみぃんだよ、どあほう」 腕の中に閉じ込める。 「抱きしめなくてもいいじゃんっ!」 「子供だから、体温高いな……暖けぇ……」 「子供って言うな〜っ!その子供を抱いてるのは誰よっ!」 「…………」 無言だ。 「……もう寝ろ……俺も寝るから」 そういいつつも、いつも人の寝顔をみてるんだよね、こいつは! 「カエが寝るまで、ねてやんないっ!」 「……もう一回ヤるか……」 「寝ま〜す!おやすみ!」 おとなしく腕の中で丸くなる。すぐにすやすやと寝息が聞こえる。 「……かわいいんだよ、それが……どあほう……」 こんなことを流川が呟くのも、毎晩の事だ。 朝起きれば、流川の家にはもうだれもいない。 両親は仕事だし、流川は朝練だ。 床に散らばった服をかき集め、きちんとたたむと、タンスの中に入っている自分の制服を取り出す。 (……カエの家に制服があるって事が、そもそもおかしいのよ……) かばんの中に服を詰め込んで、ついでに布団も干す。 (私って、つくづく偉いよなぁ……) リビングに下りると、テーブルにはラップのかけたチャーハンと、メモ。 『食ってけ』 たった一言。 「……いただきま〜す……」 もくもくと食べ、流川の分の片づけをして、ふとキッチンテーブルに目をやると、そこには、大きい弁当箱。 思わず、ぐっともっていたスポンジを握り締めて泡を絞り出す。 「カエのばか―――――っ!また忘れてんじゃない、お弁当箱っ!」 こうして、日課は『日課』となる。 あとがきがわりのキャラ対談 流川「……おい……」 銀月「はーいっっっ」 流川「……なんだこれは……こんなのは俺じゃねぇぞ、どあほう」 銀月「わかってま〜す!」 流川「……おい……」 銀月「うぅ……ごめんなさい〜私が書ける流川君なんてそんなもんなのです〜っ!」 流川「……悪かったな、……こいつには俺から言っとく……」 |