頭を撫でられる、優しい感覚で目が覚めた。 「ん・・・あ、とべ?」 「あぁ、目ぇ覚めたのか」 気付いたら、私は跡部の膝に頭を置いた状態でベンチに横たわっていた。 跡部は片手で器用に本を読みながら、私の頭を撫でていたみたいだ。 「あれ・・・?私・・・」 こうなった経緯を思い出そうとしても、頭がボーっとして上手く思い出せない。 マネージャーの仕事をして、ドリンクを持って行って、それで・・・。 それで、どうしたんだっけ? 「跡部・・・私・・・!」 「ばっ、急に起き上がるな!!」 どうしたのかを聞こうと勢い良く起きあがると、頭に鈍痛が走った。 「痛っ・・・」 「ったく・・・貧血のくせにいきなり動くからだ」 「え、貧血?」 痛みの走る頭を抑えながら自分が貧血であった事を理解する。 道理でさっきから頭がボーっとしてクラクラすると思った。 「ほら、横になってろ」 「う、うん・・・」 支えられながら、跡部の膝を枕にして横になる。 「疲れてるくせに無理してんじゃねぇよ、バーカ」 「無理なんて、してないよ?」 「自分が貧血だっていうのにも気付かずに真昼間の日の下で働いてたヤツが何言ってんだ」 「・・・ごめんなさい」 「ハァ・・・もういいから寝てろ」 跡部に言われて目を瞑る。 すると、自分でも気付かなかったほどに疲れていたのかすぐさま眠気が襲ってきた。 跡部の手の温もりを感じながら、私はまた眠りについた。 「あら、ちゃんまた寝ちゃったん?」 「なんだ、忍足か」 「なんだは酷いやろー?恩人に向かって」 「あん?」 「貧血でぶっ倒れたちゃんに適切な処置を施してやった王子様やでー俺は」 「・・・馬っ鹿じゃねぇの?」 「酷ッ!」 「用が無いんだったら部活に戻れ、邪魔だ」 「しゃーないなー」 「ほら、行った行った」 「しっかし・・・あん時の跡部、おもろかったなー」 「あ?」 「『が倒れたー』ってちゃんお姫様抱っこして血相変えて走ってきて・・・」 「・・・」 「あん時の慌てっぷり、カメラに収めたいぐらいやったわー」 「うるせぇよ、さっさと失せろ!」 「あーそうするわ、お姫さんも起きてるようやしな」 「・・・あ?」 「やばっ・・・」 真正面にいた忍足に、狸寝入りしていたのを見破られてしまった。 ゆっくり跡部のほうを見ると、バツの悪そうな顔をしている跡部と目が合った。 「あ・・・あの、跡部・・・」 「・・・どこまで聞いてた?」 「・・・跡部、おもろかったなー、くらいから・・・」 「そうか・・・」 そういうと、跡部は黙ってしまった。 聞いちゃ悪かったのかと思い、謝ろうと思って起き上がる。 「あの・・・跡部、ごめんね」 「あん?」 「話、勝手に聞いちゃって・・・嫌だったんでしょ?」 「・・・何言ってんだ?お前」 謝ったら凄い呆れた顔で返されたので、拍子抜けしてしまった。 「わ、私が話聞いちゃったから怒ってたんじゃ無かったの?」 「なんでそんなことでお前を怒らなきゃいけないんだ」 「そんなことって・・・じゃあ何でそんなに黙ってるの?」 私が聞くと、跡部はそっぽを向いて小さく答えてくれた。 「・・・格好悪いだろうが、慌ててたなんて・・・」 「え?」 「・・・いい、忘れろ」 ・・・これは、もしかしなくても恥ずかしがってる・・・? 跡部の反応を見た私は嬉しくなり、そっと跡部に寄りかかり肩に頭を乗っけた。 「・・・なんだよ」 「跡部が私の為に慌ててくれたんだーって思ったら、嬉しくなった」 「・・・お前の為じゃねぇよ」 「嘘ばっかり」 「・・・」 「なに?」 「・・・もう、無理すんじゃねぇぞ」 「うん」 「なら、良い」 跡部の優しい言葉が、耳元すぐ近くで囁かれる。 それが心地よくて、私は今日何度目かの眠りについた。 小学校時代からのお付き合いの、鴨っちより頂いた跡部夢……! もう、本当にありがとうございます……! 読んだと同時に、顔がニヤけて、どうしようもなく幸せな気分になりました……! このままテンション高く突っ走っていくかと思いますが、見捨てないで、どうぞこれからもよろしくお願いいたします……!(願) |