俺が君の手を握ったのは、で5つのお題
傍にいるのが当たり前だった。 空気のように、そこにいるのが当たり前で。 一緒にいても息苦しさを感じず、ありのままの自分でいられる、貴重な人間。 それは友達より、仲間よりも近くて。 ある意味、家族と似たような感覚を持っていた。 「あれ、もー帰んの?早いね」 急いで着替えたのか、汗をかいたままスポーツバッグをかけてパタパタ、と歩いている幼馴染に声をかけた。 一足先に終わった女バスの練習。 いつもはその後ちょっとのんびりして、俺と同じくらいに帰るのが常なのに。 「あー、うん。彰はまだ休憩?」 「ん。ラスト1本ゲームやって終わりかな」 「そっか……」 「?どうしたの?」 「や、えーと……その……」 いやに歯切れが悪い。 俺は今やっているゲームの残り時間を確認してから、そっと近づいた。 「あ、いたいた!ちょっと、どーすんのよ」 「あ……」 やってきた女バスのメンバーが、彼女の傍に寄ってくる。 「なんかあったの?」 「いやー……」 言葉を濁した彼女の代わりに、友達が答える。 「仙道くんってば、聞いてよ〜。この子ってば、今朝ラブレターもらってんの!……約束の時間、もうすぐでしょ?大丈夫?」 「むー……うん、なんとかする……ありがと、がんばってみる」 「……よし。じゃ、結果報告、待つ」 ヒラヒラ、と手を振りあって、友達が去っていく。 そしてくるりと振り返る顔。 「……と、そーゆーワケなんですよ。…………なので、今日はこれにて。またあし……」 彼女が全てを言い終わる前に、彼女の手を取っていた。 「…………彰、さん?」 不思議そうな顔でこちらを覗き込んでくる彼女に、微笑みを返す。 「……行っちゃダメ」 「へ?」 「…………後15分、待ってて。俺がついてく」 「……ちょ、どーゆーこ「ラスト10分の1ゲームやってくるから、大人しく待っててね。先に行ったりしたら、許さないから」 そう言い切って返事を待たずに、俺はコート内に戻る。 ―――手を取ったのは、君が愛しいと気付いたから。 この手を握り締めるのは、俺だ。 「きみが愛しいと気づいたから」
SLAM DUNK 仙道彰 「僕がきみの手を」で5題 確かに恋だった http://have-a.chew.jp/ |