サモンナイト2  〜バルレル〜




「お、重い…………」

買い物を頼まれて、いつの間にやらすごい量に。
もう日も暮れそうだ。なんとか、ずり落ちないように両腕に力を込めて、荷物を抱えて帰り道を急ぐ。

「……オイ」

さすがに荷物が重すぎて、一旦休もうかと思っていたら、小さい声が、後ろから聞こえた。
くるりと振り返れば―――仏頂面の、小悪魔の姿。

「バルレル?どしたの、こんなところで」

「…………帰りが遅ぇから迎えに行けって、ニンゲンどもに言われたんだよ」

心底面白くなさそうにそう言うと―――ひょいっ、と荷物を奪われた。
それも、1番大きくて重いヤツ。

「帰るぞ」

―――バルレルは、言動はひねくれてるし、素直じゃない。

それでも、優しいんだ。

「……へへ、ありがと、バルレル!」

心遣いが嬉しくて、そういえば、バルレルはぷいっとそっぽを向いた。

「…………ケッ」

――――――どういたしまして。

小さな一言に、そんな意味が含まれているのを、知っている。

バルレルは照れ屋だから、絶対に『どういたしまして』とか『ありがとう』とか言わないけれど。
それでも、小さな一言に、十分な言葉を含んでいるのを、知ってる。

「…………あ?……なんだコレ」

ポロ、と落ちた小さな包み紙。
荷物が少なくなった私は、あぁ、とそれを拾い上げた。

「ウイスキーボンボン。バルレル、好きそうだなーと思って、ついつい買ってきちゃった」

たまたま見つけたお菓子屋さんで、ウイスキーボンボンが売っていて。
お酒大好きなバルレルは、こーゆーの好きそうだな、と思って、思わず買って来てしまった。

「あ……ウイスキーボンボン、嫌いだったりする?」

「…………イヤ」

「よかった。あ、アメルには内緒だからね?怒られちゃうから」

「………………………」

受け取ったボンボンを、じぃっと見つめた後、バルレルがなんとも微妙そうな表情で、こっちを見つめてきた。
何か言いたげに、パカ、と口を開いては閉じる、を繰り返している。
結局、また横を向いて、ケッと呟いてしまった。

―――ありがとよ。

バルレルの声が、聞こえてきた気がした。

「…………どういたしまして」

小さく呟けば、また照れたようにそっぽを向くバルレル。
どうやら、間違っていなかったらしい。

思わず、クスクス笑いが漏れてしまった。





バルレル  「どういたしまして」