Lovery prince!第7話〜追いかけられりゃ、逃げるしかない!〜





「助けてぇぇぇぇぇ!!!」

猛ダッシュで部室を出て行った私。

私のすさまじい走りについてこれた人はさすがにいなかったみたいで、後ろからくる人影は1つもなかった。

こそこそと体育倉庫の裏までやってきて一息つく。

「こ……校内鬼ごっこじゃないんだから……」

「じゃあ、僕達が鬼だね♪」

「じゃあ、私が逃げる役ですね♪」

……え?

「やぁ、君。見つけたよ、やっと」

「いやぁぁぁぁぁぁ!!」

逃げ出そうとした私のセーラー服をつかんだのは……

紛れもない牛尾キャプテン。

「きゃ、キャプテン、いつの間に……後ろには誰もいなかったのに!」

「後ろにはね♪君の前にいたよ♪」

……イヤ――――!!!





君を追って必死に走ってるうちにどうやら追い抜いてしまったらしい。

僕は一瞬冷や汗をかいたよ。

でも、君が僕の後ろを必死に走ってきてくれて嬉しい。

……そんなことを考える僕は変かな?

君はれっきとした男性なのに。

……あれ?そういえば……

君、君、一人称は『私』だったのかな?確か『俺』だっただろう?」

ギクッと君の顔がひきつり、青くなっていった。

「なんだい?主将の僕にいってごらん?」

ぷるぷると君は頭をふる。

「そ、そそそそそ、そんな!たいした事じゃないです!セーラー服きてるから、ちょっと遊んでみただけですよ!ハイ!それじゃ!」

逃げ出そうとする君のセーラー服を引き寄せる。

「ダメだよ。君は僕から誰かに奪われるまでは僕と一緒に行動してもらうよ。……誰かに奪われるなんてことは、『絶対』ないだろうけどね……」

ひくっと君の顔がまたひきつった。

……なにがそんなに嫌なんだろうか?

「僕が、そんなに嫌いかい……?」

「いや!そんなことは全然ないッス!むしろ尊敬してるし!でも、それとこれとは……」

「関係あるんだよ。……なにせ、賞品が『君と温泉ツアー』だからね」

「……俺と温泉ツアーって、どういうことですか!?」

……やっぱり、なにもわかっていないんだね……。

「羊谷監督は『温泉旅行をペアで招待』と言っていただろう?優勝者ともう1人……みんな、君を誘うに決まっているだろう。これでみんな公認の君と2人だけの旅行が完成だ」

「な、なんですか、それは―――!!!俺、男ですよ!?健全な男子高校生がそんなんでいいんですか!?もっと、他に誘う子がいるでしょうぅぅぅ!?」

「少なくとも、僕と司馬君と兎丸君……そして犬飼君は君を誘うだろうね」

君が絶句した。

そんなところもまた可愛い。

君は気付いていないんだろうね。その魅力に。

君の全てがみんなを魅了する。

僕が今言った人間は……君の虜になってる代表だよ。

……このゲームで、なおさら君の競争率が高くならなければいいけれど。





お、おおお、温泉旅行〜〜〜!?

い、行きたいけど!

とぉぉっても行きたいけど!

行ったら絶対バレる!

完璧バレる!

……つ、捕まったら正体ばれる!!

……もう捕まってんじゃん!!

………

誰か助けて!!(泣)

………!

その『誰か』もダメじゃん!!!

君?顔色悪いけど、本当に大丈夫かい?」

「は、はい……大丈夫です……」

うつむいて答えると、キャプテンが本当に心配そうな顔で確かめてくれた。

端正な顔がドアップに映る。

ボッと顔が赤く染まった。

……なんてったって、健全な女子高生だったはずだったんですから。

「う……うわぁぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜!!!!」

私は、全速力でその場を逃げ出した。

「あっ、君……!!!」

今度ばかりは、キャプテンもついてこれなかったみたいだ。

すみません、キャプテン!





ぜぇぜぇと肩で息をする。

冷たい校舎の壁に寄りかかって体を休めた。

立ち止まると途端に汗が全身から噴出してきた。

セーラー服をつまんで、パタパタと空気を入れる。

「……セーラー服って、意外と暑い……」

「……おい」

耳元でささやかれた声の低さに、思わず悲鳴をあげそうになる。そのすんでのところで、その声の主に口をふさがれた。

「ん、むぐぐぅぅぐ〜……んぐ?」

首を最大限の力でひねって手の主を見ると、

「んん(冥)!」

「とりあえず……黙っとけ」

「ん……んんんんん〜〜〜」

私はばたばたと手足を動かした。息ができないっつーの!あんた手がでかい!

「あ……悪い」

冥はぱっと手を離してくれた。

はぁ〜……と大きく息をする。

「冥かぁ……誰かと思ったよ」

「とりあえず……捕まえたってことで」

「は?」

冥はそういって私の手首を掴む。

「……冥……騙した?」

「とりあえず……その気はない」

「あそ……」

こちらとしても、冥は唯一の知り合いだから、気兼ねなく喋れるからまぁいいけどね。

「冥……でもあんまくっつかないほうがいいよ。私、今すっごい汗臭いと思う」

「とりあえず……それだから近くにいるんだ」

「はい?」

「……とりあえず、逃げるぞ」

「え?」

冥が私の手首を握ったまま走る。

半ば引きずられていたので、ほんのちょっとだけ後ろが見えた。

空気を切り裂くように見えるのは黄色と黒のコントラスト。

…………

虎鉄先輩Da〜〜〜!!!

「う、うわぁぁぁぁぁ〜〜〜!!!」

私は、本日2度目の大きな悲鳴を上げた。



銀月の言い訳



短っ!!

……最近忙しいんです。いろいろと。

……今回はキャプと犬。

次回も少し犬が入ってから……あの人です。

が、頑張れるといいなぁ〜(死)