「あ、あんた合格でいいや。ナイスジャンプ」 ありえないほどのジャンプを見て、さらにそれを上回るジャンプをして。 サラリと言ったキルアの一言。 …………人知を超えすぎてて、おねーさんはクラリとめまいがしてしまったよ。 闘いまでの猶予期間
アイアイについてからは時間が過ぎるのが速かった。 原作通りにサクサクと進んでいくシナリオ。 ヒソカが呪文カードの使い方を知らないフリをしたり、会っているはずのシャルたちの名前をリストから隠してたときは一瞬ドキリとしたけれど、知らんぷりした。 ゴンたちも私のバインダーを見ようとはしなかったし、突っ込んでも来なかった。 見られていたら何も誤魔化す手段を持っていない私の方こそヤバかったんだけど……助かった。 そして今、私たちはツェズゲラさんたちと交渉している最中だ。 さらにいえば、宙に浮いたツェズゲラさんやゴン、キルアたちをポカーンとみている最中。 口をあけたまま間抜け面で上を見ていた私を見て、ヒソカが言う。 「もやってごらんゥ」 「えぇぇ……でも、出来たとしても着地がうまく出来ないよ……両足複雑骨折とか絶対いやだ」 「大丈夫だと思うけどァ不安だったら、着地の時に堅を使いなよ◆」 「……わかった」 ヒソカのことだから、これをやらせることにも何か意味があるのだろう。 私はキルアたちが着地してすぐ、同じように飛び上がった。 「えいっ」 グンッ、と景色が変わる。 一気に上昇した高さは……どのくらいか、自分ではわからなかった(汗) だって比べるものが何もないんだもん!! 下を見たら、ヒソカが満足そうに腕を組んでこちらを見ていた。 そのまま、すぅぅ、っと下に降りていき(怖い怖い怖い!!)、地面に着く直前に堅の状態に。 「!!」 ダンッ、と大きな音がなったけど、無事に着地出来た。堅のおかげで、思った以上に衝撃はない。 ふぅ、と息をついて前を見たら、驚いたような視線が私を突き刺している事に気づいた。 …………あれ、これ、ドーユー状況デスカー???(汗) 「…………だから言っただわさ、念能力に関してはアンタたちよりも上だって」 「え?え?………………ヒソカさん、これ一体どういう状況……?」 「さぁねゥ大方、の能力が高くて驚いてるんだろ◆……人は見かけによらないってことを、思い知らせてあげたまでさァ」 よくできました、とヒソカが頭を撫で、ついでにニィッと笑ってまわりを見回す。 こちらをうかがっていた中で、ツェズゲラさんが近寄ってきた。 「いや、まったく驚いた。いい能力を持っているな」 そのまま握手を求めてくる。 私はいまいち状況が把握しきれないまま、その握手を受け入れた。 ゴレイヌが近付いてきて、ツェズゲラさんと対面した。 「今回の勝負は色々なスポーツだから、誰がどのスポーツを担当するかがカギとなる」 「スポーツの種類は把握しているのか?」 ここでしばしの作戦タイム。 誰がどのスポーツを担当するかが話し合われた。 私は自分の能力を生かせるような種目がなかったので、とりあえず保留。……ま、原作通りなら最後はドッジボールになるだろうし、あまり関係はないかな。 「ヒソカはリフティング?」 「そうだねェ『伸縮自在の愛』を使えば、まぁ勝てると思うし◆」 確かに。 ゴムとガムの性質両方を持つなら、永遠とリフティングし続けることが出来るだろう。たとえ相手が同じような能力を持っていたとしても、確実に体力の面でヒソカが上回る。えぇ、ヒソカの体力は私が保証しますよ……! 次々と種目が決まっていき、最後まで悩んでいたゴンはツェズゲラさんと組んでビーチバレーをやることで落ち着いた。 「これから1週間、徹底的に特訓をして臨む。これ以上の期間は設けられない。全力で能力を伸ばすことだけを考えるぞ」 ゴクリ、と全員の唾を飲み込む音が聞こえた。 1週間、ソウフラビを拠点に特訓が行われた。 ……とはいっても、主にゴンが、だけど。 他のメンバーはほとんど自分の能力だけで勝てる、と思っているらしく、特に特訓をすることはなく、人数合わせのプレイヤーを集めに行っていた。 私とヒソカはいつも通り。 ヒソカが「わざわざ訓練の場面を他人に見せる必要はないァ」とか言って、ちょっと離れた森に足しげく通っては、いつも通りの訓練を続けていた。 毎日クッタクタになってヒソカに連れられて帰る私を見て、最初ゴンやキルアは驚いていたけれど、3日もたてば慣れたもので「風呂ん中で寝るなよ〜」とまで言うようになった。 1週間だけだけど、ゴンやキルアたちとの共同生活は面白かった。 相変わらずの2人は根掘り葉掘り私のことを聞こうとするし、ヒソカとの関係も探ってこようとする。……特にキルアはませガキだし。 ビスケは最初こそ猫かぶっていたけれど、いつの間にか私の前では「だわさ」を連発していた。……もしかして、嘘を見抜く達人のビスケは、私がビスケに関して何か知っているのに感づいたのかもしれない。 ま、何も深入りはしてこなかったけれど。 1週間経ってすぐ、私たちはレイザーの元を訪れた。 灯台を改造した要塞。そこの中にジムのような大きな施設があった。 生で見るレイザーは、アメフト選手を何倍も大きくした感じで、念能力云々の前に、肉弾戦でプチッてやられそうな感じだ。 ……うっひぇぇぇ〜……こんな人たちと対戦すんの!? ちょっとビビったけれど、みんなはそんなことはないらしく。 自信満々に種目をこなしていく。 最初のボクシングにはじまり、ボーリング、フリースローとこちらの勝ち。 そこで事件は勃発した。 ふとっちょのボポボがキルアにやられた復讐として、種目以外のことを行おうと名乗り出た。 「知ったことかよ、このクソゲームに付き合うのももうやめだ!!!」 体を突き刺すように漂う不穏な空気に、その場にいられないほどの威圧感を感じる。 ジリジリと下がりかけたところで、スッ、とヒソカが目の前に立って視界を遮った。 「ヒソ……「、おいでゥ」 有無を言わさず、ヒソカが私の腕を引っ張った。そのまま私はヒソカの胸に飛び込む形になる。 なにを、とヒソカの顔を見上げた瞬間、ドォォォオン!!と大きなものが倒れる音。 ビクッ、と思わず肩を揺らす。 振り返ろうとしたら、ヒソカにそのまま頭を抱きこまれた。 ヒソカの突然の行動の意味を探ろうとして頭に思い浮かんだのは……原作でのボポボの姿。 「何だよあいつら、仲間同士で殺しあってるじゃねぇか」 「やばいよ、あいつらやばいって」 ヒソカに抱え込まれたままだから姿は見えないけれど、聞こえた声で想像がつく。 …………ボポボが、頭を吹っ飛ばされた姿が。 ふっ、とヒソカの手が緩んだので、ヒソカを見上げる。 「……ありがと、ヒソカ」 ヒソカは何も言わずに笑うだけだった。 私はそっとヒソカから離れて、レイザーの方を見た。……倒れたボポボは仲間たちに連れられて外へ運ばれているみたいだけど……なるべくそちらは見ないようにした。さすがに、ちょっと刺激が強すぎる。 「さて…俺のテーマは8人ずつで戦う……ドッチボールだ!」 レイザーがそう言うと、ズズズ、と周りに念で具現化されたキャラが現れた。 「8人…!メンバーを選んでくれ。……こっちはもう決まっているからな」 |