※ヨークシンにいたころの話です。時間的にはいつなのよ、とか色々ありますが、細かいことはどうぞご容赦ください……! バンッ! イキナリの侵入者に、ゴンとキルアは思わずビクリと身構えた。 しかし、入ってきた人を見て、戦闘体勢をすぐに解く。 「…………マナミ。来るなら、ノックするか、絶をやめるか、どっちかにしろよ……」 「ご、ごごご、ごめん!!!」 「どうしたの、一体」 真奈美はキョロキョロと周りを見回して、大きめのクローゼットを見つけると、何も言わずにそこに身を潜めようとした。慌てて、キルアが引き止める。 「おいおいおい、なんだよ一体」 「お願い!かくまって!追われてるの!」 「追われてるって……」 「ヤバイッ!いい!?私がいるって、絶対言っちゃダメだからね!?」 そう言い放ってからクローゼットの扉を閉める。ご丁寧に絶をしてから。 残された2人は顔を見合わせて肩をすくめた。 コンコンコン。 ノックの音だ。 「はい?」 「ヒソカだけど◆」 またも2人は顔を見合わせた。 ゴンがドアを開けると、ヒソカはにっこりと笑って聞いた。 「マナミ、来てるかい?」 そして2人は納得した。 マナミはヒソカに追われていたのだと。 キルアがにやーっと笑って。 「あぁ、いるぜ?そこのクローゼットの中だよ」 「裏切り者―――!!!」 バンッとクローゼットの扉を蹴破る勢いで飛び出てきた真奈美。そして、ハッと気づく。 ヒソカと目が合った真奈美は、だらだらと滝のような汗を流しながら、窓枠に足をかけた。 「じゃ!」 「マナミ?」 すでに、自分の襟を掴んで笑っている奇術師を見て、真奈美は暴れだした。奇術師の、その動きのとんでもないすばやさに、2人とも目を丸くする。 「ぎゃー!!いや―――!!!はーなーしーてー!!」 「離さないよ◆……さぁ、お仕置きだゥ」 「いーやー!!!」 「お仕置きって……いったい、なにしたんだよ、マナミ」 キルアの質問に、真奈美は暴れながら叫ぶ。 「ちょっと……ちょっとだけ…………出来心で、寝てるヒソカの眉毛をかいただけだも―――ん!!!」 「ちょっと?……誰かなぁ?油性マジックでゴン太眉毛を描いたのはァ消すの、大変だったんだよ?気がついたら部屋にはいないし ![]() (うわっ……ヒソカ、異様に笑顔だ……!って、えぇぇぇ!?) 「オマエら、もしかして一緒の部屋で寝てる……とか、そーいうオチじゃ……」 「うん◆そーだけど?」 キルアは目の前がぼやけた気がした。 師弟の関係でも、いくらなんでも、男と女が(それも年頃の)一緒の部屋で寝ているわけがないと思っていたのに。そして、一緒の部屋で寝るということが、どんな意味を持っているかわからないほど、彼は子供じゃなかった。 「ってことは……オイ、もしかして……マナミ!オマエ、傷モノか!?」 一瞬、は?という表情をしてから、真奈美は顔を真っ赤にした。 ヒソカは、その変化を面白そうに見る。 「ち、違うよ!!」 「でも、一緒の部屋で寝てるんだろ!?」 「それは節約のため!そーでもしないと、ヒソカ、際限なくお金使うんだもん!」 「際限なくお金があるんだから、いいと思うんだけどねぇ……◆」 「それがダメなの!昨日だって、私が止めなきゃ、ヒソカ、とんでもない金額の服買ってくれようとしたでしょ!?」 「服はあって困るものじゃないだろう?」 「だ―――!!お金も電気も大切にねって、デンコちゃんが言ってるでしょ―――!?」 ヨークシンの真ん中で、東京電力もなにもないとは思うが。 ゴンだけ、2人が言い争う意味がわからずにきょとんとしている。 「…………つまり、ヒソカとマナミは同じ部屋で寝るほど、仲がいいってことだね?」 ゴン、天然ボケ炸裂。 真っ赤になって真奈美は叫んだ。 「!!!ゴン!」 「え?違うの?(汗)」 真奈美は怒るのも馬鹿馬鹿しくなって、はぁ~とため息をついた。 「ん~、相性はピッタリだと思うけどねぇ?」 「ヒーソーカー!!また、誤解を招く発言はしないの!!いい!?今のは、あくまで知り合いとしての相性だからね!?」 「……………… ![]() 「おいおい、マナミ。ヒソカがショック受けてるぜ」 「え?」 「……うん、ボクのことをただの『知り合い』なんて言う子にはやっぱりお仕置きが必要だゥじゃ、ゴンにキルア、邪魔したね◆」 ひょいっと荷物を持ち上げるように、ヒソカは真奈美を肩に担ぎ上げた。 「ぎゃ―――!高い、高いぃぃぃ!!」 「♪」 2人が部屋を出る間際、ゴンが思い出したように呟いた。 「そーいえば……男の人が女の人にに服をプレゼントするときは、たいていその服を脱がしたい、って意味なんだって誰かが…………んー、誰だっけ?」 「問題は誰かじゃないでしょ―――!!!ゴン!!!問題発言はやーめーてー!!!」 「(大人だ…………こいつ、大人だ……)」 顔を真っ赤にして怒る真奈美と、なんだかショックを受けているキルア。 ヒソカが、にっこりと笑った。 「大人の事情を、なかなかわかってるじゃないかゥ」 「ちょっと、なんなのよ、それ―――!!ぎゃ―――!!!変なトコ触んないで―――!!」 「さぁ、お仕置きはなんにしようか?くっくっく…………ゥ」 「というか……脱がしたい、んじゃなくて……単に、独占欲が強いだけだろう?選ばれた服着てるってコトは、その男に縛られてるってコトだしな」 「ほら、マナミ、この子たちでさえわかってるのに……」 「なにがさ―――!!!いーやーぁああ―――!!助けてぇぇ~~~!!」 「それじゃ、またゥ」 叫ぶ真奈美と、とてつもなく美しい笑顔のヒソカ。 キルアとゴンは、2つの嵐が去ったことに、深い深いため息をついた。 |