「ごめんなさい」

しゅんとした顔で、そう言われると、本当は怒っているのにどうしても許してしまう。
幼なじみから、キャプテンとマネージャーという関係になり、それから彼氏と彼女という関係になったのは、ついこの間だ。

いつもなにかしらの騒動に巻き込まれている彼女。
やっかいなのが、彼女は無意識のうちに、騒動に巻き込まれているという点だ。
いや、別に彼女が全て悪いというわけではない。
彼女が騒動の種になるのはそう多くはないが―――周りが彼女を巻き込むのだ。
その度に俺はヒヤヒヤさせられる。
騒動……というのは、不本意だが俺の親衛隊が起こしていたり、はたまた、彼女を好きな男が起こしていたり……とにかく、よく恋愛ごとが絡む。
俺としては、どうしても眉を寄せなければならないことだ。
…………ただ純粋に、オレは彼女といたいだけなのに、周りがウダウダ言うとはどういうことだ。

「健司……怒ってる」

他人はまず騙せる笑顔なのに、俺が怒っているというのを当てるのは、長年の付き合いである彼女だけ。
いくら笑顔でごまかそうとしてるのに、彼女は意図も簡単にそれを見破るのだ。

そして必ず、しゅんとうなだれて

「…………ごめんなさい」

と言う。

だからついつい俺も許してしまうのだ。
彼女は魔法の言葉を知っている。
俺が彼女にそう言われたら、許さないはずがない、と知っているのだ。

「ごめんなさい」

…………その言葉1つで、オレは全てを許してしまう。
許すから。
もう許すから。

頼むから、もう笑ってくれよ。

な?