パッと視界が変わった。
黒い円がたくさん描かれている……まぁ、魔法陣みたいなものの上に、私は立っていた。

幾何学的な模様のドアを通り、道なりに歩いていくと。


「グリードアイランドへようこそ」


可愛い女の子がしゃべった。

しゃべった。

………………………………感激。

「は、はじめまして!……って、あら?なんか違う……?」

一応、ゲームのキャラクターという設定のエレナ(だっけ?イータだっけ?)に挨拶をするというのはどんなものなんだろう。
それでも、エレナ(強引に決定)はクスッと笑うと、はじめまして、と返してくれた。

「ご登録名はどうしますか?」

「あ、そのまんまで……でお願いします」

「はい。…………それでは様、ゲームの説明をいたします。説明を聞きますか?」

「は、はい!」

まぁ、大体の内容は知ってるけど……一応ここで復習しておこう。

「ではまず、こちらの指輪をつけてください」

渡されたのは、ゴツイ指輪。
サイズ調整済みなのかな?私の中指にピッタリだった。

「このゲームではその指輪をつけていれば、誰にでも使える魔法が2つあります」

指輪をしげしげと眺めながら、私は先を促す。

「ブックとゲインです。…………それでは、指輪をはめた腕を前に差し出し、ブック、と唱えてください」

言われたとおり、指輪をはめた腕―――右腕だ―――を差し出し、ブック、と言った。
とたん、指輪にはめられた石から煙が噴出し、ボンッと音を立てて分厚い本が出現した。

「このゲームでは入手したアイテムを全てカード化することが出来ます。それはそのカードを納める本になります」

………………とまぁ、彼女に一通りの説明を受けて。
最後に『死』に関する説明を聞いた後。

「それでは、そちらの階段へどうぞ。…………ご健闘をお祈りします」

ペコリ、と私は頭を下げて、示された階段を降りていく。
古びた石柱が見え、次第に草の匂いが濃くなる。

階段を降りきると、そこは見渡す限りの草原だった。

「…………ずいぶん遅かったね…………クロロと話してたのかい?」

「わっ……ヒソカかぁ……ビックリした…………」

階段のごく近くで座り込んで待っていたヒソカ。
突然かけられた声に、ものすごくビックリして声が裏返ってしまった。

「ちょっとだけ、話してた。えっとね、修行のことと……そうだ、後、ゲーム中では女性の比率が少ないとかなんとか言ってたよ。意味がよくわかんなかったけど」

そういうと、ヒソカは少し眉をひそめて考え込んだ。
…………そんな悩むようなことなのかな。女の子だって腕が立つ人(ビスケとか)いるし、特に女の子だからって悩むようなことも無いと思うんだけど。



「ん?」

「…………いつも言ってることだけど、特にここでは、単独行動絶対禁止いいね?」

「な、なにゆえに?」

「(…………女性が少ない=飢えた男どもの標的になる可能性もあるってことに、この子は気づいていないのか◆)」

「な、なんですか、その視線は!!!」

「…………この中には旅団レベルの念の使い手がゴロゴロいるからね、身の安全のためだよ

「あ、な〜るほど…………こりゃ、ヒソカの側から離れられないね……」

「そま、そんなにボクはプレイする気ないから、狙われることも無いと思うけどね◆」

「ヒソカがプレイしなくても、私はそこそこ楽しむも〜ん」

「ま、頑張りなよ…………さ、て……とりあえずは、視線の方向へ向かうとしようか

ヒソカが目を向ける先。
うん……ねっとりとした視線が、遠くからだけど、私たちに向けられている。
それは、同時にその方向に街があるってこと。

ぐっ、と拳を握り締めた。

「まずは、街で情報集めだね

「了解!」

草原を吹きぬける風と共に、私たちは歩き始めた。





しばらくして、私たちは街へたどり着いた。

「え〜っと…………アントキバ?」

垂れ幕に書かれたハンター語を、なんとか解読。
ヒソカが、物珍しそうに周りを見回した。

「ふぅん、懸賞の街……か

ヒソカの言うとおり、街へ一歩入ったら、壁一面に懸賞の紙が貼られていた。
…………予想はしてたけど、すごい数だ。

「とにかく、情報収集をしないとね◆」

「そうだね。…………あっ、ヒソカヒソカ!あれあれ!あれ見て!」

私が指差したのは、1つの懸賞のチラシ。

「?…………腕相撲大会?」

「ん〜と……腕相撲大会で、優勝者には、『聖なる悪魔像』を差し上げますだって。………………神聖なのか、邪悪なのか疑問だけど………………」

「…………とりあえず、行ってみようか情報だけでも掴めるだろうしね

チラシに書いてある場所にいけば、ゴツイ男の人たちがこれでもかとひしめき合っていて……かなりムサい。

「結構人がいるねぇ◆」

「そーだね……うぅ、ムサい……」

なんだかほのかに汗臭い気が……!
とにかく、私たちはその辺にいる人に聞きまくる。

私は基本的なことは知ってたけど……改めて聞いて、頭の中を整理した。

、わかった?」

「うん。一応。…………で、どうする?この大会、出てみる?」

「そうだねぇ……出てみるのもいいかもしれない◆の力のいい試しにもなると思うしね

「………………えぇぇぇ!?私も出るの!?」

「当たり前

「てっきりヒソカが出てサクッと優勝してくれるのかと思ったのに!」

もそこそこいいところまで行くとは思うよ……よし、じゃ、申し込み

さくさくヒソカは受付に行くと、私たちの登録を済ませる。
参加は無料というから、たくさん人数が集まるみたいだ。
受付のお姉さんに聞いたら、150人は集まってるみたい。

…………うぅぅ、腕は折られたくないです(泣)
やばくなったら、すぐ負けようっと。


「あれ?」

バタッ。

「あれあれ?」

パタッ。

「勝者、!!!準決勝進出!」

「えぇぇぇぇぇ〜〜〜!?」

なんだか、大変なことになってます。

あっという間に準決勝進出。
私、こんなに腕相撲強かったか!?
いや、そんなはずは……っ!
だけど、事実、私の相手はまるで子供のように力がなくって……ぱたぱたと倒して、気づけば準決勝。

「…………知らぬ間に、私は怪力娘となっていたよ、おかーさん…………」

わきわきと手を握ったり開いたり。
そんなに力持ちになった気はしないんだけど……相当力がついたみたいだ。

「それでは、準決勝!対ヒソカ!」

「………………………………………………………は?」

「両者、指定位置に!」

腕相撲が行われるテーブルの席には。

「ひ、ヒソカ〜〜〜!?」

◆頑張ったじゃないか

「うあぁぁぁぁっ!?無理、無理無理!!!腕折られる!棄権!私、棄権しますからぁ〜〜〜!!!」

ヒソカ、不戦勝。
決勝では…………予想通り、相手の骨を折って、優勝していました。
…………よかった、棄権しておいて。


なにはともあれ、『聖なる悪魔像』GET!