太陽の光がさんさんと降り注ぐ
気持ちのいい日の午後のこと―――。
20.「これで満足か?」
「うぅ〜…………気持ちが良すぎて眠い〜……」
ぽかぽかと日の光がさす部屋で、私はベッドにへたり込んだまま呟いた。
例のごとく、部屋に遊びに来ているバノッサは、タバコをふかしたまま、こっちを見る。
「アホかオマエは」
「アホじゃないも〜ん…………あぅ、眠い…………バノッサ、お昼寝大会しよーよぉ」
「んなことして、なにが楽しいんだ、あぁ?…………ったく、暇すぎるって顔だな」
「暇すぎだもん………」
「そーいやぁ…………」
「なになに???」
バノッサが面白い話でもしてくれるのかと期待してみれば。
「………………やっぱりなんでもねェ」
「なにソレ!なに言おうとしてたの!?」
「………………あー………まぁ、な」
「まぁ、ってなにがまぁなのさ!!」
「あー、うるせェ!!!……………おい、カノン!!」
「……………はい?呼びましたか、バノッサさん」
ひょっこりカノンが顔を出した。
「…………移動屋台群の祭りって、今日だったよな?」
「は?…………あぁ、毎年恒例のお祭りですね?確か今日だったと……」
「よし。おい、行くぞ」
「へ?」
突然のことに、私とカノンは同じように口を開けっ放しにした。それを見もせず、テーブルに投げ出してあった剣二本を腰に挿し、マントをつけた。
「さっさと支度しろ。……暇なんだろ?」
その言葉で、バノッサが暇をもてあましている私たちのために、お祭りへ連れて行ってくれようとしてることを、やっと理解。
どうやら、カノンもわかったらしく、ぱぁあと笑顔になった。
「ちょっと待って!!」
急いでベッド脇に置いてあるリュックを手にとって、中身を確認。
「よしっ!行こっ!」
街の外に、移動屋台群―――日本でいう、的屋さんたちが道の両脇にところせましと並んでいた。もちろん、通路は人でいっぱいである。
「うわぁ〜!!!いっぱいお店がある〜!」
「毎年恒例なんですよ。もっとも、街の中じゃできないから、ここでやるんですけどね」
「あっ、ねぇねぇ、あれなに!?」
こちらの文字で、なにかかかれている屋台を発見。
文字は習っているけど、結構崩されてて読みにくい。
「あぁ、ふかした芋にバターがかけてある食い物だ」
それは、つまり…………。
じゃがバタね!?そうなのね!?
あぁ、懐かしき我が祖国!待っててね!今すぐ行くわ!!!(怪)
「居候、混んできたからな、はぐれ…………ってオイ!」
バノッサの声なんて聞こえなかったのです。
私の目はじゃがバタに向いていて。
屋台へ走っていき、じぃっとおじさんが作るのを見ていた。
なるほど、確かにふかした芋にバターをかけてある。
…………じゃがバタvv祭りの定番、じゃがバタvv
「嬢ちゃん、1個どうだい?」
「いただきます!」
あ。でも、お金持ってない。
「ねぇ、バノッサ…………」
くるりと振り返ってお金を貰うために、手を差し出しつつ、媚へつらうための笑顔満開。
が。
「………………………うーわー!!!誰だ、アンタ!!!」
見知らぬ人が!!!(つーか、相手の人も、誰だアンタ的心境だよな……)
「ちょ、ちょちょちょちょ、ちょっと、私の(?)美白はどうしたのよ!!」
「じょ、嬢ちゃん!?」
「おっちゃん、それ1個とっといて!後で絶対とりに来るから!!!」
ダッシュで店を離れて、先ほどまでいた場所に戻る。
だが、人ごみで何も見えなくて。
マジ!?完璧に私はぐれた!?どーしよー!!!(パニック)
「うわーん!バノッサ〜!カノン〜!美白〜!」
どこだよ〜。
てくてくと歩き出す……とは言っても、スムーズに歩けないほどに、人が増えてきた。夕方で日も暮れてきたからだ。
「こーいう時、ケータイがあればなぁ〜…………バノッサぁ〜…………カノン〜…………」
あたりを見回しながら、白いのを探すけれど(失礼)、白いのも見えなければ、カノンの緑頭も見えない。
「……………………完璧、迷子じゃ〜ん…………」
迷子ってこんなにも心細かったっけ…………と子供のころを思い出す。
ますます気分が落ち込んできた。
「うわーん!!バノッサぁ〜〜〜!!!」
「…………ッいた!!」
ぐいっと手首を掴まれた。
ぽかんと見上げれば、そこには捜し求めていた、白い人が。
「うわ〜ん!バノッサぁ〜!!!」
「バカ野郎!テメェ、人の話をちゃんと聞け!!」
「ごめんなさ〜い!……れ?カノンは?」
「別れてはぐれたバカを探してたんだよ。見つかったら、さっきの、店の前で待ち合わせだ。オラ、行くぞ」
手首をつかまれたまま、歩き出す。
いつになっても、バノッサが手を離そうとしないので、見上げると、視線に気づいたのか、バノッサは口を開いた。
「またはぐれたら最悪だからな。手でもつないどけば、安心だろォが?」
ごもっともです、と顔を伏せて歩き出す。
…………あぁ、完璧父親と娘だわ…………。
さっきの店の前に行くと、カノンがすでに待っていた。
「よかった、バノッサさん、見つけてくれたんですね」
「ご迷惑をおかけしました…………」
カノンは、つながれた手を見てクスクスと笑った後、容器を差し出した。
「ハイ、さん、食べたがってたでしょう?」
い、芋が!!!芋が〜〜〜!!!(感涙)←注:どこぞの聖女さまではありません。
手を離して、容器を受け取り、ほくりと湯気の立っている芋を口に運ぶ。
「…………………おいしいvv」
あまりにも幸せそうだったのか、私の顔を見て、カノンとバノッサが笑った(失礼な)
「…………………これで満足か?」
「うん!!!」
なにはともあれ、さいっこーな一日でしたvv