チッ…チッ…チッ…チッ……
時計の音がやけに耳に響く。
一度目が覚めてしまった時は、なかなか眠れない。
隣で幸せそうに眠る、レツの顔を眺めて、私は深く溜め息をついた。


一言


豊玉高校、3時限前の休憩―――
っ」
ボーッとした顔。返事はもちろんなし。
親友のが、の目の前でパンッと手を叩いた。はっと我に返った顔。
「あんた、目ぇ開けながら寝てんたんとちゃう?」
「寝てない寝てない。起きてるよ……ま、眠いんだけどね」
ん〜、と背伸びをしてパキパキと首を鳴らす。
が、意地悪い顔で笑った。ギク、と少し椅子ごと後ずさりする。
「あんたら……」
ギクギク!
「……そんなにお盛ん……むぐっ」
!でっかい声で言わない!」
「せやかて……あんた、昨日も寝てないんやろ?……ほんっと熱い……むぐっ」
!」
真っ赤になってぎゃあぎゃあ騒ぐと。
当の本人―――南烈がひょい、と顔をのぞかせた。
「なんやねん、お前ら。でかい声出しよって。女ならもーちょいおしとやかに話せや」
「うるさいわ、南!あんたの話してたせいで声がでかくなったんや!そうや!ちょっとはのこと……むぐっ」
「あん?俺の話?なんやねん、。話してみぃ」
よってきた南に、がまたも椅子ごと後ずさる。
「話すことの程でもないよ……それよか、レツ。あんた何しにきたの?」
みえみえバレバレの話題そらしに見事にひっかかる南。
「あぁ、そうや。。悪いんやけど……世界史の教科書かしてぇやvv」
カリメロ頭がぺこりと下げられる。またかっ!と怒りそうになるだが……ちょっとかわいらしいその姿に、思わずええよ。という言葉が出た。
「そのかわり……日本史の教科書かしてぇやvv」
「よっしゃ、交渉成立!お前、日本史何時限目?」
「5時限。レツ、あんたは?」
「俺も5時限……じゃ、昼メシ、屋上で食わん?そん時に……」
「わかった。そん時に持ってく」
笑って、そしてまたカリメロ頭がペコリと下をむく。
「……ついでに、昼メシなんかもらえたり……するわけ……」
がふぅ〜と溜め息をついた。
「……いーよ。どーせまた、早弁したんでしょ?……私、今日多めに作ってきたし」
パァッと顔が輝いた。
「マジかっ!?よっしゃ!んじゃ、帰るわ!」
「ん。じゃーね」
ダァッと、まるで嵐のようにいなくなる。
ポカーンと口をあけて眺めていたが、南が帰ったとたんに、一気ににまくし立てた。
「なんやねん、あんたら!結局らぶらぶなんやねんか!」
「……そう?らぶらぶでもないよ」
「せやかて、ちゃんとヤッてるん……むぐっ」
「……声がでかいって……まぁ、確かにねぇ……けど、私、『好き』って言われたことないし」
「へぇ〜……大変なんやなぁ〜……って!それであんたら、ヤッとるんかい!?」
!そゆこと大声で言わないの!……ま、疑問も最もだと思うけど……言われたことないよ。なんか、知らないけどこーゆー関係になった」
ほぇ〜……という変な声を出す。
「……大変なんやなぁ〜……けど、なんであんた標準語なん?ちっさいころから大阪やろ?」
「私、小学校4年からだよ。大阪。それまで、関東にいたから標準語の方が使いやすいの。
ま、時々大阪弁つられて使うけどね」
「嘘!?ちっさいころから大阪かとおもてた。んじゃ、南となんで親しいん?あいつ、人見知りするやろ?」
「あぁ……レツの家、薬局じゃん?私、よくケガするからさ〜……小さい頃から薬とか買いに行ってたら、自然に仲良くなった」
トントン、と物理のレポートをそろえる。
「さ、次移動教室だよ。物理室、行くよ〜」
「あっ、おいてかんといてーや〜……」


