「……ん?」

は、突然広がった景色に、目を大きく開いた。

「んんんんん!?」

迫ってくる、床、床、床。

「きゃあぁぁぁぁ!」

ズダダダダダダダダッッッ!

、一生の不覚。

朝一番に学校の階段から落ちました―――。




怪我



ダダダダダダッ!バンッ!

ッ!?」

壁に少なからず衝撃を与えたであろうドアは、自らのその勢いで勝手にしまった。

その光景をこれまた目を真ん丸に開いて見る。

「あ……彰ぁ〜……っだ!せ、先生〜!もっと優しく〜……」

擦り傷に消毒薬を塗る保健医に抗議。

「文句言わないッ。ったく、朝っぱらからケガなんぞしよって……出勤早々ケガなんぞ見せられて、機嫌が悪いんだよ!」

「ひどっ!それが保健医の言う事〜?それが可愛い生徒に言う事〜?」

「あぁ〜ハイハイ。まぁ、スミマセンねぇ〜。さぞ、痛かったことでしょう。なにもないのに、階段から落っこちるなんてねぇ〜……」

「嫌味だぁ〜……」

「……あの、サン?質問よろしいですか?」

事態がまるで飲み込めない仙道は、挙手をした。

「はい、仙道クン」

「……何が起こったんですか?」

「階段から落ちた」

至極あっさりと言われたため、聞き流してしまいそうだったが、仙道は踏みとどまって質問を重ねた。

「……階段から落ちたって、大丈夫なの?」

「……うん。平気だけど?」

「……本当に?」

「うん。何?なんか聞いたの?」

いつもは割とあっさりとしているはずの仙道が食らいついてくるため、はクイっと顔を上げた。

「いや、越野からがケガして保健室に担ぎ込まれたって……」

「担ぎこまれたぁ〜?……たまたま通りかかった植草さんにおんぶしてもらっただけだけど?そんな大げさなことじゃないよ〜」

「……まぁ、とにかく。重症じゃない事に越した事はないよ。よかったよかった」

「よかったよかったvv」

は、軽く笑った。





「いったー……うっ……いてて……」

涙目になりながら、はヒョコヒョコと廊下を歩いた。

「……ふぇ〜ん……」

窓枠に体重を預けてずるずると這うように移動する。
重症じゃないとはとんでもない。
全身擦り傷、打撲だらけ。それだけでも十分痛いというのに、この足首の痛さ。

尋常じゃないほど痛い。

まあ、丁寧に一番上から落っこちたのだからそのくらいは当然であろうが。

やたらと心配性な彼氏に言うにも言えなくて。
痛さを抱え込んで歩いているのだ。

頼みの綱の友達は、移動教室の準備のため、先にいっている。

結局その彼が体育の授業だったのをいいことに、見つからないからといってズルズルと這うように移動する、現在にいたったのである。

「グキッて言ったもんなぁ〜……グキッて……」

あまりの痛さに失神しかけていたため、おぶさるとなどというよりは、担ぎこまれた、という方が確かに無難であるかもしれない。

「くそぅ〜、あの保健医のいう事聞いて、ベッドで寝てればよかったぁ〜……」

仙道の手前、ベッドに寝るわけにはいかず、顔中の筋肉を総動員させて笑みを作り、足の痛みを意地で我慢し、教室へ向かったのだ。

そのため、彼女の足首は小さめの卵を1つ入れたくらいに膨らんでいる。

「痛いよぉ〜……」

ちゃん?」

ほとんど泣き笑いの表情で振り返ってみれば、バスケ部副キャプテンの越野宏明。

「越野ぉ〜……あんた、彰に心配かけさすこと言わないでよ〜……」

「開口一番がそれかよ……何やってんだ?ところで」

「……移動」

窓枠にしがみついているを見て、越野は顔をしかめた。

「……その怪しげな行動を移動と言いたいのか?」

「ウルサイ」

「……じゃなくて。植草から聞いたんだけど、階段の1番てっぺんから落ちたんだって?」

「えぇ、落ちましたとも。ご丁寧に1番上からね」

「……で?足を捻ったと」

ギク、との額を冷や汗がつたう。

「なんで、わかったの?」

「バスケやってりゃ、捻挫なんて日常茶飯事だからな。見てればなんとなくわかる」

「……彰は気づかなかったんですけど」

「……ちゃんのことがよっぽど心配だったんじゃねぇの?」

2人してその場面の仙道の姿を思い浮かべ―――

「なるほど」

納得した。

「あ!越野が来たってことは、彰ももうすぐ来る?」

「あぁ。……ほら、来た」

「ゲッ……」

逃げる間もなく、仙道が近づいてくる。

「越野??こんな所でなにやってるんだ?」

頭のツンツンもにこやかに話し掛ける。

またもは顔中の筋肉を総動員して笑った。
もちろん、壁についていた手を離すことも忘れない。
いきなりかかった体重に、足は限界まで悲鳴を上げていたけれど、彼女の意志が痛みに勝った。

