「を入れても7人……くそっ、1人足りねぇか……」 ちらっ、とキルアが他のプレイヤーを見たら、ビクリと反応したプレイヤーたちは踵を返して走り出した。 「やってられねーよ!オレは死にたくねぇ!」 「帰るぜ!絶対にやらねーよ!」 「あっ、オイ!」 「いいよ行かせろ。……俺がもう1人分作り出す」 ………………えーと。 私が入ることは確定なんでしょうか(汗) 投げつける想い
どうやらこの疑問は私だけが持っているらしい。 みんなの中で私は確実にメンバーに入ってるみたいで、なんの確認もなしに当然のように内野メンバーに回された。外野はゴレイヌの念獣。あれ、本当なら私の立場は念獣のハズなのに、大丈夫かな……!(汗) 「?」 「うぁっ!?」 「緊張してるのかい?」 んー?っと目を覗きこんでくるヒソカ。私は首を振ろうとしたけど……あながち間違ってもいないことに気づき、苦笑しながら頷く。 「まさか、命懸けてドッジボールやると思わなかったから」 確かに◆とヒソカは喉の奥で笑う。 小学校の時の休み時間の楽しい遊びを、今、こんな風に行うなんてね……。 しかも、このドッジボール、一瞬でも油断しようものなら、それが意味するのは『死』他ならない。 油断は禁物、今出来る最大限の事を。 ……それをすれば、 ………………きっと、死にはしないはず(汗) 緊張している私が面白かったのか、ヒソカはさらに笑った。 いつもどおりの何を考えてるのか読めない笑顔でぽんぽんと頭を撫でてくる。 「大丈夫ゥボクがいる限り、は死なせないェ」 …………また、この人は、こういうことをさらりと……! しかも、こういうセリフを言うとき、ヒソカの顔はものっすごくカッコいい。 照れ隠しに、頭の上に乗っている手を取って、ぎゅっと握りしめてから駆け出す。 「……今のヒソカに殺されそうになったよ……!」 それだけ言って、さっさと逃げる。 ちょっとだけ火照った顔を隠すように走って内野へ向かった私の後ろから、クスクスクス、というヒソカの笑い声が追いかけてきた。 「それでは試合を開始します。審判を務めます、ナンバーゼロです。よろしく」 ペコリと一礼する悪魔……だけど、ちょっと憎めない顔。 最初はジャンプボール。キルアがジャンパーで始まったけれど、レイザーは余裕の笑みでボールをこちらに渡した。 ザザザッ、と捕球態勢に入るレイザーたち。 ボールを持ったゴレイヌが左手で投げた。……どうやら彼はサウスポーみたいだ。 ボゴッ、ボゴッと2匹あてたところで、レイザーが『準備OK』と言葉を発した。 彼から発せられる微かだけど洗練されたオーラにビクリと体が勝手に反応する。 ゴレイヌがボールに念をまとわせて、レイザーめがけて投げる。 バシィッッ!!! レイザーが片手で軽々とそのボールを受け止めた。 そして、ズズッ……と力強いオーラをそのボールに纏わせる。 ざわざわっ、と首の後ろがざわめく。 知らず知らずのうちに、体が勝手に堅を発動していた。 レイザーは無言のまま腕を振りかぶる。 「!!!!!」 剛速球なんて言葉じゃ追いつかないほど、速くて重いボールがゴレイヌめがけて飛んで行く。 堅も何もしていないゴレイヌが当たったら、間違いなく、命にかかわるほどのボール。 思わずギュッと目をつぶった。 パァンッ!!!と音が鳴って、そろそろ目を開けたら、ゴレイヌと念獣の位置がすり替わっていた。 ……どうやら原作通り、ちゃんと逃げたらしい。 私はほっと胸をなでおろした。 ……私がまぎれこんだことで、ゴレイヌの念獣は1匹になってしまった。 それが悪影響を与えなければいい……と思っていたから。 もしも私が入ったことで、ゴレイヌが死ぬようなことがあったら……嫌すぎる。 ゴレイヌは外野で荒い息を吐いていた。心なしか顔色が悪くなっている。……かなりの恐怖を感じたのだろう。 「…………、余計なことは考えないんだよ◆」 隣でヒソカが腕を組んだまま言う。 私は堅を解いて、ジットリと汗をかいた拳を緩めた。 「堅が出来ればいくらアイツのボールでも死ぬことはないだろう◆……だけど、他の誰かを心配したり、何かに気を取られたり……心に隙が生まれるとオーラの精度も鈍るェまだキミにとっては一瞬の油断は命取りだァ」 コクン、と頷いた。 緊張と恐怖で、声が出なかったから、頷くことしか出来なかった。 寒さではない震えを抑えきれない私の様子を見て、ヒソカはふっと笑う。 「そんなに力入れすぎてもダメだよゥ……だけど◆」 ヒソカの声が、少しだけ真剣味を帯びたものに変わる。 「こんなところで死んだら、ボクは君を許さないェ」 「まぁ、簡単には死なせてあげないけどねゥ」と付け足されたけれど、その言葉はまったくもって真剣すぎて、レイザーに感じた恐怖を一瞬忘れそうになるくらいだった。 