「……さ〜てとぉ……、私行ってくるね」
「あぁ。いってきぃ」
たったったっと、リズムも軽快に階段を上る。
本当なら屋上は立ち入り禁止だが、鍵は壊れていて、入れるのだ。極一部の人間しか知らないが。
「……レツ?」
ドアを開けると、カリメロ頭が横になっているのを見つける。
呼びかけても反応がないので、そろそろと近寄ってみて、顔を覗き込んでみる。
「レツ?」
「……ピンクのレース」
バッと思わずスカートを押さえる。今更意味がないなどとわかっているのに。
「ま、今日も見るけどなvv」
「レツの馬鹿!お弁当あげないよ!」
真っ赤になって、お弁当を持って立ち去ろうとすると。慌てた声が聞こえてくる。
「待てや!俺を見殺しにする気か!?俺がこのまま餓死してもえぇんか!?」
「……別に?困る事はないけど?」
「……堪忍してや、〜。猛烈に腹へって、死にそうなんや〜。俺、の弁当のために、4時限さぼってきたん〜」
ふっ、と笑うと、お弁当を目の前に差し出す。
「今日だけトクベツ。明日もそんなことやったら、本当にあげないからね」
「恩にきるでvv」
もぐもぐと食べ始める南をボケーっと見つめる。
見つめる。
あまりにも長い間見つめるので、南も気になってきたようだ。
「……なんやねん。言いたい事あるんなら、言いや」
「……別に?……連日のことで疲れてるなんてねぇ〜……」
「……いいやんか、別に」
「よくないよ!疲れるんだよ!?わかる!?ものすごい疲れるんだよ!?」
の叫びに、南は至極あっけらかんと答えた。
「そりゃぁ、わからんなぁ〜……」
「…もぉえぇわ」
がっくりと、南の弁当の中からエビフライを1つつまんで口の中へ放り込む。
「あ、じゃあ俺聞くけど。なんで、『レツ』なん?」
「……別に。意味はないけど」
「嘘こけ。最初のころは『ツヨシくん』って呼んでたの、覚えとるで」
「……う〜ん……調子にのんない?」
「のらんのらん」
「……『レツ』って、誰も呼ばないじゃん?だから、その方が『トクベツ』って感じで、いいかな……って……」
照れたように、南がカリカリと頭をかく。
「……のった」
「え」
の反応をお構いなしに、ぎゅーっと抱きしめる。
(可愛ぇなぁ、は)
「馬鹿!ちょーしにのんないって言ったくせにぃ」
「だって、が可愛ぇんだもん。……な、このまま……ダメか?」
ぷっつん、と音がなる。
「ダメに決まってるでしょ〜!……あっ、ちょっと……」
またもお構いなしに、制服のボタンをとりにかかる。
「馬鹿〜!学校でしょ!昼休みでしょ!授業あるでしょ!」
「んなの、サボればえぇやん」
ブラウスを脱がせ、ピンク色の下着にも手を掛ける。
「ちょ、ちょっと!マジなの?」
「マジにきまっとるやん……」
「寒いよぉ」
「あっためたるって」
ちゅ、と音を立てて首筋にキスをする。
手を動かせば、自在に形が変わる白い胸を、南は楽しそうに操る。
耳の後ろを舌でなめてみた。
「んっ」
ビク、と体が反応する。
は、顔を真っ赤にさせて、南から背けた。
「……今更、恥ずかしいもなにもあらへんやんけ」
「恥ずかしいの!いつもは夜だから全然見えないもん!」
「……可愛ぇなぁ」
背ける顔をわざと近づけて、キスをする。舌を入れ、歯列をなぞると、南の腕を掴む力が緩まった。
南が体をふっと放すと、支える術を失ったは、簡単に後ろに倒れた。
「……いい体勢やな」
「……馬鹿ぁ〜……」
完熟トマトのような赤さ。今時、ここまで赤面性の人間も珍しいだろう。
は、耳の後ろが弱いのか、南の舌がそこへいくたびに、ビクビクと体を震わせた。
次第に、とろ〜んとした目になってくる。
それを見て取った南は、の太腿に手を這わせた。
「や……ぁ……」
「どこがや?……ほら、ここからでもわかるで。ごっつい濡れてるやん」
下着の上から、トントン、と指でつつくようにしてみる。指先だけでも、そこがもう愛液でしめっていることがわかった。
「……いれるで」
下着を少しずらして、指を1本入れる。
「ふぁっ……はぁ……あぁん…」
ズブズブとそこは簡単に南の指を飲み込んだ。
2本目。
ちょっと窮屈そうだが、それでも指はゆっくりと沈んでいく。
「はぁ……ぁあ……あぁんっ!」
クイ、と指を中で動かすと、の体が弓なりにそった。
「イイ感度やな……」
南の低い声が、稲妻のようにの体に痺れを起こさせる。
3本目をいれたときに、快感はピークに達した。
「……ぁあっ!」
いつもと違う場所で、違う時間でやっているからだろうか。達するまでに、時間はさほどかからなかった。
「……なんや、もうイってもうたんか?」
「…………」
答える元気もない。
「……んじゃ、俺もそろそろイかせてもらうで」
に休む間もなく、南は腰を進める。
「ぁんっ……はぁ…ん……レ、ツゥ……」
下腹部に広がる痛みも、今は快感としてしか体を巡らない。
「なんや?」
朦朧とする意識の中で、は必死になって声を出した。
「……私の、こと……んっ……」
言葉が途切れた。
グッ、と一気に南は腰を入れる。
「……愛してるに、決まっとるやろ……」
2人は同時に果てた。


先に目覚めたのは、南だった。
まだ眠っているに、シャツをかけてやる。
風が短めの髪の毛をくすぐった。
「……馬鹿やなぁ……」
ゆっくりとその頭をなでてやる。瞼が動いて……黒い瞳が除いた。
「……寒い……」
「ほら、これも羽織っとき」
制服の上着をポン、とに渡す。
「……うん」
自分の制服を着て、さらにその上から上着を羽織る。
「……ねぇ」「……なぁ」
「……あ、レツから」「……あ、から」
気まずい沈黙が訪れる。
そのうちに、南が口を開いた。
「……なぁ。俺、お前の事好きやで?」
ボッと前よりも赤くなる。
「な、な、な……なに言ってんの!?」
「……いやぁ〜……そういや、言った事なかったな、と」
「も、も、も、もしかして……聞いてたの!?」
「俺が、の声を聞き漏らすはずがないやんvv」
は殺し文句に絶句した。
「ま、たった一言が言えんかった、俺も俺やけどな。てなことで、これからもよろしゅう」
「……よろしゅう」
南が赤くなったを抱きしめた瞬間、始業のチャイムが鳴った。


あとがきもどきのキャラ対談
南「なんや、変なところで終わらすなぁ」
銀月「うるひゃい。関西弁なんてわけわかめなんだもん(古)あんたはよー化けたね」
 南「黙れ。お前の勉強不足なんやろ。SLAMDUNKみて勉強しぃ」
銀月「……へいへい。んじゃ、あなたは勝手にさんに惚れててください」
 南「もう、惚れとるっちゅーに」
銀月「……アツアツだね」
 南「そりゃあ……なぁ?