やっぱり、晴子との約束なので駅へ向かうことにする。 「……あ〜ぁ……雪でも降りそうな天気」 知らず知らずにコートを引き寄せて、歩いていた。 ネオンがやたらとまぶしく目に映る。 木に飾られたイルミネーションを見て、少し歩調を早くした。 「…………じゃないか」 聞こえた低い声に、驚いて振り向いた。 「牧さん!!」 案の定、神奈川の帝王、牧が仁王立ち……いや、普通に立っていた。 「偶然だな。どうした、1人か?連れは?」 保護者のように聞いてくる牧が、なんだかおかしくなって、笑いが漏れてしまった。 「なんだ?」 「だって……牧さん、保護者みたいなんだもん」 「…………お前までそーゆーコト言うか」 コン、と額を小突かれた。 「までって?他にも誰かに言われたんですか?」 「…………オマエんとこの桜木には、『じい』とまで言われたよ」 「じ、じい…………神奈川の帝王に、ある意味それはすごいわね……」 「まったく……俺はれっきとした高校生だ」 はあ、とため息をつくところが、疲れたサラリーマンに思えてくる。 「……牧さんって、小さいころからそんな顔……じゃなくて、えっとぉ〜……」 「…………お前、ケンカ売ってるのか?」 「まったくもって、そんなつもりはございません、ハイ」 「…………怒る気が失せてきた」 「よかった……でも牧さん。きっと同窓会とかに行ったら、『変わらないね〜』って言われるよ!!」 「……それは喜んでいいのか?」 複雑そうな牧の顔。 「う、うん!喜んで!?ね!?」 「…………じゃ、ありがとう、とでも言っておくか」 少しだけほころんだ顔に、笑顔で返した。 「……でも、牧さんよくわかりましたね〜……というか、よく覚えてましたね、私のこと」 「忘れるわけないだろう。強烈なインパクトだったからな。スコアブック投げつけられたのなんて、生まれて初めてだった」 「あれは転んだんです!!その拍子にすっ飛んでって……」 「何度も聞いたよ、その言い訳は」 「言い訳じゃないのに〜……この、忘れん坊大将軍め」 「……なんだそりゃ」 今度はあきれた顔で髪の毛をくしゃっとされた。 「……牧さん、私のこと妹とかなんかだと思ってません?」 「ん?」 「っていうか、娘みたいでしょ。扱いがそうですもん」 少しだけむくれた顔をすると、困ったような顔をして――― にやっと笑われた。 「…………いや?……むしろ恋人のような扱いかな?」 耳元でささやかれたら、たまったものじゃない。 一瞬にして脳みそがとろけた。 「じょ、冗談はまたにしてください!!それじゃ!!!」 ズンズン、と赤い顔を隠すように牧の前から去った。 後ろのほうで、冗談じゃないのにな、なんて声がしたとかしないとか……。 Happy Happy New Year!! 牧エンディング |