Lovery prince!第8話〜とりあえず、逃げとけ!?〜 「め、めめめめ、冥〜〜!私、捕まったらどうなると思う〜!?」 冥は黙って数秒考えた後…… 「…………とりあえず………ぃ」 とだけ言った。 「えぇ?聞こえない〜〜〜!!……あ〜〜〜!虎鉄先輩がぁぁぁ〜〜〜!」 「とりあえず、黙ってろ」 冥に手首を握られたまま走っているので、いまいち距離感がつかめない。 でも、ものすごいスピードで走っていることと、それに負けないくらいのスピードで虎鉄先輩が追ってきている事だけはわかった。 冥のもう片方の手が動いた。 ひゅっと風を切る音がする。 「……冥?なに今の……」 「気にするな」 後ろを見ると、虎鉄先輩がありえないくらいの体の柔らかさで何かを避けていた。 「……冥?」 「気にするな」 「……ハイ」 有無を言わさない口調に私は黙り込むしかなかった。 ったく…… あのエセヒップホップ先輩もなかなかしつこいな…… せっかく俺が直々に小石を投げてやってるのに…… を見れば、あまりのスピードで走っているので、疲れてるみたいだ。 「おい、もうすぐ校舎に入るぞ」 「えぇ?何ぃ?」 返事もほどほどに、俺はをひっぱって校舎へ引き込む。 一番近くにあった、視聴覚室に連れ込んだ。 はぁはぁと息を切らす。 赤くなった顔と…… …………!!! ばっと瞬間的に俺は学ランを脱いでにかぶせた。 「……何?冥」 「とりあえず着てろ……!!」 以上に赤くなった顔を見られないよう、そして、汗のために肌にはりついて服がかなり透けているから俺は顔をそむけた。 「…………そうだ、冥。あんた、温泉旅行とったら誰と行くの?」 「……はぁ?」 唐突の質問に俺は詰まった。 誰と行くって…… そりゃあ………… 「?」 純真無垢な顔で俺を見る。 ……もしかして、こいつ、本当に気付いてないのだろうか? キャプテンや司馬、兎丸……そして俺がお前の事を好きだって。 他の奴ら……さっきの様子だと、虎鉄先輩も狙ってると思う……そいつらも、きっと狙いだろう。 「……とりあえず、秘密だ」 「えぇぇ〜〜〜?なんで???……あ、冥、もしかして彼女いるの?」 「いるわけないだろ」 「本当に!?」 お前以外にいるか、馬鹿! 喉の先まででかかった声を無理やり押し込めた。 やっとを見られるようになったころ……の後ろの窓から覗いている小さな影に気付いた。 やばいっ。 気付いたとたん、の手をにぎって、また走り出す。 「えぇぇぇぇ〜〜〜!?」 叫ぶの声は、とりあえず無視した。 「何!?何が起こったの!?」 「……兎丸が覗いて……」 「くんみ〜っけ!!」 しゅたっという効果音付きで比乃が私の前に現れた。 「えへへ〜。やっと見つけたvv犬のお兄ちゃんったらひどいよ〜、くん独り占めして」 「……そういうゲームだろ」 クス、と比乃が黒く笑う。 いやぁ〜〜!!いつもの可愛い比乃じゃないんだけど!! 「そうだよね……じゃ、僕くんもらっていくからねvv」 小さくて可愛い比乃のどこにそんな力があるのか。 比乃は私をひょいっと抱えて走り出した。 「!!待て!!」 「へっへっへ〜……追いつけるなら追いついてみてね、犬のお兄ちゃんvv」 比乃は一気にVRで加速した。 ……比乃、あんた私を抱えて走れるほど力があるんなら、もっと遠くまで打てるんじゃないのかぁぁぁ!? えへへ〜……やっとくん見つけたよ〜。 何か武器になるものあるかと思って視聴覚室探したら、一番欲しかったくんを見つけちゃったよ。 「……比乃、そろそろ降ろしてくれ……」 あっと……くんを抱えたままだった。 ……にしても、くん軽いなぁ……見た目も華奢だけど……もしかしたら僕と体重替わんないんじゃないのかなぁ〜? 「比乃……お前実は力あるんじゃ……」 「え〜?それほどでもないよ〜」 「でも、今オレのこと……」 「それほどでもないってばvv」 にっこり笑っただけなのに、くんは顔をひきつらせた。 