おかげで、少しだけ体の力が抜ける。 「……任せて、簡単にやられたりしないから」 「ウン、いいねゥ」 ヒソカが今度こそニッコリ笑った。 「さぁ、次行くぞ!」 レイザーが超高速パスを外野に送る。 私たちは真ん中に集まることを余儀なくされた。 「くっ……」 目で追いかけるだけで精いっぱい。 気を抜けばすぐにボールが飛んでくる。 集中力を最大限に発揮し、ボールが飛んできたらすぐさま反応できるように反射神経を研ぎ澄ませておく。 ビッ……バシッ!ギャギャッ!! ボールを捕球せずにそのまま悪魔が投げたボールがツェズゲラさんめがけて飛んで行った。 ツェズゲラさんはボールの軌道を追い切れていなくて、視界にボールが入っていない。 「!!危ない!」「ツェズゲラ!!!」「後ろ!!」 ドギュッ……メギバギ……ッ!! 何か硬いものにひびが入るような、気持ちの悪い音が聞こえた。 同時にツェズゲラさんの体が吹っ飛んで行く。 地面にはねたボールをキルアがキャッチした。 「ツェズゲラさん!大丈夫!?」 ツェズゲラさんはゴホッと咳きこんだけど、片手をあげて答えてくれた。 アウトになったのはもちろんだけど、この分じゃ外野も出来ないだろう。事実、審判に退場を告げられた。 「…………あの大柄なツェズゲラさんの体を吹き飛ばすなんて……」 「それよりも、人に当たって地面に転がってなお重いこのボール……やっかいだぜ」 キルアが舌打ちをして、何かを考え込む。少々のことじゃ動じないキルアがそう言うのだ。……ボールの威力は想像以上のものなのだろう。 思わず考え込んでいたら、いつの間にかまた隣にヒソカ。 「、ボールは追えてるね?」 「うん、なんとか目でみることは出来る」 「ゥ」 私の言葉に満足げに笑うと、ヨシヨシ、と頭を撫でてくるヒソカ。 あまりにいつもどおりなので、ゆっくりゆっくり力が抜けていく。 ……ヒソカはいつも私の様子をうかがっていてくれている気がする。ちょっとでもこうして緊張したり恐怖を感じたりすると、いつの間にかそばにやってきて体の力が抜けるようなことをしてくれる。 「ァ」 ……今は知らんぷりしてるけど、きっとそうだ。 こういうとき、ヒソカが大好きでたまらなくなる。 他に人がいなかったら、ぎゅ〜っと抱きつきたいくらい。 でも今は人がいるので、 「……ありがと、ヒソカ」 とお礼を言うだけにしておいた。 「ヒソカ!」 その横でゴンがヒソカに声をかけた。 今度はゴンへ向き直るヒソカ。 ゴンがヒソカを呼んだ意図を理解したのだろう。 「……オーケー、ボールをェ」 そういって、ボールを受け取る。 そのままヒソカはボールに念をまとわせた。ヒソカの念『伸縮自在の愛』を。 ぽん、と一回私の頭に手をおいてから、ヒソカは相手に向ってボールを投げる。 ヒソカも負けず劣らずの速さでボールを投げて、まずは1匹撃破。当たったボールは、能力を使ってヒソカの右手に吸いついた。 「さぁ、楽しませてくれよ◆まさかこれで終わりじゃないだろうね?」 その言葉は、ヒソカがすでにこの命もかかっている試合を『ゲーム』として楽しんでいることを表していた。 「ヒソカは……仲間だと頼もしいね」 「え?」 「まさかこうやって共闘するとは思ってなかったからな……敵に回したら相当厄介だけど、味方にしたらこれ以上ない強さだ」 ゴンとキルアの意外な言葉に私はきょとんとする。 ……ま、確かにヒソカの怖いところばかり見ている2人にしたら至極当然の感覚なのかもしれない。 クスクス笑いながら、ヒソカはボールを『伸縮自在の愛』で弄んでいる。 「質問!」 キルアが審判に『バック』の使い方について確認をしてから、ゲームは再開。 ヒソカがまたありえないぐらい速い球を投げた。 …………あぁもう、カッコよすぎる!!! ヒソカの剛速球は一直線に悪魔たちに向かっていく。 完璧に捉えた6番。隣の7番にも当たる位置だ。 ブゥゥゥン……ッ。 鈍い音がして悪魔たちの姿がブレ―――新しく、大きな悪魔13番が生まれた。 13番はヒソカの剛速球をガッチリ受け止める。 しばらくグググッ、とヒソカも対抗していたけれど、ボールが手元にあるのとないのとじゃ全然感覚が違う。 ヒソカがピッとオーラを外したのが見えた。 「、気をつけて◆」 戻ってきたヒソカが忠告をくれる。 ……今度はもう1度ボールを取らなければいけない。 「うぅ……頑張る」 ゴンやキルアがそうしたように、私も堅を使う。 い、痛くないといいな……(汗) でもレイザーの目は一点に集中していた。 「行くぞ、ゴン!!!」 ま、レイザーはゴンに思い入れ、あるよね。 …………うん、出来れば私は狙わない方向でお願いしたい。 そんな願いを抱いてしまうのは、いけないことですかね?(汗) |