想い

〜SUMMON NIGHT Banossa〜







月の光に手を透かしてみる。
太陽の光だったら、オレンジ色に透けて見えるのに。

月の光はアタシの顔に影を落とすだけ。





「………どうかしたのかよ?」
「ううん、なんでもない」

隣にいたバノッサが、アタシに問いかけてくる。
首を振って否定しながら彼に視線を戻すと、丁度彼の顔にかかるように

アタシの影が落ちていた。



それがつまらなくて。
体をずらして彼を月光にあててみる。

「何がしたいんだよ」

「バノッサってさ、月の光が似合うよね」
「そうかよ」

大して興味がなさそうに、彼がアタシを引き寄せる。
引かれるままに、大人しく腕に収まって彼を見上げた。










「会った時から思ってた。太陽よりは、月の人だって」



だから時々、太陽の強い光の下では
バノッサの姿が消えてしまうんじゃないかって思ってる。











何も言わずに黙っているバノッサに、アタシは一回口を閉じた。
でも本当に嫌だったり、興味がなかったら、とっくに止めさせられてるから。

続けてもいいんだって、勝手に受け取ってみる。



「太陽みたいに喧しくなくて。静かに照らしてくれて。
 見たくない部分は、見せないでいてくれる。そんな感じ」

「…………だったら、テメェは太陽だな」
「おせっかいで喧しいのは、性分なのよ」



「だから、太陽だっつってんだよ」



「"喧しい"ってトコは否定しないわけ」
「テメェが喧しいのは本当だからな」

くっくっく、とバノッサが喉の奥で笑ってる音がする。
自分でも否定は出来ないと思うから、アタシも一緒に笑ってみた。



それから、

まるで吸い寄せられてるみたいに顔が近づいてきて。




「…………それは駄目」




ぺしっとアタシの手が、バノッサの顎のあたりに張り付いた。
途端に、バノッサの顔が不機嫌一色になる。

。いい加減に慣れろよ、テメェは」
「そう簡単に慣れてたまるか、ってね」

「ちっ…………」

舌打ちして顔を逸らしたので、アタシが手を退けると。
退けたばかりの手をつかまれて。

一瞬でバノッサの顔が迫って来る。

「っ!」

とっさに顔を背けようとしたら、バノッサのもう片方の手がいつの間にか
後頭部に添えられていて、動けない。

ぎゅっと目を瞑るしか、なかった。














、目ェあけやがれ」
「………………」





激しくなった動悸と、震えそうになる体を叱咤して
ゆっくりと閉じていた瞳をあけると。
ひどく近くにバノッサが居て、赤い瞳がアタシを見ていて。

目が、逸らせない。



それを確認したかの様に薄く笑って。
バノッサが最後の距離を縮める。







離してと暴れようとするアタシを、軽々と押さえつけて。
アタシに聴こえるように、唇を合わせたままバノッサが何度も囁く。































名前を一つ呼ばれる度に、ざわついていた心が少しずつ静まっていく。
それは、貴方の想いがアタシに伝わってくるからね。





俺様を見ろ。
俺様だけ見てろ。

………俺を、見てくれ。






最後のは、幻聴かしら?
それとも、貴方の月への嫉妬?

くすり、と笑いが漏れた時には、すっかり心は静まっていて。
そこに現れたものは、貴方への静かな愛情。





「バノッサ……」

名前を呼んで、アタシからキスを返せば。
少しだけ目を見開いてから、細めた瞳でアタシを見つめる。





それから、またキスが返ってきて。
その時に囁かれたのは。










愛してる。










ねぇ、バノッサ。
貴方は知っているのかしら?

月は、太陽からの光を反射して輝いているって。

きっと、貴方はこれを知らないから。
喧しいって意味で、アタシを太陽に例えたんでしょうけど。



太陽がいないと月も輝けない。



アタシの心の中でだけ、そういう言葉に受けとっておくわ。
最高の殺し文句をありがとう?












テメェは俺を月と例えたが。

月は太陽の光を受けねぇと輝けねェ、って知ってるのかよ?

太陽を喧しいとかなんとか言ってやがったから、
どうせ知らねェんだろうがよ。



テメェがいねェと、どうしようもねェ。



そういう意味で、俺はお前を太陽に例えてやったんだぜ?
感謝しやがれ。
















:あとがき:

フリー夢シリーズのバノッサ編でした。
夜の一コマ。ちょっくら幻想的を目指してみました。
でも、最後はクサイ台詞を吐きまくりです。笑。

言ってないのに、繋がってる。
そんな関係になれたら凄いですよねー。

最後の『感謝しやがれ』は、バノさんらしい一言と勝手に思っております。笑。






3000HITフリー夢という言葉に狂喜乱舞し、思わず頂いてきてしまいました!
あぁぁ、テスト前の癒し!ホントに癒された!(泣)
バノさんが甘いセリフ言ってくれて、床をのた打ち回ったのは内緒(言ってるがな)
バノさんは、『〜しやがれ』とか、よく言いそうです。この話の最後の『感謝しやがれ』には、愛がこもってて……!(もうその辺でやめておけ、お前)
おぉぉ……素敵な夢&癒しをありがとうございました!(感涙)