「さて、と……そろそろ、動きだす頃合いかなゥ」 年が明けて数日。 ヒソカはいつもの楽しそうな笑みを浮かべた。 動きは年明けを待って
「、呪文カードを買いに行こうかゥ」 唐突なヒソカの言葉にビックリした。 ヒソカがこんなに積極的にゲームに参加しようとしたことなんて、ただの一度もなかったからね。 モンスター倒す以外でも、私は勝手にイベントやらなにやらを起こしてそこそこゲームを楽しんでいる。でもヒソカは完璧にゲームを無視していた。私は結構カードも集めたし、指定ポケットのカードもちらほら持っているけれど、ヒソカのバインダーはただの物入れと化している。 「呪文カード……っても、ヒソカ、守るものなんて何もないよね?」 「んー……別に守るカードとかはいらないな◆欲しいのは、移動系のカードァ」 「移動系……っていうと、『 「うん、そうだねァ後は、『 『 ヒソカの意図することがまったく見えない。 どうして突然こんなにやる気になったんだろ……や、別に私はゲームを楽しみたいからそれはそれで構わないんだけど。 「?????どしたの、急に」 「んー……たぶん、そろそろ向こうも気づきはじめる頃だと思うんだよね◆」 「向こう…………あっっっっ!!」 ようやく、思い当たることが一つ。 ヒソカはニッコリ笑った。 「……ヒソカ、バインダー」 「OKゥ……ブック◆」 ボワンとヒソカのバインダーが出てくるのと同時に、私も自分のバインダーを取り出す 私が元々持っている『 すぐにヒソカが今まで会ったプレイヤーの名前が表示される。 私はすぐさま一番最近出会ったプレイヤーのところを見た。 「…………シズクにフィンクス、シャルにフランクリン……」 見知った名前がずらりと並んでいた。 ちょっと前にはゴンの名前もある。 「これで呪文カードさえあれば、すぐに彼らとコンタクトを取ることが出来るァだからまずはその意味で『 うん、と私は頷いた。 私が持っている呪文カードは多くない。……元々、そんなにカード運が強いわけでもないので、1パック呪文カードを買ったところでいいカードは出なかったし。 「そうなると、後は、本来の目的……除念師を探せばいいだけェそれに、そろそろもこの辺のモンスターのレベルじゃ物足りないしねェ」 物足りない……って、ようやく出てくるモンスターを逃げずに倒せるくらいになったのに!!! 「さて、除念師を探すにはどうしたらいいか……って考えると、ボクの言った事がわかるだろ?」 「プレイヤーは何かしら町に集まる。マサドラはもちろんだけど……1つの町を拠点としながらプレイする人も少なくない。『 「上出来ゥ」 ニコリと笑ったヒソカが不意打ちで軽いキスをしてきた。 「…………ヒソカ………」 「そろそろこっちにも慣れようねゥ」 「………………ヒソカさんの行動は読めません……」 ククク、と喉の奥で笑うヒソカ独特の笑い声。 耳に響く会心のエロさだ。 「今持ってる呪文カードは?」 「『 「了解◆それじゃ、カード売り場に行こうかァ」 状況を把握したヒソカはすぐにその足でカード売り場に向かった。 ほとんど水と食料しか買っていないヒソカは、今まで倒したモンスターカードを換金したら結構な額になっていた。 そのまま呪文カードを6パック買って、お目当ての3種類を無事に手に入れた。 「呪文カードはが全部持つことにしよう◆」 そういってヒソカは私のバインダーに呪文カードを納めた。 そのまま店を出て、またすぐにバインダーを取り出す。ヒソカはバインダーから迷わず『 「……とりあえず、『 「おっけ。そしたら、私が『 「うんゥ……『 バシュッと音がしてヒソカの姿が消える。 数秒間隔をあけてから、私も『 パッと切り替わった景色でまず見えたのが。 「……………………よりによって、ココかぁ」 アイーン、アイーンという意味不明な効果音が聞こえる都市。 『恋愛都市 アイアイ』だ。 「とりあえず、中入ってみようかァ」 「うん」 大きなハートを見ながら門をくぐって中に入る。 石畳の街並みはヨーロッパの街並みを想像させる作りだ。 「なんかカップル多いね……」 右を見ても左を見てもカップルだったり、もしくはナンパの最中だったり……さすが恋愛都市。24時間恋愛中ですか。 「ま、外から見たらボクたちもそうだろうしね◆」 ………………。 た、確かにそうですけど……!(照) サラリとヒソカが恥ずかしいことを言うもんだから、思わず立ち止まってしまった。 ドンッ! 「わっ!?」 立ち止まったら背中に感じた衝撃。 思わず前につんのめりそうになるところを、ギリギリのところで手をつかまれる。 「悪いッ、大丈夫か?」 手を掴んでいたのはイケメンのお兄さん。 「わわ、すみません!ありがとうございます」 「いや、こちらこそすまない。ケガはないか?」 「あ、はい。全然大丈夫です」 すごく申し訳なさそうな顔をしたので、思わずブンブン手を振りながら否定する。 ほっとしたようにお兄さんは笑った。 「あのー……」 今度は横から聞こえる声。 ひょいっとそちらの方を見ると、これまた背の高いお兄さん。 