明日は






バシッ!バシッ!

すざましい音が体育館内に響く。

「声が小さぁいっ!もう一回っ!」

「はい!チュース!!!」

「こんにちはー」

少女の声で、ぴたりと体育館内が静まった。

ちゃんっ!」

いち早く動いたのは、マネージャーの彩子だった。

「わぷ、あ、彩子さん!?」

グラマーな彩子に抱きつかれてが驚愕の声を上げる。

「チュースッッッッッ!!!!!!」

先ほどよりも、数倍大きな声で、部員全員が新マネージャーに向かって挨拶する。

は、彩子の腕の中からにこやかに笑顔を向けて、

「チュース!」

と挨拶した。

可愛いらしい声。

大きすぎず、小さすぎない瞳。

少し色素の足りない、肩までの茶色いさらさらの髪。

(今日もかわいいなぁ……ちゃん……)

「今日も、気合入れてがんばりましょうねっ!」

「ハイッ!!!」

この言葉一つで、湘北高校男子バスケットボール部は、たとえ雪の中でグラウンドを50周しろと言われても、気合でがんばってしまうのだ。

ちゃん!スコアある?」

「あ、キャプテンッ!とってありますよ〜。見ますか?」

「うん!なにかあった?」

新キャプテン、宮城リョータの『なにかあった?』は、『なにか気づいた事はあった?』の意味だ。

「えぇと……桜木くんのジャンプシュートの確率が少し上がりました。それと、流川くんは相変わらずシュート率がよくて……あ、キャプテンはフリースローの確率が上がりましたね!……そのくらいです。下がった人はいません!」

にっこり笑顔で答えるに、宮城はどきっと顔を赤くする。

「俺、ちゃんがいてくれたら、フリースローの確率、100%にできるかもvv」

「あぁぁ!リョーちん!ずるいぞ!リョーちんばっかり、さんと話して!」

「馬鹿やろー、花道。そーゆーことは、もうちょっとジャンプシュートの確率あげてからいいやがれっ!」

「なんだと、リョーちん!」

どたどたと争いを始める宮城と桜木。

「わわわわ、彩子さぁん……!」

「ハイハーイ!なぁに、ちゃん!」

涙目で訴える

さっと彩子は無言でハリセンを取り出し―――

バシッバシッ!

すばらしい音を立てて二人の頭を殴った。

「ほらほら、リョータに桜木花道っ!さっさと練習戻んなさいっ!」

「はーい……」

宮城と桜木はタンコブのできた頭をさすりながら、しぶしぶと練習に戻る。

「さすが彩子さん!」

やっぱりにこにこ顔で微笑むに彩子もメロメロだ。

ちゃーん!もう、どうしてこんなに可愛いのかしら〜vv」

「えっ?えっ???」

「…………テーピング……」

突如、会話に割り込む人物がいた。

湘北高校エース、流川楓である。

「あ、流川クンッ!どこか怪我?」

「……予防……」

「わかった。どこ?」

「手首……それと膝」

ととととと、と救急箱をとりにいって、手首用のテーピングと、膝用のテーピングをそれぞれ出す。

「えーっと……左手首と左膝だよね?」

「おぅ」

「おっけー!まかせて!」

二人のやりとりを見る部員達。

(ルカワめ……俺のさんを……)

(流川……やっぱりお前もちゃん狙いだったか……)

(流川の奴……生意気な……)

(うわぁぁぁ……流川相手じゃ勝ち目はないよ〜……)