「ん?これから移動教室でさ〜……音楽室行く途中で越野と会ったんだ」

「ふ〜ん……次の授業まで後一分くらいだけど?」

「え゛」

差し出された腕時計を身を乗り出すようにして覗き込めば、すでに針は授業開始の一分を切っている。

「うぎゃぁ〜〜〜!無遅刻無欠席無早退の輝かしい経歴がぁ〜!!」

痛む足を半ば引きずるように、は走った。

「……あれ」

それを見送りながら仙道は呟く。

「なんだよ、仙道。俺らも遅刻するぞ」

「……なぁ、越野。って……足どうかしたのか?」

越野はニヤリと笑う。

「……なんだ、今頃気付いたのか」

「ってことは……」

キーンコーンカーンコーン……

仙道の言葉は、始業を知らせる鐘の音で遮られた。





「……も、もう駄目だ……痛すぎる……」

お昼を過ぎ、授業を全て受け終わった後、はうめくように呟いた。

あまりにも痛すぎる足首。

もう歩く自信すらない。

仙道の前であれだけ平静を保っていられたのを奇跡だと思う。

「む、迎えに来てもらおうかな……」

そう呟いて机に突っ伏した瞬間。

?帰ろう」

と声をかけられた。

更に顔を覗き込まれたため、驚きを隠せない。

「あ、彰!?」

「……立てる?痛いんでしょ、足」

腕を取って立つのを手伝ってもらいながら、は目をパチパチとさせる。

「な、なんでわかったの?いつ……」

「ほら、移動教室のとき、痛そうに足引きずってたでしょ?」

「うそ〜……上手く隠せたと思ったのに〜……」

「ほら、歩ける?」

「う……歩けない〜……」

「俺の腕につかまって。ぶら下がるみたいに。……そうそう」

が、仙道の腕にほとんどぶら下がる状態で歩き始めた。

一歩歩くごとに、ナイフで突き刺されるような痛みが襲う。

人魚姫もビックリだ。

「……痛い〜……」

「もう……こんなになるまで黙ってちゃ、ダメだって」

「だって、彰心配するじゃん〜。……あ!彰、部活は、部活!部活もあるから黙ってたんだよ〜!」

「部活は諸事情により、キャプテン不在のまま進行中。副キャプテンが指導してくれてるって」

「……マジ?」

「マジ。だから、なんにも心配しなくていいよ」

ニッコリと仙道は微笑んだ。





「……で?なんで彰の家?」

「だって、の家ってば、家族のみなさん健康すぎて、救急箱なんてどこにしまってあるかわかんないんだろ?あったとしても、湿布の消費期限とか切れてそうだし。それだったら、まだ俺の家にあるモノの方がいいだろ?」

