ピンポーン。 「他プレイヤーがあなたに対して『交信』を使用しました」 『フィンクスだ……見つけたぜ。これからお前のところに行く』 「♠……さっそく、2人っきりの邪魔が入っちゃった◆」 それはきっと、日頃の行いが悪いからだよ、ヒソカさん。 蜘蛛と除念
「せめてフィンクスが来る前に1回だけでも……♥」 「これから来るって言ってるでしょー!わぁぁ、服脱がさないでー!」 魔術のようにヒソカが服を脱がしにかかってくる。 指が使えないはずなのに、なんでそんなに器用なんだ……! って、そう!! 「ヒソカ、指!!」 私の言葉にはお構いなし。 ヒソカは手を使う代わりに自らの体重で私の体を拘束し、「♥」と耳の後ろや首筋など、弱いところばかりを攻めてくる。 「ちょっ……やっ……」 「……イイね、その声……♣スゴく、イイよ……♥」 耳元で囁くヒソカの声が、掠れている。 ……うわぁあぁぁぁ、お、お腹になにか当たってる、よ……! 「……ダ、メ……ッ」 「んー、ダメだよ、それじゃ♥……それじゃ、ボクみたいなのはソソられるだけさ♥」 ヒソカの顔がはだけた胸に当たろうとしたとき。 ……ピクリ、とヒソカの体が反応する。 「…………空気の読めないヤツだな♠」 ヒソカがササッと私の服を合わせると、両腕にがっちり閉じ込めた。 「ヒ、ヒソ……ヒソカ?」 そして、ふぅ、と小さなため息。 「ちょっとおあずけね◆……ウン、決めた♥仕事が終わったら、3日は宿に泊まることにする♥」 小さな呟きが終わると同時に、 ギュンッ!!ドシュッ! という音が聞こえた。 「……よぉ、連れにきたぜ」 現れたのはフィンクス。……ヒソカ、フィンクスの気配感じたんだ。 ……遠くから瞬時にやってきたっていうのに気付くなんて、どんな感覚してるんだ……。 「フィンクス……もうちょっと遅く来てもよかったんだよ◆」 「はぁ?何言ってやがる」 「……イヤイヤ、フィンクス、ありがとう」 「は?」 フィンクスは交互に私たちの顔を見比べて、疑問符を浮かべた。 でもすぐにまじめな顔に戻ると、くい、と顎である方向をしゃくる。 「除念師を見つけた。合流するぞ」 コク、と頷いた私たちを見もせず、フィンクスは『同行』の呪文カードを使った。 あっという間に景色が変わって、目の前にシャル、フランクリン、シズク……そしてこの前はいなかったフェイタンとボノレノフが現れた。 「、久しぶりね。元気だたか?」 「うん、久しぶり!元気だよ!」 寄ってきたフェイタンにごあいさつ。 相変わらず可愛いvv……その手で、剣を弄んでさえいなければ。アー、剣に赤いものがついてるのは、お姉さんの気のせいですよ、ネ……(遠い目) 「お友達は?」 「マチとノブナガが尾けてる」 ヒソカの疑問には、シャルが答えた。シャルの指先には念の糸がリボン結びされていた。 マチとノブナガももう来てるのね……マチにはこの間のお礼を言わなきゃ。 「除念師との交渉はすべてお前に任せる。金ならいくらでも用意する。とにかく除念師にウンと言わせろ」 「わかってるよ♠じゃなきゃクロロと闘えないからね♣……、行こう♥」 ヒソカは私を連れて、糸の跡をたどる。 たどりついたのは、大きな木の上。 まったく手を使わずにヒョイヒョイッと上って行くヒソカ。 もちろん私にそんな芸当はできないので、登りやすそうなところを選んで若干腕力に頼りつつ上って行く。 上にたどり着いた時には、すでにヒソカは望遠鏡のようなものでどこかを覗いていた。 「よぉ、」 「ノブナガ!」 「久しぶり。怪我はもう大丈夫かい?」 「マチ!この間は本当にありがとうね」 「まったく……あんま心配かけんじゃないよ」 ぽんぽん、とマチの手が頭に乗っかる。 のんびりモードの私たちとは対照的に、ヒソカとノブナガはクールな会話をしていた。 「あれがそうだ」 「どうやって見つけたんだい?」 「教えられるワケねェだろ、ボケ」 「……その木陰にいるキミ!