気づけば、ピンポーンとボタンを押していた。

バスが止まる。

荷物をつかんで急いで降りた。

とたんに吐く息が白く染まる。

マフラーを巻きなおした。

「おい、!!!」

後ろのほうから声が聞こえる。

振り返ると走ってくる三井の姿が見えた。

「三井先輩!?」

ここまで全力疾走してきたのか、肩で息をする三井に驚いて目を広げた。

「よぉ、バスから降りるオマエが見えたからよ。……どうしたんだ?」

「あ…………晴子のとこまでボールをとりに。発注してあったのが届いたんです」

大丈夫ですか、と顔を覗き込んだ。

おう、と笑う笑顔がまぶしい。

「ボールっつったら……結構荷物になんだろ。手伝ってやるよ」

突然の申し出に動揺してバックを落としてしまった。

「わわっ……そ、そんな!!いいですよ!!気にしないでください。先輩、なにか用事があって出てきたんでしょう?」

「いや、たいしたことでもねぇ。それよか、オマエのボールの方が大変だろ。どんなにがんばっても、オマエじゃ3個のボールいれ2つが限界だ」

「オマエじゃ、ってなんですか〜」

「俺は3つイケる」

「自慢になりません!!」

ぷいっと横を向いて歩き出す。当然のように三井が隣を歩いてきた。

「大体、天気悪いのにわざわざ行くなよ」

「いいんです〜。もぅ、三井先輩、過保護っぽいですよ〜」

「過保護でちょうどいいんだよ。うちのマネさんはつっこみ1人にボケ2人だからな」

「…………ボケって私と晴子ですか?」

「それ以外に誰がいるんだよ」

彩子の顔が浮かんだが、ハリセンを常備しているところから見て…………つっこみ1人は彼女に間違いはない。

「晴子は天然ですけど、私は普通です!!」

「い〜や、全然」

「うっわ、なんですか、その言い方!!」

きぃ〜、と悔しがるを見て、三井がふっと笑った。

「…………なんですか?」

「べ、別に、なんでもねぇよ!」

慌てたように取り繕う三井がなんだかおかしくて、もつい笑ってしまった。

「あ、オマエ、笑ったな」

「先輩が先に笑ったんです」

そう言って、2人で笑いあった。

気がつけば白いものがチラチラと舞い降りている。

「…………雪だぁ…………」

「どーりで寒かったはずだな」

「…………なんだかうれしいな」

笑うの顔に、三井はドキッと心臓がなるのを感じた。

雪の結晶がの頬に落ちる。

ゆっくりと、溶けて、消えた。

押さえ切れようのない愛しさを感じるが、ぐっと我慢する。

もうちょっと、この顔を見てから。

告白するのはいつでもいい。

「キレイだな」

言った言葉は、雪に向かってか、それとも―――。



Happy Happy New Year!!

三井エンディング