最初のは桜木、2番目は宮城、3番目は三井、4番目は安田他もろもろである。

最後にペト、とエンドテープを巻いて終了。

「はい、終わり、と。ゆるくなったり、切れたりしたらもう一回来てね。巻きなおすから」

お約束のにっこりスマイル。

「……サンキュ」

「どーいたしまして♪」

仏頂面の流川には珍しく、顔を赤らめながら部活へと戻っていく。当然、部員全員からの睨みを頂戴した。





練習は後半へと突入し、5対5のゲームが始まる。

ちゃん?どうしたの?スコアつけるわよ?」

自分の荷物をあさっているに彩子が声をかけた。

「あっ、はい、ちょっと待っててください!確か、スコアブック最後までいっちゃったと思うんですよね」

ぱらぱらと彩子がスコアブックを確認する。

「あ、本当だわ」

「やっぱり……ちょっと部室から取ってきます」

「うん、お願い」

体育館を出て部室はすぐだ。ものの一分もしないうちに部室へ行く。

きぃっとドアを開けると、目の前に壁があった。

「きゃぁ!」

「うぉ!?」

ぼすっと倒れこむ。

「……大丈夫か、

「……赤木先輩……!」

壁だと思ったのは、元キャプテン、赤木剛憲であった。

「わぁ!ごめんなさい!赤木先輩!」

「いや……怪我はないか?」

「全然っ!」

ぴょんっと飛び跳ねてみせる。

「こらこら、オレのことを無視しないでくれ」

大きな赤木の後ろから、細めの人物が顔を出す。

「小暮先輩!」

「久しぶりだな、

メガネの中の瞳を細くして、小暮は微笑んだ。

「どうしたんですか、先輩達がそろって……」

二人は、いや、と同時に頭を振る。

「ちょっと、気分転換にな……いいか?」

「大歓迎です!」

「ところで、はどうしたんだ?今、部活の最中だろう」

「あ、スコアブックが終わっちゃって……取りに来たんですよ〜」

えへへ、と笑うに、二人は同時に思う。

(……もう一年、遅く生まれていれば……)

「あ、どうぞ行っててください。今、5対5始まったばかりなんで、やってると思いますよ」

「あぁ……いや、待ってるよ。はやく取って来い」

「ありがとうございますっ!」

もし、にネコ耳が生えていたら、ぴょこんっ、と耳がたったであろう……まぁ、ネコ耳がついていたら、部員全員が鼻血を出して失神ものだろうが。





ひさびさに赤木と小暮も加わって、5対5では白熱した戦いが見られた。

相変わらず、赤木ははえたたきとダンクの連発だし、小暮はスリーポイントを決める。

だが、もちろん現部員も負けていない。

桜木は、ゴール下の強さを発揮して、ことごとくリバウンドを拾っているし、引退せずに残っている三井はきれいなフォームでスリーポイントを連発。宮城は以前よりも速さが増しているし、オフェンスの鬼、流川は全てにおいて秀でていた。

「みんな、すごいですね〜……あ、桜木君、リバウンド10本目」

「そ〜よぉ。なんせ、全国制覇を狙ってるからね。冬の選抜にいけるのは、神奈川県も1校だけだし。気合はいってるわよ……というか、入れるわよ、私が。……流川、得点ね」

「はい……流川くん、18点目。すごいなぁ〜……みんな!FIGHT!」

その声にほんわ〜と、部員の顔が緩む。

「……まったく……男ってのは、単純よね〜」

「え?なんですか、彩子さん?」

彩子の呟きに、が上目遣いに問う。―――彩子の方が背が高いので、上目遣いになってしまうのだ―――

「ん〜ん♪なんでもないわよ、ちゃん♪」

きゅっと抱きしめて、彩子は笑った。





「お疲れさまですっ!」

「おぅ、おつかれ〜」

ぞろぞろと体育館を出て行く部員達。

マネージャーは、体育館の戸締り等を見なければならない。全員が出終わった後、は、一人戸締りの点検をしていた。

♪」

「はい?」

ふりむくとそこにはMVPシューター三井寿。

「三井先輩。どうしたんですか?」

「いや、……一緒に帰らないか、と思ってよ。もう暗いし」

「本当ですか?わーいっ!じゃ、着替えてきます!」

「あぁ、校門のとこで待ってるよ」

「ありがとうございますvv」

(ぬぬっ……ミッチー、ズルイぞ、ひとりだけ……)

(あー!!!三井さんが抜け駆けしてる!)

(……ズルだ……)

(三井……)

(三井さんまで〜〜〜!勝ち目はないよ〜っ!)

最初が桜木、2番目が宮城、3番目は流川、4番目は赤木、最後は……やっぱり安田他もろもろ。

三井に、明日は……ない。





あとがきもどきのキャラ対談

桜木「ふんぬ―――!お前、ミッチーひいきしているだろう!」

銀月「んなっ!そんなことは……ない……と……思う……」

流川「……ズル……」

銀月「睨むな、流川―――!」

三井「ふん、実力だ、実力」

銀月「……そーでもないけどね」

三井「あぁん!?なんかいったか!?」

銀月「……いーえ……」

小暮「ちゃん。明日はオレと帰ろう」

一同「メガネ君っ!抜け駆けはなしだぞ!」

銀月「……感想等、BBSまたはメールでいただけるとうれしいです♪」