「おぉぉ……これ、めっちゃカッコいいですね……!」 「おっ、だろぉ?なんせ、俺が精魂こめて作った剣だからよ!」 ニッコリ笑ったおじさんの笑顔は、自分の仕事に誇りを持っている人の笑顔だった。 06:勝手にすればいい 休息がてらに立ち寄った村が、武器や防具を作る職人の村だった。 普段は武器屋や防具屋に卸している商品だけど、なんだか職人さんと話しているうちに安く譲ってもらえることになった。 「ねぇテリー!この剣、どうかな!?私もそろそろ剣とか持ってもいい頃合いじゃん!」 私は今さっき話題に上っていた剣を手にとって、近くで他の剣を吟味していたテリーに話しかけた。 テリーはちらり、と私の持っている剣に目を向けると、 「お前には重すぎるだろ」 そう言って目線を違う剣に向けた。 「あー、ま、確かに嬢ちゃんにゃ重すぎるかもなぁ……おぅ、こっちはどうよ」 「むぅ……いばらのムチ、ねぇ……」 「少し離れた場所からでも攻撃出来るし、なにより一度に何体も攻撃できるところがコイツのいいところだ。……おう!兄ちゃんにオススメな鎧があるぜ!ちょっと重いが、お前さんの筋肉なら大丈夫だろ」 「見せてもらおう」 おじさんがテリーに鎧を見せている間に、私は他の武器や防具を物色。 剣は……確かに私には重すぎるかもしれない。だとしたら、軽いナイフやムチ系……? むむむ、と唸りながら軽い武器の方を眺めていると、 コツン、と頭に何かが当たった。 「お前にはそれで十分だ」 頭に当たったのは……ブロンズナイフの柄。 もちろん当てたのはテリーだ。 「それでもっと野菜の皮くらいうまく剥けるようになれ」 「なっ、なにをー!?……せめていばらのムチを……!」 「必要ない。お前の実力じゃ、ムチを魔物に当てられるかどうかも怪しいしな」 「あ、当てられるし!……練習すれば!」 「ほう?ちなみに、魔物は1つのところにじっとしてないぜ?」 小馬鹿にしたような口調のテリー。 ムキー!と怒りをぶつけていると、テリーはふと真面目な表情になった。 「お前は武器より防具をもっと重視しろ。……店主、軽くて魔法力が込められているもの、出してくれ」 「あいよっ」 「ちょ、テリー!」 「」 急に名前を呼ばれて、思わずピッと背筋が伸びる。 真剣な表情のテリーがこちらをまっすぐ見ていた。 「お前の武器は剣でもムチでもない、『魔法』だ。下手に武器を持って攻撃するより、そちらを磨け」 「………………」 テリーの言っていること。 それは正しすぎて、何も言えない。 「兄ちゃんは直接攻撃が主体だが、それでは敵わない相手には嬢ちゃんの魔法が唯一の対抗手段だ。……だから、そう簡単に倒れられちゃ困るんだよ。な?」 割って入ってきたおじさんを見てから、私はテリーを再度見つめた。 テリーが少し視線を逸らす。 「……ほら、魔力を込めた盾だ。軽く加工してあるから、嬢ちゃんにも装備出来るだろ」 「……あ、ホントだ。軽い。見た目重そうなのに」 なんせ腕がいいからよ、と言ったおじさん。 私は盾を装備した左手を軽く動かしたけど……不自由なく動く。重さもあまり感じない。 「剣やムチだけが武器じゃない。嬢ちゃんが魔法使いなら『魔法』はそれだけで立派な武器だ。……となると、後は防具をしっかり揃えるのが大事、だろ?」 「…………腕はいいが、よく口が回る店主だ」 「手と口がよく動くんだよ」 キヒヒ、と笑ったおじさんに対し、テリーは小さなため息をついた。 右手に握ったいばらのムチ。 左手に装備した魔法の盾。 「…………テリー。この盾、欲しい」 そっといばらのムチを置いて、テリーにそう言う。 「……勝手にすればいい」 小さな呟きと共に流れ込んできたのは、温かな気遣いだった。 |