キミの能力かい?」 一瞬にして、目の前で微笑していたマチの顔が変わった。 ……まさかヒソカが、木陰にいるカルトのことを気づくと思っていなかったのだろう。 私は私で、原作知識でヒソカの言動は予測がついていたからあまり驚きはしなかった。 「……チッ、化けモンかテメェ」 「くくくく……とっても楽しいバトルを終えたばかりでさ♥ボク、今感度ビンビンなんだよね……フィンクスにはイイトコで邪魔されるしね♠……この猛りを静めるために、見ず知らずの人間なら、壊してもいいかなって気分なんだけどね……?」 「くそっ」 「出といで!」 マチとノブナガの呼びかけに、木陰の裏から小さな人影―――カルトが出てくる。 真黒でサラサラな髪はイルミに、そして若干猫のような目はキルアにそっくりだ。……か、かぁわいぃぃぃ……!! 「僕の絶、ヘタだった?」 「いいえ、完璧だったわ」 「こいつの感覚がハンパねぇだけだ」 「でも、こっちの人も気づいてたでしょ?」 カルトが私を見据えながらそんなことを言う。その目からは、警戒と『殺気』を感じた。 ……えーっと……雲行きがあやしいぞー(汗) 正確には私はカルトの『絶』を見破ってたんじゃなくて、知識を持っていたから『予測』してただけなんだけど。 「……あぁ、このコは特別だから♥」 ヒソカは私が『予測』したことを悟ったのだろう。 ふふふ……と笑いながら返答した。 ヒソカの笑いの意味はわかる。だって私が知っているということは『重要なストーリーポイント』だということだから。 「、覗いてごらん♥」 ヒソカに望遠鏡を渡されたので、示された方向を覗いてみる。 何度か迷子になった先に見えたのは―――布で体を覆った人間。 「確かにぼくの能力で見つけた。どうやったかは言えない」 「そ……◆……、彼で間違いないかい?」 「……うん」 「が言うなら間違いない♥……さっそく交渉に行くことにしよう♠」 ザッとヒソカが木から飛び降りた。 下を覗きこんだら、ヒソカが両手を広げて待っているので……ちょっと恥ずかしいけど、私も思い切って飛び降りる。 ヒソカが受け止めてくれると思ったので、堅は使わなかった。 思ったとおり、ヒソカは私をうまく受け止めてくれて、ふわりと地面におろしてくれた。 行こう♥と道を指示してくれる。 私はヒソカの後をくっつきながら、本を具現化した。 「……ヒソカ、指、治すからね」 「まったく……頑固だね、も♠」 「本来なら私、強化系資質だと思うもん。……アスクレピオス!」 フワァ……とアスクレピオスが具現化する。 「ヒソカの悪いとこ全部治して」 「了解」 キレイな光がヒソカを包む。 ズズズッと体の力が奪い取られていくような感覚を覚えたけれど……ヒソカを癒している光が消えるまで、なんとか耐えた。 「……あんま無茶すんなよ」 私に向かってそれだけを言うと、アスクレピオスはふっと消える。 ヒソカがスルスルと包帯を解いていた。 「……さすが♥」 完治した指をにぎにぎと動かすヒソカ。 それを見て、ホッと息を吐く。……やっぱり、大事な人にはいつも元気でいてほしい。 「……、大丈夫?」 「うん、ヘーキだよ」 「…………、ボクに嘘は効かないよ?」 治った指で、頬を撫でられる。 目をつぶったのは、くすぐったさとウソを見抜かれて気まずかったからだ。 「…………ハハ、ちょっと、しんどい」 「やっぱり♠……ドッジボールの時にオーラも使ったし、精神的にもキてるんだろう?……それだから、あまり使わせたくはなかったんだけど♠」 「……うぅ……」 「ゴンたちから爆弾魔の話も聞いたし……体調は万全にね◆この交渉を終えたら、少し休もう♥」 「…………はーい」 「あ、でも宿に泊まったら、ボクがちゃんと休ませてあげられないかも♥」 「ぜひとも!ぜひとも休ませてください!」 ヒソカは返事を濁して、誤魔化しのキスをしてきた。 |