「今、ちょっと雑誌の街頭モデルを探してるんだけど……」 「へっ?私ですか!?」 「うん、そう。君だよ」 「えぇぇ!?」 「少しでいいから、時間くれないかな?」 「え、いや、ちょっとその……」 なんだか状況が全然わからない。 まわりを見回してヒソカの姿を探そうと試みる。……けど、視界が何かに遮られた。 「おい、放してやれよ」 また違う第三者登場―――!!! 私の視界を遮ったのは、新たに現れたこの人らしい。 「なんだよ、お前」 「なんだよじゃねぇよ。この子困ってるだろ」 あぁぁぁあぁ、どういうこと―――!! いったい何が起こってるの―――!! 目の前で突如勃発した言い争い(しかも私が原因?)にテンパッてると、今度は違う方向から手を引っ張られ、ぼふっと人にぶつかる。 今度はなんだぁぁぁぁ!!! と焦りながら上を見上げたら。 「!!ヒソカぁ〜……!」 見慣れた顔にようやくほっと息をつく。 「まったく……おちおち目を離してられないな◆」 ヒソカに腕を取られたまま、すぐにその場を離れる。 「あ、ありがと〜〜……」 「ダメだよ?ボク以外の男には警戒しなくちゃェ危ないよ?」 あの3人を含めた中では間違いなく1番危険なのはヒソカだろうけど、あえてそこにはつっこまないでおく。 まぁ、今の私にとっちゃヒソカが1番安全で、その他の人は警戒しなくちゃいけなかったのは本当だしね。 「ごめん〜」 謝るとヒソカはポンポン、と頭を撫でてくれた。 「どうやらここは、様々な出会いがある場所みたいだね◆」 ヒソカがあたりを見回しながら呟く。 周りではなにかしらのイベントが起こっている。 ヒソカはそれをじっと見つめた後、 「…………予定変更ェもうしばらく街の外で修行ァ」 くるりと方向転換をした。 私の手を再び取って、スタスタと街の外へ向かって歩き出す。 「えぇぇぇ!?せっかく来たのに?」 「ここは後回し◆」 「でも、また呪文カード使うの、もったいないよ?」 いくら購入したからといっても、移動系のカードは結構レア度が高いのでそう枚数が手にはいるものではない。『 ヒソカはしばらく考える。 「……よし、それなら先にこちらから用を済ませて、人海戦術を取ることにしよう◆」 「へ?」 「、『 「え、あ……うん」 バインダーを取り出し、『 「『 バシュッ、と音がして景色が変わる。 ついた先は森の中。 少し先に、懐かしい顔が見えた。 みんなは何か真剣に話し合ってるみたいで、私たちが『隠』を使っていることも相まってこちらに気づいた気配はない。 ヒソカがしばらく様子をうかがうように身を潜めるので、私もそれにならってじっと身を隠す。 時を見計らってヒソカが立ち上がって近づくと、パッと向けられる視線と念。 「ヒソカ!!!……それに、!」 ヒラヒラとみんなに手だけを振る。 ヒソカとみんなの大事な話を邪魔しちゃいけない。 「……ボクの言いたいこと、上手く伝わっただろ?」 それは、ヒソカがあえてゲーム内のプレイヤーネームを『クロロ』にしたことに関するセリフ。 『クロロ』の名前を出すことで、G.I内にいる旅団メンバーに『除念師』の存在を示唆する。ヒソカは旅団が『G.I』を狙っていたことも知っていたから、旅団メンバーがゲーム内に来る確信があった。その確信があったからこそ、ヒソカは思いついたんだろう。 「おい、てめェ!滅多なことペラペラしゃべるんじゃねェ……!てめェはてめェでやるべきことを黙ってやれ」 フィンクスの声を聞いて、ヒソカは軽く肩をすくめた。 青筋を浮かべたフィンクスがなおもヒソカに何かを言おうと口を開いたところで、ツンツン、と誰かに突っつかれる。 突っついた主は相変わらずさわやかな顔をしてるシャルさん。 「、もうケガは全快?」 「あ、うん!」 「それはよかった。マチから聞いた時はビックリしたよ」 「あ〜……マチにはお世話になったみたいで……今度会えたらお礼したいんだよなぁ〜」 「あはははっ、らしいな。大丈夫、もうすぐマチたちもゲームに参加する予定」 あぁ、そうか……今は4人しかいないけど、もうすぐみんなやってくるんだな。 いったいどこからそんなにG.Iを手に入れたのやら……もしかして、先に来てるメンバーがゲーム内でプレイヤーを殺して強制的にプレイヤーを離脱させたりして…………。 …………。 …………リアルだからやめておこう。 「ま、なにかあったら『 話を終えたらしいヒソカがこちらへ来た。 そのまま「行こうゥ」と腕を取って森の中へ歩き出す。 もうちょっとみんなと話したかったけど……ま、しばらくしたらまた会えるだろうし、今は我慢だ。 半ば引きずられるような体勢の中、私はまたヒラヒラとみんなに向って手を振った。 「おい、コラ!まだオレはと話してねェぞ!」 「私も話してない」 「ヒソカ、は置いてって構わないよ?」 フィンクス、シズク、シャルの声が後ろから追いかけてきた。 くるり、と振り返ると怖い微笑とともに、 「冗談もほどほどにしときなよェ……じゃあねゥ」 というそれこそ冗談じゃないのかと言いたいくらいのセリフをぶちかました。 |