(あの頭は……間違えようがない)

「花道!!」

「あ?」

怖い顔で振り向かれた。……と思ったら、すぐにその顔が豹変する。車が通るのもなんのその。桜木はガードレールをひょい、と飛び越えてこちら側へやってきた。

さんじゃないッスか〜!どうしたんッスか?」

「ちょっとブラブラと。花道こそ。いつもの軍団は?」

「ナハハ。俺もちょっとブラブラと。今日は洋平たちはバイトッス」

「バイトかぁ〜……スポーツ部だとそんな時間ないからね」

ちらり、と先ほどまで見ていた指輪を横目で見る。

ちょっとバイトしていたら買えたような金額だ。

「……ホント、バイトしたいなぁ〜……」

さん、なんか欲しいもんでもあるんッスか?」

「いや、そんな欲しいっていうかさ……そこの指輪なんだけど、バイトしてたら買えただろうな〜って」

指差しながら笑う。

「ま、そんなこといってもしょうがないんだけどね」

「…………お、おおおお、俺が買ってあげますよ!!」

「へ?なに言ってんのさ、100均とかじゃないんだよ?」

「わかってます!!……さんだから、買ってあげたいんです!!」

「ちょちょ、ちょっと花道!あんた、自分が今なに言ってるかわかってる!?」

往来の人の目を気にしながら、桜木を落ち着かせる。

真っ赤な頭というだけで目立っているのに、それ以上目立つようなことをしているのだ。

「百も承知です!!」

「ホントに!?」

「ホントッス!嘘じゃないッス!……大好きです、さん!」

「えぇぇぇぇぇ!?」

ヒュ〜!

どこかから口笛の声が聞こえた。

気がつけば丸く野次馬が出来ている。

(みんな、私の返事に期待してる〜)

「…………さんは、俺のこと嫌いッスか?」

「き、嫌いなわけないでしょ!!」

「じゃあ?」

「…………す、好きです!!」

わぁぁぁぁ!!

歓声が上がった。

桜木が、真っ赤な顔で立ち尽くしている。そして一瞬の後に噴火した。

「なんだ、てめーら!見せモンじゃねぇぞ!!」

「いや、もう立派な見世物だよ……花道」

「そ、そうッスか?」

「そうッス……」

はぁ、とため息をつく。

でも、自然と笑みがこぼれた。

「……なんだかんだいって、好きな人に告白されたんだから、嬉しいや」

「…………さん、ホントに俺のこと好きなんッスか?」

間抜けなことを言ってくる桜木に、顔を真っ赤にしては怒鳴った。

「今更なに言ってんの!そう言ったじゃん!」

「いや、その場のノリで言ったのかと……」

「いくら私でもそんなことしません!」

「嘘じゃないッスか?」

「嘘じゃないッス!ホントッス!」

「……よかった」

桜木のとろけそうな笑顔に、もつられて笑顔になった。

「……これからよろしくお願いします」

「あ、こちらこそ、よろしくッス」





Happy Happy New Year!!

桜木エンディング