「ジャンケングー!!!!」

ゴンの渾身の一撃は確実にレイザーを捉えていた。
でも。

ドゴンッ!!!!

レイザーがこちらに向けてレシーブを行い、ボールが跳ね返ってきた。
ボールは一直線にゴンめがけて飛んでいく。
その場にいた誰もが、当たる!と思ったけれど、ゴンは今の一撃に全てを込めていたのだろう。気を失ってドォッと倒れ込んだ。
同時に、フッ、と隣にいたヒソカが動く気配。

「ヒソカッ!!」

ヒソカがニッコリ笑ったのが見えた。



試合終了の合図



倒れたゴンの真後ろに立ったヒソカは、飛んできたレイザーの球を、『伸縮自在の愛』で包み込んだ。
袋状になったオーラの中にボールが吸い込まれていく。あまりの速度と威力にオーラが対応しきれなかったらしく、操るヒソカの指がバギビギボギッと気持ちの悪い音を立てた。
それでもヒソカは動じることなくオーラを操り続け―――オーラの中に入っていったボールをパチンコ玉のように弾き返した。それは、またレイザーに戻っていく。
レイザーがもう一度跳ね返そうとレシーブの態勢に入った。そこにボールは向かっていく。

バチュッ!!!

音とともに、レイザーの腕にボールが張り付いた。
そのまま、勢いを殺せずレイザーは場外へ。

―――あたりが、静まり返った。

「レイザー選手、エリア外で触れた状態での捕球は反則!アウトです!よって、この試合、ゴンチームの勝利です!」

審判の声が静寂を破る。
一気に歓声が上がった。

私は極度の緊張から解放されたので、額に浮き出ていた冷や汗を拭う。
ふぅ、と一呼吸おいてから、騒いでいる人たちを横目に見て、タタタッとヒソカに近づいた。

ヒソカは近づいて行った私に目を向けると、プラプラと両手を振った。……あぁぁ、痛そう……痛そうだよ……!
治そうと本のページをめくろうとしたら、そっと止められる。

「彼らにわざわざ君の能力を見せる必要はない◆」

「でも……」

「大丈夫だから……にキスしてもらえたら、一発で治るよ、こんなの

「!!!……それは、治るのにずいぶんかかりそうだね……っ」



ヒソカは少し残念そうな顔をして……

「じゃ、ボクからしよう◆」

………………自分からデコチューをぶちかましてくれました。

「結局、最後どうなったの??」

ゴンが目を覚ましたらしく、テトテトと走りよってきた。
……今のシーンを目撃されてないことを祈る。

キルアがゴンに状況を説明。

「そっか、ヒソカが決めてくれたの……」

「結局オイシイとこは全部持ってかれたな……がいるからか?」

「ふふ、もちろん◆……ま、みんなの力があったからだよ全員の勝利ってやつさァェ

「なんかそのセリフ似合わないよ」



あ、ヒソカが地味に落ち込んでる。
私が笑ったのを見て、ヒソカが無事な指で小突いてきた。

わいわいと騒いでいる私たちに、レイザーが近付いてくる。
彼の破けた靴が、あのボールの威力を示していた。

「負けたよ……約束通り俺たちはこの街を出ていく」

レイザーがいった言葉に、一瞬みんなでポカーン。そののちに、ポム、と手を打つ。
…………あ、そっか。そういうゲーム内容だった。もうそんな設定忘れてたよ……!

「その前に、ジンについて、質問に答えよう」

くいっ、とレイザーがみんなとは離れたところを指さす。
ゴンがこちらを見て確認するので、みんなで頷いた。

「キルア、あんたはこっちで手当てだわさ」

ビスケがキルアを引っ張って行ったので、私もヒソカに向きなおる。

「ヒソカも……せめて、手当てくらいさせて」

「……姫の仰せのままに

こんなときにまで何を言っとんじゃ!と思ったけど、ヒソカはきっと心配させないようにしてるんだろう。
私は自分の本を消して、バインダーを取り出し、その中から救急医療セットを出した。……あぁ、もっと高級なの買っていればよかった。これじゃ、簡単な処置くらいしかできない。

ヒソカがビギビギッと自分で骨を正常の位置に戻す。……うぁぁぁ、それだけでも痛い……。
添え木に湿布。ベタベタベタッと貼って、包帯でこれでもかというほどグルグル巻きにして固定する。

「……、これじゃ動かないよ

「当たり前、動かないようにしてるんだもん。……しばらく我慢」

「これじゃにあーんなことやこーんなことが出来ないじゃないか

「コラー!!!」

んふふふふ、とヒソカが面白そうに笑う。
この人は……!まったく冗談が本気なんだもの……!

「これだったら、に色々やってもらわなきゃね……あぁ、それもイイね、すごく加虐心を誘う……

このサディスティック奇術師め!!
ああ、ほら、キルアもビスケも、戻ってきたゴンも呆れた目で見てるじゃないの!!!!

「…………、気をつけろよ」

何に!!!

ゴホンッ、とビスケが一つ咳払いをして、

「ゴン、話は終わったわね?……じゃ、戻るとしましょ」

なにもなかったかのように、そうまとめてくれた。
…………大人の配慮、感謝します。






「ヒソカとは本当に何もいらないの?」

お姉さんが灯台に来て、カードにその姿を変え、イベントがすべて終了した。
立ち去ろうとする私たちに、ゴンが声をかけてくる。

「あぁ、楽しかったからねもう行くよ

「オレ達と一緒に行動しない?」

キルアの申し出に、ヒソカと顔を見合わせる。
…………慎重なキルアが、仮にもかつて敵対していたヒソカにこんなこと持ちかけるなんて(いくら旅団の動向が気になるからっていっても)意外だったからだ。

キルアは頭がいいから、きっと私の思考を読んだのだろう。
苦笑しながら言葉を続ける。

「前のままのヒソカだったら誘うどころか、ぜってぇ一緒に戦おうなんて思わなかったぜ」

「へ?」

キルアの発言に、ゴンも頷く。

がいるからかな、ヒソカ、前よりも雰囲気がまともだよね」

「まともって……こらこら」

「マジな話だぜ。……相変わらず変態ヤローなのは変わりねぇけどな」

キルアやゴンの言葉をまったく無視して、ヒソカは私に絡んでくる。
指が使えない分、腕で体に巻きついてきたり……タチ悪くなってるぅぅぅ。

「……、オレ達と行動したほうがいいんじゃない?オレらがお前守ってやるよ?」

「ふふふ……それはナシこれ以上と2人の時間を削られたくないからね

今度はしっかり反応したヒソカは、「んー」とキスしようとする。
すんでのところでそれをかわしてキルアに向きなおった。

「面白そうなイベントも教えてもらったし、後は自分たちで出来る範囲で楽しむことにするよ。……ヒソカについては今までなんとかしてきたから、大丈夫……だと、思う」

「オイオイ、頼りねぇな……」

なんとも返す言葉がありません。

「……キミ達はまだカード集めをするんだろ?……また何かあったら『交信』で教えてくれよ◆『同行』か『磁力』で飛んで行くから

「OK。……も危険を感じたら『交信』で」

えーっと……。

それだと毎日になるかもしれませんけど、いいですか?(汗)