刺されて次の日、私は早速アスクレピオスを呼び出して、怪我を治してもらった。
アスクレピオスは、一目私の傷を見ると、

「応急処置完璧」

そう言ってポウ、と光を生み出した。
ほわん、と傷の周りを温かい湯気のようなものが覆ったかと思うと、すぅっと痛みが引いていった。
服を捲る(朝起きたら、ヒソカに着させられていた)と、かすかに赤い傷が残ってる。

「…………んー、ちょっと残っちまったか。まだ完全にはふさがってないからあんま無理はするなよ。パナケイアの指輪して少し寝てりゃ、治るさ」

「わかった。ありがとー」

バイバイ、と手を振って本を消す。
アスクレピオスが消えていったと同時に、ヒソカが洗面所から出てくる。

「あ、ヒソカー。治った〜」

「…………やっぱり、今呼び出してたんだね?ボクが一緒にいるときで良かったのに

「や、なんか恥ずかしいし……(一応傷口確認とかしなきゃいけなかったし)完全にはふさがってないけど、あの指輪して少し寝てれば大丈夫だってvvやったね♪」

「それでもまだ寝てろ、ってことだろう?傷はふさがっても、失われた血を再生するには時間がかかるんだ◆……ほら、寝て寝て

「うぅ……平気だよ〜。ヒソカが伸縮自在の愛[バンジーガム]使って、出血止めててくれたんでしょ?」

「それでもダーメ

布団を肩までかけられ、トントンと寝かしつけられるようにされた。
と、ピンポーン、と部屋のチャイムが鳴る。
なんだろう?

「ルームサービスさっき頼んでおいたから、来たんじゃないかな?」

「ルームサービス?」

「そう、昨日から何も口にしてないだろう?」

そういえば…………でも、あんまりお腹減ってないけど…………。

「傷とかで体がそう感じないだけだよ◆早く治すためにも栄養取らなきゃ

「うん…………」

でも、あんまり食べる気しないなぁ…………。
ヒソカがドアまで行って、ボーイさんを招き入れる。
大きなロイヤルスイートの部屋は、ボーイさんが入ってくるのにも時間がかかる。

「ここに置いてくれればいいよ

はい、とボーイさんは営業スマイルを浮かべて、銀色のお皿がのったテーブルをその場に置いた。
ヒソカがいくばくかのチップを渡す。
一礼をして去っていくボーイさん。

ヒソカが食事の準備をしようとしていたので、私もリハビリがてら、手伝おうと思って立ち上がろうとした。

、いいから◆」

「え、でも……」

「寝てて

…………………完璧、病人扱いだ。
うぅ、ずっと寝てばっかりだったからちょこっとだけでも、動きたかったのに……。

ヒソカが持ってきたお皿には、いい香りのするスープが入っていた。
ほこほこと湯気が立っている、野菜スープだ。

うん、野菜スープならなんとか飲めそう。

ヒソカからスープを受け取ろうと。

受け、取ろうと………………。



この、差し出されているスプーン(もちろんスープをすくった)はなんでしょう…………?



「ハイ、アーン

やっぱ、そう来たか―――!!!!!

「や、ちょ、ね、ヒソカ!食べれるから、自分で!」

「いいからいいから

嬉々としてスプーンを差し出してくるヒソカ。

「…………ちょっとヒソカ……楽しんでるでしょ、この状況を!」

「当たり前じゃないか好きなコが頼りにする相手がボクしかいない…………あぁ、ゾクゾクする…………

「なにを言ってるんだ、あなたは―――!!!」

「まぁ、それはおいといて◆アーン

おいておける状況ではないのだけれど…………もはや、ヒソカと格闘しても勝てないことはわかってる(戦闘はもちろん、口でもね)
はぁ、とため息をついて………………ゆっくり口を開いた。

嬉しそうにスプーンを運ぶヒソカ。

パク。

スープを口に入れて、口を動かす。

「おいしい?」

「…………………おいしい、デス」

にこーっ、とヒソカは笑って、またスプーンを差し出してくる。
………………うぅ、恥ずかしいよぅ………………。
いくら私が恥ずかしがろうと、ヒソカはスープの中身がすべてなくなるまで、スプーンを差し出すのをやめようとはしなかった。





、今日と明日休んだら、私用船でヨークシンを出るよ

「あぁ…………山篭り?」

「ウン徒歩で行ってもいいんだけど……少し離れてるからね、ケガのことも考えると、飛行船が妥当かな、と◆」

「ん、わかったー。…………はぁ、キツイんだろうなぁ……」

「覚悟してなよ?」

「あぅ…………でも、確実に強くなれるんでしょ?」

「あぁ、確実に

「………………じゃ、頑張る」

「OK、その意気だまぁ、最初からそんなキツイことはしないからさ

ヒソカのその笑顔に、騙されさえしなければ。
もうちょっと身構えて最初から訓練を受けていたのに。


騙されさえ、しなければ…………(泣)




そして。

1ヶ月が、経ちました。