「それよりも、くん、ちゃんとご飯食べてるの?なんか、すっごく軽いんだけど」 「1人暮らしは辛いんだよ……って、とにかく降ろせ―――!!!」 しょうがないなぁ……もうちょっと抱いてたかったのに。 渋々僕はくんを地面に降ろす。それで、またにっこり笑った。 「1人暮らしは辛いってどういうこと?ご飯食べてないの?」 「いや、そんなことはないとは思うんだけど……うん」 「ホントに?」 「ホントホント!!!今日も弁当作ってきてるし!!!」 「……お弁当!?くんが作ったの?」 「……他に誰が作るんだよ……」 僕は、顔がにやけてにやけて仕方がなかった。 「くんお手製のお弁当!?食べたい〜〜〜!!!」 食べたい食べたい食べたい!!! くんの手作りのお弁当! ……と。ブツッと嫌な音が耳に入った。 『あー、あー。羊谷だ。今入った情報によると、は手作りの弁当を持っているらしい。昼時に捕まえたものは、一緒に弁当を食うことが出来る……そしての手作りの弁当を食う事ができるかもしれんぞ』 僕はそのときほど羊のおじちゃんを恨んだ事はない。 そして…… 一斉に僕の背中に殺気が向いた気がした。 「んなっ……なんで監督、わかるんっすか―――!?」 『企業秘密に決まっているだろう、馬鹿者。、ほらさっさと逃げないとお前の弁当が食われるぞ』 「いや、それはいつも葵と交換してるからかまわないんッスけど……」 『……たった今入った情報によると、は司馬と弁当交換をしてるらしいぞ』 ギラッと僕は司馬くんに殺気を向けた。いくら仲のいい司馬くんでも、譲れないものは譲れない。 僕は、放送越しに監督と会話しているくんに抱きついた。 「ぴ、比乃!?」 「僕、くんが好きだよ!だから、僕と一緒に温泉旅行行こう!」 「でぇぇぇぇぇ!?」 『おっと……兎丸がに告白したみたいだな』 おじちゃん、実況中継しなくてもいいよ。……ほら、殺気がまた来た。 けど、そんなのもう気にしない。 「ぴ、ぴぴぴぴ、比乃!オレ、男……」 「くんが好きなの!!!だから……」 「ちょぉぉぉっと待て、スバガキ!!!」 ぱっと僕は振り返った。 僕の事を、スバガキだなんて呼ぶのはもうわかりきってる。 「お猿のおにいちゃん……待てってどういうこと!?」 メガホンをもって仁王立ちしてるお猿のお兄ちゃん。 「待ての意味もわかんねぇのか、スバガキ!待てっていうのはなぁ……飼い主がもどってくるのをひたすらおすわりして待つって意味だよ!!」 「長いよ、その意味!!……じゃなくて!お猿のお兄ちゃんには凪さんがいるじゃん!」 んぐっ、とおにいちゃんがつまった。 「……そ、そそ、それとこれとは、話が違……」 「わないよ!全然!僕は、くん以外に好きな人なんていないもん!くんが好きなのっ!くんだけが好きなのっ!!」 「ちょっ……比乃っ!」 くんが顔を真っ赤にさせてる。僕は、息を切らせてお猿のおにいちゃんを睨みつけた。 そしたら。 「…………好き好き連呼すりゃ、いいと思ってんのか、このスバガキ!!!」 お猿のお兄ちゃんがメガホンを投げつけてきた。 ひょいっとよける。 「……オレなんかな……オレなんかな……愛しちゃってんだぞ、馬鹿ヤロ―――!!!」 「はぁぁぁぁぁ!?」 僕は、どさくさにまぎれて、叫んでるくんを抱きしめた。 「ふんっだ。くんは僕のものだもんね〜!」 「その手を離せ、スバガキ〜〜〜!!!」 お猿のお兄ちゃんが僕の手を離そうとする。 よぅし、受けて立った! しゅたたたた、と得意のすばしっこさで、攻撃をかわす。 「へっへっへ〜……触れるもんなら触ってみてよ〜!」 「んだと、このクソガキャ〜〜〜!!」 僕は投げつけられたメガホンを投げ返した。 しばらく僕達が争っていたら…… くんは、いなくなってたんだ。 ……どこにいったの、くん〜〜〜!!! 銀月の言い訳 ……えへ? えへへへへ? ……次は誰と一緒になるのかなぁ!?←もうだめ。 修正 9.14 |