らいおんハート






あれから数ヶ月―――。

仙道とは夕食を終え、いつもの通りリビングで2人、本を読んでいた。

のページをめくる手が、不意に止まる。

「……いたた……そんなに蹴っ飛ばさないでよ、もぅ……」

呟いた言葉に、仙道も本から目をあげた。

、また蹴っ飛ばされてるの?」

「たはは……これは、きっと男の子だね……」

「そうかな。みたいにすんごい元気な女の子かも知れないよ」

「……悪かったですね、元気すぎて……」

つーん、と横を向いたの顔を呼び戻して、唇を合わせる。

「……そーいうトコロが好きなんデス」

「……ありがとうございます……」

相変わらず、真っ赤になるようなセリフ。

それをさらっと言われるから、なおさら真っ赤になってしまう。

「あ、明日買い物いこーか」

は、くすっと笑って、ぽこん、と高い位置にある仙道の頭を叩いた。

「散々ベビー用品買っておいて、何いってるの。昨日だって、『男だったら青だし、女の子だったらピンクだよな』なんていって、ベビー服、2着も買ったくせに。そんなに心配だったら、病院で性別聞けばよかったじゃない」

「聞いちゃったら、楽しみがないよ。生まれてからのお楽しみってことでvv」

「ま、男の子だろうけどね……」

「女の子かもしれないよ」

堂堂巡りである。

「……ハイハイ。ほら、先お風呂入ってきて」

「あ、もう沸いたの?……それじゃ、お先に」

「うん。熱かったらお水入れといて」

「了解」

ドアを開けて、仙道がリビングから出て行く。

出て行ってから、は気付いた。

「あ、シャンプー切れてたんだっけ……え〜と……どこにいれてたっけなぁ……この戸棚?……あれ、ない……上だっけ?」

独り言をいいながら、頭の上の戸棚を開けた。……だが、目の高さが足りず、何が入っているのかよくわからない。

背伸びをしてみるが、効果なし。

しょうがない、と、あたりを見回す。

「……踏み台踏み台……」

プラスチック製の椅子を見つけると、はそれを戸棚の下まで運び、足をのっけた。

「えっと……あ、あったあった」

見つけて、シャンプーを取ったところで、ガチャ、とドアが開く。

、シャンプーが切れて……って、馬鹿っ」

「はれ?あき……らぁぁぁぁ?ぅわぁっ」

後ろを振り向いた瞬間、片手で体を支えていたのと、おなかの重さでバランスを崩した。

思わず目をギュッと瞑る。シャンプーが落ちる音がした。

…………。

なにも衝撃がこないので、恐る恐る目を開けてみた。

「……馬鹿。体、大事にしなよ」

自分の体を支えている仙道の姿。ホッ、と安堵の息を吐いていた。

「……ごめんなさい……」

トン、とまっすぐ立たせて、落ちたシャンプーを拾う。

「こーゆーのは、俺に言えばいつでもとってあげるから。ね?」

「は〜い……彰だったら踏み台もいらないしね。……お父さんをたまには活躍させてあげないと」

「そうそう。お母さんばっかりじゃ疲れちゃうデショ。だから、お母さんは体を大事にして下サイ」

「了解デス。……じゃ、お父さんは、お風呂入ってきてください」

「ハイハイ。お母さんは静かにテレビでも見ててください」

言うなりリビングを出て行く仙道に、は『静かにみてま〜す』なんて、言いながら、リビングへ移動した。

ソファに腰をおろしたとたん、また、ドカドカと蹴られる。

「……元気だなぁ……静かな時もあるのに」

まるで言葉が聞こえたかのように、蹴られる。

「いたた……あ、ごめんごめん。元気元気。元気が一番」

蹴りが収まってくる。

「……現金な奴……」

ボソリと呟いたら、また蹴られた。





「……彰?なにやってるの?」

「ん〜……ちょっと」

「ちょっと……って、何?」

机に向かって悩んでいる夫ほど、珍しいものはない。

近づいていったら、仙道はカーディガンをかけた。

「体、冷やすなよ」

「ありがと……で、なにやってるの」

「ん〜……」

そういって、再度机に向かって唸り始める。

肩越しにひょいっと覗き込むと、そこにはいくつかの文字の羅列。

「…………?何、これ」

「……名前候補。……どれがいい?」

「どれがいいって……」

「一応、画数とかも考えなきゃならないんだよなぁ……」

ぶつぶつといいながら、ペンを揺らす仙道を、は、驚きの目で見た。

「……彰が真面目になった……!」

その言葉に、ガクッと仙道がずり落ちる。

「……酷いな、……俺だって、お父さんですから。おなか痛くして生むお母さんに、全てを任せておけません」

「……優しいお父さんだね、彰vv」

「それはどーも、アリガトウvv」

言って、ふと真顔になる。

「……何?どーしたの、彰」

「……俺、子供が生まれてもが世界で一番好き」

「……イキナリ、どーしたの?」

仙道は、ぎゅっと妻の体を抱きしめた。

「ほら、SMAPの『らいおんハート』だよ」

「……『世界で二番目に好きだと話そう』?」

「YES」

抱きしめられたまま、は呟いた。

「それじゃ、私は宇多田光の『Can you keep a secret?』かな」

「……『近づきたいよ、君の理想に』?」

意地悪い、笑顔。

「……どーせ、その後の言葉もわかってるんでしょ?」

「……『大人しくなれない』」

「そのとーりっ!」

仙道が、ニッコリ笑う。も膨れながら、笑った。

「……さて、このぐらいにして、寝よーか」

「そーだね。寝よーか」

仙道家の灯りが、静かに消えた。





数週間後―――。

新しい命がこの家にやってくる。





あとがきもどきのキャラ対談



仙道「やっと書いてくれたね、俺たちの続編」

銀月「うん。これも一重にみなさんのリクエストのおかげです。ありがとうございますm(_ _)m」

仙道「ありがとなvvま、俺との話だから、な」

銀月「この、万年ラブラブ……」

仙道「そう、俺たちラブラブvv……だけど、まだ子供生まれてないんだよな」

銀月「……ぎくっ……だって、とりあえずラブラブが……」

仙道「……ってことは、また続編かいてくれるのかな?」

銀月「……うっ……ひ、暇とリクがあったらねっ!んじゃっ!(逃)」

仙道「あっ、逃げるなよ!」