「……ごもっともです」

「あ、段差あるから気をつけて」

「は〜い……知ってま〜す……」

玄関を通って、リビングの椅子に座ろうと、が椅子をひきかけた時。

「あ、。椅子じゃなくて、ソファに寝転がった方がいいよ。足高く上げて。今、氷持ってくるから、とりあえず、そのアイスパッドで冷やしてて」

渡されたアイスパッドを、赤くはれ上がっている足に当てる。

ちょっと触れただけでも痛い。

触れなくても、ジクジクとした痛みが襲う。

「……かなり腫れてるな」

いつの間に来たのか、氷を持って仙道がの前に膝をついた。

「でも、歩けたのなら骨に異常はないと思うよ。とにかく、冷やして冷やして冷やしまくって、明日にでも病院にいきなよ?」

そう言って、氷と水を入れたビニール袋を足に当てる。

「……つっ……」

顔をしかめたを仙道はじっと見る。

「……何?」

「俺、結構怒ってるんですけど」

「なんで?」

「俺に黙ってたから」

「当たり前じゃん!心配かけちゃいけないと思って……」

力んだ拍子に氷がずれたのか、またもは顔をしかめた。

コツン、と仙道の拳がの額を小突く。

「馬鹿。心配するの当たり前でしょ」

「……ゴメンナサイ」

「まったくもう……そんなところが可愛いんだけどvv」

「……アリガトウ」

カラ、と氷が溶ける音がする。

「……彰ぁ〜……冷たくてもう感覚がないんだけど〜」

「ダメ。まだダメ」

「暇だよ〜……」

「……じゃ、イイコトしてあげようか?」

「……え?んぐっ」

自分の唇に当たった感触に、妙な声を上げる。

「……はっ……あの、彰サン……イイコトって、もしかして……」

「うん。H」

「うそ〜!?怪我人なんですけど?」

「ダイジョーブ、ダイジョーブ」

「えぇぇ!?んっ」

痛む足のためか、抵抗すらままならない。

「んんっ、ふぁ……」

仙道の舌使いには、足の痛みさえ忘れてくる。

いつの間にか仙道の手は、制服のスカートの中へともぐりこんでいる。

「……はぁ……あ、ぁん!あぁっ」

の体を覆う全てのものを外して、仙道はその舌を白い体に這わせた。

「あんっ、はぁ、はぁ……」

「相変わらず、白いし細い……折れちゃいそうだな」

ちょっと苦笑しながら仙道は更に舌を進める。

白い太腿を伝って溢れてくるものを舌ですくい、なめとった。

「……彰ってば、あっ……相変わらず、策士……なんだから、ぁ!」

「策士?……そーいうこというは……ほら」

ペロ、との一番敏感な部分をなめると、面白いように白い体が弓なりになった。

「あぁんっ……はっ、はぁ……い、いたっ」

無意識のうちにふんばった足に、激痛が走った。

「ごめん……大丈夫?」

「大丈夫、じゃないっ。もうっ……ぁん!」

「じゃ……早めに早めに……もう、十分なくらい濡れてるし?」

ぐいっ、と仙道は指を1本入れた。

「い、いたっ……足も痛いし……とにかく、色々いたっ」

「忙しいなぁ〜……じゃ、もう1本、と」

「ふぁっ……ちょっ、ダメ、そこは!」

「ふ〜ん……ここだね」

カリカリとその部分を引っかくと、内壁がヒクヒクと痙攣した。

嬌声も高くなっていく。

「いたっ……ぁんっ!もう、どっちに、集中すればいいのよ〜……んっ」

「こっちに集中すればいいよ……」

指を抜いて、自分自身を埋め込む。

下腹部への圧迫感。

どうしようもない快感に、の体は跳ね上がった。

「あぁんっ……はぁっ、ぁんっ…彰ぁ〜……いたっ……あぁぁっ!」

「もう、終わらせるから……くっ」

の締め付けに、仙道自身も快感をあおられ、その質量を増した。

「あ……あぁぁぁっ」

は、足首の痛みも忘れて嬌声を上げた。





「い〜た〜い〜……い〜た〜い〜……」

は、ソファに寝転がってぶつぶつと同じ言葉を同じリズムで呟きつづけた。

「お岩さんみたいに言わないで……はい、氷」

「だって、痛いんだもん〜……痛いよぉ〜……彰があんなことするからぁ〜……」

「最後は、だってノリノリだった……」

「なにかいった?」

「……なんでもないよ」

仙道は大きく息をついた。追い討ちをかけるようにはキッパリという。

「怪我が完治するまでは、H禁止」

「……それは、困る。完治1週間前」

「ダメ、2日前」

「5日前」

「……3日」

「了解vv」

それ以来、完治するまでに付き添う仙道の姿があり―――完治3日前に腰をさするの姿も目撃された。





あとがきもどきのキャラ対談



銀月「……久しぶりの裏です〜」

仙道「それが、これ?」

銀月「怒っちゃやだ〜vv」

仙道「……怒るよ?普通に。なに、これ?怪我人襲ってるし、俺」

銀月「それは、君が野獣だからでしょ?」

仙道「……え?(ニッコリ)」

銀月「……え、えぇ〜と……」

仙道「じゃ、。ほら、腕、貸してみなよ」

銀月「い〜いなぁ〜……LOVELOVEだぁ〜……」

仙道「もっとLOVELOVEにしてね?」

銀月「……はぁ〜い……」